いとこと抱っことお年玉(F/m)
ウィツさん作
その日私は和室で一人テレビを見ていた。1月2日…年明け早々大してすることもなかった。それではいけないと母に尻を叩かれて着物に着替えてはみたものの結局大した変化はない。私はぼんやりと明るい正月特番を眺めていたのだ。
「お母さん、お父さんと一緒に挨拶回りいってくるからね」
母がふすまを開けて私に言った。私も行くべきかと一瞬思ったけど父の会社の上司なら大学生の娘が行ってもかえって迷惑かも知れない。
「わかった、いってらっしゃい。」
私が微笑むと母は何かを思い出したようにこう続けた。
「信也くんくると思うから…これあげておいて」
母の手から私の手に移動してきたものはぽち袋だった。私はちいさくうなづくと両親を見送った。
信也、私のいとこで現在小学生。お互い兄弟のいない者同士なためか彼が今より幼いころから私は彼の面倒を見て、そして彼は私に懐いてくれていた。
ちょっと調子に乗りすぎるところがタマに傷だけど…素直ないい子だ。
両親が家を出てすぐにインターホンが鳴った。さっそく信也がお年玉をたかりに来たのだ。
「いらっしゃい、あけましておめでとう」
私がドアを開け微笑むと彼もにっこりと笑い「あけましておめでとう」と新年のあいさつをした。私の育て方が良かったのだろう。いい子に育っている。
「さぁ、あがりなさい。お姉ちゃんお正月から暇で…ちょっと付き合ってよ」
「んっ!!いいよ!!」
いつになく素直だ。…お年玉がかかっているからってわけね。
私は彼を家の中に案内すると冷蔵庫からコーラを取り出してグラスに注いであげた。彼はそれを満足そうに飲む。
「ところで信也、お姉ちゃんいつもと違くない?」
「ん…、あ…!!ねーちゃんいつもより化粧濃い!!!」
次の瞬間彼の頭には私のゲンコツが乗せられていた。
「いっつー…なんでー…?」
「お化粧は関係ないの!お姉ちゃん着物着てるでしょーが!」
信也は不機嫌そうにむーっと私の着物を見まわしてこう言った。
「ふんっ…にあってねーし!!」
これは言っちゃいけない言葉。絶対に言っちゃいけない言葉。
「ふーん…なるほどね…」
せっかくの着物姿を馬鹿にされたわけで、私はちょっとイジワルを思いついた。
「そんなこと言う子に…これはあげられないわねー」
ぽち袋を信也の前にちらつかせる。みるみるうちに信也の顔に焦りが表れるのがわかる。
「えっ…や、やだっ…!ごめんなさいっ…!」
高学年にもなりお金の価値がちょっとずつわかってきた年頃、やっぱりお年玉の効果は絶大だ。
「んー…でも信也は悪い子だからなー」
私の中のえすっ気が信也をいじめる。決して私のせいじゃない。絶対に違う。
「やっ…な、なんでもする!!ねーちゃんの言うことなんでも聞くからっ!!」
ほほぅ…こんなことをこの子が言うとは。どんなにこき使っても文句はないのだろうが…まぁ私が彼に何かすることと言えば決まったようなもの。
「じゃあ、お膝にいらっしゃい。お姉ちゃんをばかにしたおしおきをします」
信也が調子に乗りすぎる時、私は彼のお尻をぺんぺんして叱る。ゲンコツお見舞いしておいてなんだけど安全だし、なによりちょっとかわいい。今日私は彼に侮辱された。十分お尻ぺんぺんに値する。
「うー…わかったよ…」
彼はいつになく素直に私の膝の上にちょこんと乗った。いつもならここに至るまで10分はかかるのに。お年玉は偉大だ。
「ずいぶん良い子じゃない。でも手加減はしないからねっ」
私は彼のズボンに手をかけ、下着ごとそれをひっぺがした。すべすべのお尻が露わになる。男のくせに…若いっていいなぁ。
信也は恥ずかしそうに顔をうずめる。
「それじゃあ信也、覚悟しなさいっ!」
手を振り上げる、私と彼の中に共通の静寂が走った後するどい音が部屋を覆いつくした。
ぴしゃぁぁんっ!!
「ひゃぁぁっ…!」
情けない声があがる。でもそれでいい。おしおきの一発目はきびしすぎるくらいでちょうどいいの。
「他の人が傷つくようなこと言っちゃだめでしょ!?」
ぴしゃんっ!ぴしゃんっ!
ありきたりなお説教かもしれないけどこれが一番効く。ちびっこに下手な小細工なんていらない。ハートで勝負。
ぴしゃん!ぴしゃんっ!
そして私は決して手を止めない。彼のお尻が少しずつ染まっていってもおしおきを甘くしちゃだめ。だって甘やかすとこの子はすぐに調子に乗る。
「ひぁっ…いたい…もぅっ…いやぁ…」
少し涙ぐんでいる信也、それを見ると少し心が痛む。私は一度手を止めた。
「痛いでしょ?」
「…あたりまえだろ」
ぴしゃんっ!!!
やっぱり私の読み通りだった。
「調子にのらないの」
ぴしゃんっ!ぴしゃんっ!
「いぁぁっ…ごめんなさいぃっ!!」
信也の裸のお尻に手を振りおろしながら私はお説教を続けた。痛いは痛いだろうけど彼は叩かれながらでもちゃんと話が聞ける偉くて凄い子であることを私は知っている。
「信也のお尻と同じくらいお姉ちゃんの心も痛かったんだよ?」
その言葉を聞くと信也はびくっと背中を反らせた。お尻の痛みで痙攣したのではどうやらないみたい。
叩いていた手をもう一度だけ休める。彼に与える最後のチャンス。
信也は少しうなだれると首を私の方に一生懸命に向けて、涙声でこう伝えた。
「ひっく…その…ごめんなさいっ…」
素直な子だから、他人を傷つけたりするのは本当に嫌いなんだろう。
まったく…本当にいい子なんだから。
「もうあんなこと言わないってお姉ちゃんと約束出来るよね?」
「うんっ…する…っ!!」
「じゃあ信也…!最後にもう一回だけお尻をぺんするから…歯、食いしばんなさい!!」
私は彼のお尻をぽんぽんと叩いた。こくんとうなづいてぎゅっと目を瞑る。
ぴしゃぁんっ!!
一発目よりも強く、彼のお尻をひっぱたいた。
「んぁぁぁっ!!…くぅぅ…」
信也の悲鳴とそれをこらえようとするうめき声が私の耳に突き刺さった。
なんだろう…この罪悪感。
私は信也のズボンをあげると彼を膝の上に載せて抱きしめた。
「ふぇぇっ…?」
今日一番の情けない声が上がる。かわいい。
「ごめんね、ちょっとやりすぎちゃったね」
私は彼に微笑みかけながら、けれど心の中では真剣に彼に謝り、そしてお返しにぎゅうっと彼を抱きしめた。
「ねーちゃん…くるしいよ…」
「あら…ごめん」
私は彼から手を離した。すると彼はまた慌てたように、
「あ…やめちゃやだ…!!」
「えー…もうどっちなのよ…」
「いいから…もっとぎゅう…」
「もー…はい、ぎゅーっ!!」
私はもう一度信也に抱きつく。これではどっちが甘えてるのか傍からではわからない。
彼にとっても、私にとっても、この抱っこがなんだか素敵なお年玉になったようだ。