兎お姉さんと辰のやんちゃ坊主(F/?)
アカト作
むかーしむかし、年の暮れにひまを持て余した神様が、動物たちにお触れを出しました。
「元旦の朝に、新年の挨拶に来てちょうだいな。
一番早く来た子から十二番目に来た子までに、順番に一年の間、大将にしてあげる!」
兎のお姉さんは、私こそ一番に到着してやろうと意気込んでいました。
「へーんだ!うっちゃんなんか十二番目にも入れるもんか!」
意気込む兎のお姉さんに悪態をついたのは、辰のやんちゃ坊主でした。
「たっちゃん、お姉ちゃんにそんな口きいてもいいのかなー?
ついこの前まであなたのオシメを取り替えてやったのに、恩を忘れちゃうなんて」
「ひ、ひててて!いたいいたい!!」
兎のお姉さんはやんちゃ坊主のほっぺたをつまんで、ぐににと引っ張りあげました。
霊格の高い龍と言っても、ずっとずっ〜〜と昔に生まれた兎のお姉さんにとってはまだまだお子様です。口でも何でも、勝てるわけがありません。
「ふ、ふん!なにさうっちゃんなんて!
明日、ボクの方がうっちゃんより先に神様に挨拶して、お姉ちゃんより偉くなってやるからな!」
別に先に到着した動物からエライというわけではありませんが、売り言葉には買い言葉。
「じゃあ勝負する?もし私がたっちゃんよりも早く挨拶したら、たっちゃんは私の言うことをひとつ聞くこと」
「いいぜ!じゃあボクがうっちゃんに勝ったら、ちゃんとボクの言うことを聞けよな!」
「いいわよー」
どんな命令をしようかと、今から勝ったことだけを考えて辰のやんちゃ坊主は家に帰りました。
「あらあら。また喧嘩したの?仲がいいのやら、悪いのやら…」
「あ、牛の姉さん」
兎のお姉さんに声をかけたのは、グラマラスナイスバディの牛のお姉さんでした。
「ほんの100年ぐらい前まで、兎ちゃんの後ろをお姉ちゃんお姉ちゃんってついて回ってたのにねえ。
成長したのやら、反抗期なのやら」
「ええ、ちょっぴり寂しい…かな。
ところで、牛の姉さんはどちらに」
「私はこれから神様のところに行くのよ。ほら、私って牛歩でしょう?
一日ぐらい早く出て行かないと、12番目にも入れないじゃない。
それじゃあ、また明日ね」
バイバイ、と牛のお姉さんは神様のところに向かって行きました。
「牛の姉さんは真面目だなあ。…でも、なんで胸に鼠くんを入れて連れてるんだろ?」
鼠くんは牛の姉さんにこっそり連れていってもらっているのですが、それはまた別のお話。
翌日。
鼠くんが寝ていた牛のお姉さんを出しぬいた後、牛のお姉さんが挨拶に。
次に虎の姉貴がゴールし、そのあとに兎のお姉さんがやってきました。
それからしばらく間をおいて、辰のやんちゃ坊主がやっときました。
「おはよう、たっちゃん。もう私たちは終わったよ♪」
「う、うー…」
悔しそうな顔で歯噛みをしますが、それはそれとして辰の坊やは神様に挨拶を済ましました。
「さーて、たっちゃん。お姉ちゃんの言うこと、一つ聞こうね♪」
「な、なんだよー…?」
挨拶が済んだ者たちが集まる部屋にて、にっこりと満面笑みの兎のお姉さんに、辰のやんちゃ坊主は後退りします。
この笑顔の時は怖いことをする時の笑顔だと、辰のやんちゃ坊主は思い出しました。
「――――ほら、こっちおいで」
ぽん、ぽん。
兎の姉さんは椅子に腰掛け、自らのお膝を叩きます。
辰のやんちゃ坊主は一瞬、何を言っているのか分からないようで、首をかしげていました。
ですが、少し後にハッと気が付きました。そうです、ここ100年ほどされていませんでしたが、辰のやんちゃ坊主が、兎のお姉さんと四六時中一緒だった時、よくされていたことです。
「あらあら…。それじゃあ、私達はちょっと席を外しますね。
あ、ネズくんも寅ちゃんも」
「はーい」「ういーっす」
二人のことをよく知っている牛のお姉さんは、すでに部屋にいる人達を連れて部屋から出て行ってくれました。牛のお姉さんはホントに胸も度量も大きな方です。
「ちょっ…!な、なんだよそれ!ボクなにもしてないじゃん!」
「ううん、したよ。
ここ100年ぐらい…ずっとお姉ちゃんの家に遊びに来てくれないじゃない。
約束したのに。どんなに忙しくても、一年に一度ぐらいはお姉ちゃんの家に来てくれるって」
「う…」
外で出会って、昨日のようなじゃれ合いはよくしていました。
ですが、少し大人になってしまったのかもしれません。辰のやんちゃ坊主は、兎のお姉さんの家でまったりするということが、100年ほどなくなっていたのです。
人間の感覚でいえば、1年ほど遊びに行っていない、といったところでしょうか。
「お姉ちゃん、たっちゃんのこと、ずーっと待ってたんだよ?
たまに外で会った時に、たっちゃんが「今度うっちゃんの家に行くよ」って言ってくれた時は、しばらくお菓子とかゲームとかも色々準備してたのに。
だから、今日の命令権限で、約束破っちゃう悪い子のたっちゃんをお尻ぺんぺんしちゃいます」
「や、やだ…」
「ダメです」
兎のお姉さんはキッパリと断ります。こうなった時の兎のお姉さんは誰よりもガンコです。
ここ100年ほど忘れてしまったことを、辰のやんちゃ坊主は次々と思い出しました。
兎のお姉さんがお仕置き宣言して、撤回したことは一度としてないこと。
ちゃんということを聞かないと、1年ほど座れないぐらいお尻をまっかっかにされてしまうこと。
そして、兎のお姉さんのお仕置きは、いつだって自分のためを考えてお仕置きしてくれるということ。
諦めて兎のお姉さんの隣に立ちます。前まではここで兎のお姉さんが、辰のやんちゃ坊主のズボンと下着を降ろしますが、今回は違いました。
――――もうたっちゃんも大きくなったんだから、自分でお尻だしてうつぶせになりなさい。
大きくなったのならお尻も叩くなよと心の中で悪態をつきますが、言っても無駄なのは百も承知です。変に口答えをしても叱られてしまいます。
恥じらう顔を兎のお姉さんに見せないよう、顔を伏せながらズボンと下着を降ろします。耳まで真っ赤ですので、恥じらう様子は兎の お姉さんにはバレバレでしたが、兎のお姉さんは可愛いねという感想を心のなかにしまいました。
「ちゃんと脱げたね。それじゃあ、こっちいらっしゃい」
辰のやんちゃ坊主の手を握って、膝の上にうつぶせになるように導きます。
軽くしゃがみこんでから、ゆっくりゆっくりと膝の上にうつぶせになります。
辰のやんちゃ坊主も、昔と比べれば大きくなったものです。
昔はお尻ペンペンの時はヤダヤダと泣いて自分でお膝に来れませんでしたし、膝の上に乗ると手足が床につかずに空中でぱたぱたさせていました。
今の辰のやんちゃ坊主は、手は床にギリギリつくかつかないかですが、明日しっかりと床についてしまいます。大きくなったものです。
暴れても逃げられないよう、兎のお姉さんは辰のやんちゃ坊主の体を膝の上でがっちり抱え込みます。これからお尻を叩くよと、叩く方の手でお尻をぺちんぺちんと軽く叩きます。
こうされてしまうと、これからお尻を叩かれてしまう怖さと恥ずかしさで、辰のやんちゃ坊主は膝の上で縮こまってしまいます。これは昔も今も変わらないようです。
「それじゃあ、ペンするね」
肩まで手を振りかぶった後、ヒュッと手のひらで風を切り、スナップを聞かせて勢いよく辰のやんちゃ坊主のお尻を叩きます。
打擲音が部屋中に響き渡りました。もしかしたら、屋敷中に聞こえてしまったかもしれません。
辰のやんちゃ坊主は思わず体を反り返らせようとしますが、がっちり膝の上に抱え込まれているため、それも途中で終わってしまいます。
喉の奥からも「ひっ」とも「痛い」とも分からない、色々が合わさった声が漏れてしまいます。
昔より体が大きくなって大人になったつもりの辰のやんちゃ坊主でしたが、兎のお姉ちゃんのお仕置きは全く変わっていませんでした。
いや、もしかすると昔よりずっとずっと痛いかもしれません。
だって、兎のお姉さんはいつもいつも、辰のやんちゃ坊主のお仕置きはうんと力を加減してくれているのですから。昔も、今も。
年齢を重ねて大きくなった分に合わせ、力も厳しさも増すことは、兎のお姉さんにとっては当たり前だったのです。
一発目の痛みが引き切らないうちに、二発目、三発目と兎のお姉さんのお手々が次々とお尻に降り注ぎます。
大きくなったんだから、少なくとも最初のうちは泣いたり暴れたりするもんかと思っていた辰のやんちゃ坊主でしたが、これにはたまりません。
その密かな目標は音をたてて崩れ、まだ10回も叩かれていないうちにバタバタと足で床を蹴っ飛ばします。
足をばたつかせても、兎のお姉さんの膝の上からは逃げられませんし、逃げられそうな気配すら全くありません。
暴れる辰のやんちゃ坊主を上手に抱え込み、やんちゃ坊主が体をよじらせてしまう時には足と膝を使って、膝の上から決して逃がしません。兎のお姉さんはお尻ぺんぺんのスペシャリストなのです。
「いっ…!ひあっ…!やっ…も、もう反省した、反省したからぁ…!」
腕を突っ張って、辰のやんちゃ坊主は膝の上から立ち上がろうとしてしまいます。
ですがそれでも兎のお姉さんの膝の上からは逃げられません。上手に抱え込んで、どれだけ腕を突っ張っても立ち上がれないようにしていまいます。
そして、逃げようとした罰として、もっともっと痛い平手打ちをお尻に加えます。
これにはもうたまりません。
堰を切ったように辰のやんちゃ坊主はわあわあと泣き出してしまい、あらん限りの力でお姉ちゃんの膝の上でじったんばったん暴れだしてしまいます。
ですが、それでも兎のお姉さんのお膝からは逃げられないのです。力いっぱい暴れだした辰のやんちゃ坊主をよそに、落ち着いた様子で兎のお姉さんはピシャリピシャリとお尻叩きを続けます。
そうやって、100回ほどお尻をひっぱたいたところでしょうか。
暴れつかれてしまった辰のやんちゃ坊主は、膝の上でくったりと倒れ込んでいます。ひっくえっくとしゃっくりをあげ、顔中が涙で濡れています。たくさん泣いたのでしょう、お姉さんのスカートも涙で濡れてしまっています。
お尻も真っ赤にはらしてしまい、これではしばらく椅子にも座れないでしょう。
「…うん。それじゃあお仕置きはおしまい。
たっちゃん、お疲れ様。よくがんばったね」
膝の上でうつぶせになっている辰のやんちゃ坊主を仰向けにひっくり返してから、背中と膝の裏に腕を差し込んで抱きかかえます。
真っ赤なお尻が膝や椅子に触れないように気をつけながら横向きに座らせました。
「実はね、たっちゃんも成長したからお仕置きも厳しくしたんだ。
途中でじたばた暴れちゃったけれど、それでも最後までちゃんとお仕置き受けられてエライエライ。
これからはあんまり、軽い気持ちで約束したり破ったりしちゃダメだからね。
お姉ちゃん、こうみえてすごく寂しくて悲しかったんだから」
ぼろぼろ大粒の涙をこぼして泣きじゃくる辰のやんちゃ坊主の顔をギュッと抱き寄せます。
安心しきった辰のやんちゃ坊主は、兎のお姉さんにしがみついて、また新たにわあわあと大きな声で泣きじゃくりました。
兎のお姉さんは、辰のやんちゃ坊主が落ち着くまでずっとずっと、頭とお尻をなでさすっていました。
その後、神様の邸宅のパーティの間、辰のやんちゃ坊主はずっと兎のお姉さんの膝の上に座り、
他の十二支の人達にニヤニヤされましたが、お尻が痛くて兎のお姉さんの膝の上以外には座れない辰のやんちゃ坊主は、ずっとお姉さんの膝の上にいました。
兎のお姉さんはとてもうれしそうでしたとさ。
めでたし、めでたし。