みこずぶらざー うぃず おれ(F/m)
ウィツさん作
ひっそりたたずむ神社ってのは実に趣がある。大きく有名な寺社仏閣ももちろん荘厳であるが、個人的には正月はこういった神社に来てお参りするのが好きだ。
青い空、白い雲、少し肌寒いが心地の良い風と、古びた木の匂い…それから…、
ぺちん ぺちん ぺちん
…情緒もへったくれもない音が聞こえてくる。この神社はいつもそうだ。
「ひゃぁぁっ…痛いよぉっ…」
「当たり前っ!ちゃんと反省なさい!!」
この神社は一人の神主とその奥さん、そしてその娘である彼女が巫女として切り盛りしている。
…とここまでは普通の神社だが、問題はもう一人、末っ子だ。こいつがなかなか問題児、おとなしくて良い子なんだが。時々恐ろしいいたずらを仕掛けやがる。今日は何をどうしたのか狛犬をぶっ壊したらしい。
そんなわけで、今はお姉さん巫女が彼のおしおきの真っ最中…。
なんで俺がこの神社の家庭事情をこんなに知っているか…?
簡単だ、今イタズラ坊主のお尻をぺんぺんしてる巫女…こいつは俺の彼女だ。
巫女がお付き合いしていいのか?…お前いつの時代の人間だ。今時そんな厳しくしたらだれも巫女やってられないぜ。
とはいっても彼女は神に仕える者としてちゃんとやってるし、俺もその身内として恥じないような行動は取るようにしてる。現代っ子なめんな。
「なぁ、そろそろ許してやったらどうだ?」
ちょっと弟がかわいそうになって俺は彼女に声をかけた。さっきからものすごい勢いで叩かれてもう真っ赤だ。
…まぁ俺の時はもっと厳しくされるんだけどな…こほんっ、なんでもない。
「だめっ!!つっくんだって狛犬を破壊することがどれだけいけないことだってわかってるでしょ!?」
「…まぁ、そうだな」
まず俺は「狛犬を破壊」っていう言葉を女の子から聞く日が来るとは思ってもいなかった。
「うぅー…お姉ちゃん反省したからぁ…」
「いけませんっ!!まだまだ許さないからねっ!!」
「ひぃぃ〜…」
かわいそうに、俺が代わりに神様に早くお尻ペンペン終わりますようにって願っといてやるからな…。
ぺちん ぺちん ぺちん
「いたいよぉぉ…!!」
「痛いばっか言ってないでちゃんと反省するのっ!!」
俺は神様に手を合わせながら二人の会話に聞き耳を立てていた。いつも通りの会話だ。
「うぁぁっ…ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…!!」
「もうしないってちゃんと神様と約束しなさいっ!!」
神様と約束、これがこの神社でのおしおきを終わらせる方法。これが出たってことはもうそろそろおしおきは終わり。俺の願いが通じたかな。
「ごめんなさいっ…!!かみさまもうしませんっ…!いい子にします!!」
その言葉と同時に彼女は手を止める…はずだったんだが。
ぺちん ぺちん ぺちん
「や、やゃ…なんでぇぇ〜!?」
今日、彼女は手を止めない。どうしてそんなに怒ってるんだ?
「今日はそれだけじゃないでしょ!?」
「え…?」
「お供え物のおまんじゅう、あなた食べたでしょ!!」
「…それ食べたのお兄ちゃんだよっ!!!!」
「…え?」
「僕は食べてないよ!!お兄ちゃんが食べたんだっ!!」
「ごめん俺ちょっと用事あるから帰るわ」
「つっくん…♪」
今年こそお尻ペンペンを卒業できますように…。