兎お姉さんと辰のやんちゃ坊主 〜エピローグ〜


ヴァルマーさん作


さて、神様の邸宅でのパーティーが更に盛り上がりを見せていた頃、辰のやんちゃ坊主は何やらソワソワし始めました。
「どうしたの?」
ここで兎のお姉さんが心配そうに声を掛けると、
「・・・おしっこ。」
「あらまあ、でもそれだけジュースをたくさん飲めば当り前よ。どれどれ、一緒に行こっか?」
「い・・・いいよ!一人で行けるから。」
「ふーん、でも大丈夫?まだお尻痛いでしょ?」
「平気、平気。ゆっくり歩けば痛くないよ。」
ただでさえ兎のお姉さんの膝の上に座らせてもらっているのに、これ以上甘えたくない・・・そんな小さなプライドが邪魔をして、辰のやんちゃ坊主は本心を隠したままトイレに向かいました。



「ふう、すっきりした。」
用を足した辰のやんちゃ坊主は、そろりそろりと振動を最小限にしたすり足で会場へと戻ろうとします。しかし、行きもそうでしたが、会場とトイレの間の距離は意外と遠く、お尻がズキズキ痛む辰のやんちゃ坊主にとってはかなりの重労働でした。
「うー、やっぱりお姉ちゃんと来ればよかったかなぁ・・・いちちっ!」
後悔の独り言が広々とした廊下に虚しく響きます。
「おーい、たっちゃーん。」
するとここで、後ろから一人の女性の声が聞こえてきました。
「あ、牛姉さん。」
「どうしたの?その歩き方。」
「い、いや、これは、その・・・。」
「フフフッ、何モジモジしているの?とっくにバレバレなんだから・・・よっと!」
「うあっ!」
牛のお姉さんは突然、辰のやんちゃ坊主を抱き上げた。ほのかに赤くなっている顔、そしてお酒の匂い・・・どうやら牛のお姉さんはお酒に酔っているみたいです。
「少し別室でお姉さんと休憩しよっか。」
辰のやんちゃ坊主は返事をする間も与えられず、そのまま強引に連れていかれてしまいました。



それから二人は会場から少し離れにある部屋に入っていきます。そこには、さすが神様の邸宅だと思わせる高そうな陶芸品がいくつも棚に並べられ、高級感に満ち溢れていました。だけど、牛のお姉さんはそれらには特に関心を示すことなく、目の前に置かれた椅子を持ち出すとそのまま自分が座りました。
「はいはい、たっちゃん。これからお姉さんが楽にしてあげるからねー。」
「・・・・!!」
ここで抱っこされていた辰のやんちゃ坊主は、今度は牛のお姉さんの膝の上に
うつぶせにされてしまうと、驚きすぎて目が点になってしまいます。
まあ当然でしょう。場所は違えど、ついさっきまで同じ体勢をさせられている間、とんだ災難に遭っていたのですから。
そして自然の流れで牛のお姉さんの手によりズボンと下着が脱がされると、そこには真っ赤に腫れたお尻が再び晒されます。
(う、嘘だろ・・・!)
心の中で叫ぶ辰のやんちゃ坊主。もちろんここまでくれば次の展開は予想可能です。
「あはっ、兎ちゃんって本当に厳しいのね。こんなに赤く腫れて・・・。」
そう言いながら牛のお姉さんは辰のやんちゃ坊主のお尻をまじまじと眺めた後、手をスッと動かします。辰のやんちゃ坊主はその気配に敏感に反応し、反射的に歯を食いしばりました。
ところが、ここで牛のお姉さんは予想外の行動をとります。



「これから痛みが少しでも和らぐように、お尻なでなでしてあげるね。」
「へ?」
呆気に取られる辰のやんちゃ坊主ですが、それと同時にお尻に何やら温もりが伝わってきました。
「はい、なでなでー、なでなでー。」
言葉の通り、牛のお姉さんは辰のやんちゃ坊主のお尻を優しく撫で始めます。
「ね、ねえ、牛姉さん。ぼ、僕はもう大丈夫だから・・・。」
「だーめ、だってこんなにお尻が火照ってるのにそんなわけないでしょ。ほら、なでなでー、なでなでー。」
「ひゃ!く、くすぐったいよ・・・だからもうやめ・・・あぁ・・・。」
こうして牛のお姉さんにお尻を撫でられていくうちに、
「き、気持ちいい・・・。」
辰のやんちゃ坊主は目をトローンとさせ、快楽の表情を浮かべます。そう、撫でられる手の温かさはもちろんですが、兎のお姉さんとは比べものにならない牛のお姉さんのむっちりとした太腿の弾力と温もりに、すっかり虜になっていくのでした。



こうして時が1分、また1分と、辰のやんちゃ坊主の「癒しの時間」が過ぎていきます。このままパーティーが終わるまで、いやパーティーが終わってもこのまま続いてほしい・・・心からそう思い始めていた辰のやんちゃ坊主でありましたが、ここで牛のお姉さんは何やら独り言をブツブツと言い始めます。
「もー、鼠くんてばどうしてあんなにずる賢いんだろう。ひっそりと私の体にくっついていたなんて・・・。おまけに、私を出し抜いて一番乗りってどういう事?もー、わけわかんないっ!」
「???」
そんな中、辰のやんちゃ坊主は何やら思い出したのか怒った口調で話している牛のお姉さんを見上げながら、不思議そうな顔をしています。
「結局、鼠くんには抗議したけど、いつの間にか言いくるめられちゃったし・・・本当に悔しいわ。この際、私も兎ちゃんみたいに鼠くんをお仕置きしてやればよかったのかな?でも、鼠くんは小さすぎるからどうやってお尻を叩いたらいいのか・・・もー、せめて鼠くんがたっちゃんと同じ、ううん半分くらいの大きさだったら思い切りお仕置きができるのに・・・そう、こうやって。」



「うぎゃー!」
するとここで、辰のやんちゃ坊主が急に大声をあげました。それは何と牛のお姉さんが突如、辰のやんちゃ坊主のお尻から手を離し、肩の高さまで振り上げると、そのままお尻目掛けて振り下ろしたのです。
そしてこれが「癒しの時間」から「悪夢の時間」に変わる合図となりました。
「鼠くんの馬鹿!馬鹿!!馬鹿ー!!!もー、許さない!許さない!!許さなーい!!!」
それからしばらくの間、休むことなく降り注ぐお尻ぺんぺんの雨あられ・・・牛のお姉さんにとっては鼠くんに対する怒りが爆発してしまった上、酒酔いによる平常心喪失が加わった結果と言えます。
一方、全く関係のない辰のやんちゃ坊主にとってはたまったものではありません。何とか逃げようと試みるのですが、牛のお姉さんの力強さには到底勝つことができず、ただただ既に赤く腫れていたお尻をさらに叩きのめされることとなるのです。
兎より牛の方が力が強いのは火を見るより明らか・・・そう、お尻ぺんぺんのスペシャリストは兎のお姉さんだけではなかったのです。
こうしてお尻ぺんぺんは軽く100回を超え、さらに数十回ほど叩かれたところでようやく牛のお姉さんは正気に戻りました。目の前には泣き腫らした目、そして直視できないくらい腫れあがったお尻にされた辰のやんちゃ坊主が膝の上でぐったりしていました。
「た、た、たっちゃーん!!」
牛のお姉さんはすぐに辰のやんちゃ坊主を解放してやると、すぐ自分の大きな大きな胸に抱きしめます。その後、何度もごめんね、ごめんねと言うのですが返事すら返ってきません。
相当怒っていると思い、動揺する牛のお姉さんでしたが、実はそれが大きな胸に顔が埋まって息ができないせいだと気付くと即座に抱きしめる力を緩めます。すると咳込みながら辰のやんちゃ坊主が一言・・・。
「ひどいや、牛姉さん・・・。」
それから機嫌を直すまではかなり時間を要する展開に・・・と思いきや、牛のお姉さんのある提案により、丸く収まることになるのでした。



「おわびに・・・たっちゃんの言う事を何でも聞いてあげる!」
「え?な、何でもいいの?」
「もちろん。お酒の勢いとはいえ、こんな痛々しいお尻にしちゃったんだもの。」
「そ、それだったらさ、一つお願いがあるんだけど・・・。」
「んー、何かな?」
ここで辰のやんちゃ坊主は何やら牛のお姉さんに耳打ちします。
「・・・いいわよ。けど、それで本当にいいの?」
「うん。だけど、これはうっちゃんには絶対内緒だよ。」
「はいはい、確かに兎ちゃんには言わない方がいいかもね。私のおっぱいを飲ませてほしい・・・なんて。」
「わー!わー!声が大きいよ!」
「大丈夫よ。兎ちゃんも相当お酒入ってるし、まだまだ会場で宴を楽しんでるわよ。」
「そ、そうだよね・・・ふう。」
「フフッ、それじゃ可愛い赤ちゃん・・・たっぷりとお飲みなさい。」
牛のお姉さんは辰のやんちゃ坊主を横抱きにしながら、ゆっくりと上着のボタンを外します。すると、はちきれんばかりの大きな胸の谷間が現れました。どうやらノーブラのようであり、今にもこぼれ落ちそうな状態です。
「・・・ゴクッ。」
その仕草をじっと見続けていた辰のやんちゃ坊主は、大きく唾を飲みこみます。さあ、もう我慢の限界とばかりに牛のお姉さんの胸に飛びつこうとしたその時・・・



「・・・たっちゃん、何やってんの?」
ドキッ!
背後から聞こえる聞きなれた女性の声・・・振り返るとそこにはいつの間にか部屋に入り、腕を組んで仁王立ちをしている兎のお姉さんの姿がありました。
さらに目が据わって口を真一文字に結ぶその表情は、まさに不機嫌そのものです。
「あ、あのね、兎ちゃん・・・これには理由があってね・・・。」
ここで牛のお姉さんが間に入ろうとしますが、兎のお姉さんは聞く耳を持ちません。
「全く、あんたって子は!私にはお見通しよ。私がお仕置きしたそのお尻を牛姉さんに見せて同情してもらおうとしてたんでしょ?しかも抱っこだけならまだしもそんな事まで・・・悪い事したのはたっちゃんの方なのに、私を悪者扱いしてっ!そんなに私が嫌いになったのっ!!」
「だ、だから兎ちゃん・・・ちょっと落ち着いて私の話を聞いて・・・。」
「牛姉さん!もうそんな辰坊を庇うのはやめて、この部屋から出てってください!!」
「は、はいー!」
牛のお姉さんは迫力に負け、辰のやんちゃ坊主の身柄を兎のお姉さんに預けると、そそくさと退散してしまいました。
「さてと・・・こうなったら、とことん嫌われてあげるからね。夜明けまでたーっぷりと懲らしめてあ・げ・る。」
「あわわわわ・・・。」
兎のお姉さんにがっちりと抱き上げられている辰のやんちゃ坊主は、もはや顔面蒼白状態であったそうな・・・。



「ん?どうしたんだよ牛姉。遅かったじゃん。」
「え、ええ、ちょっと飲み過ぎたみたい・・・。」
会場に戻ってきた牛のお姉さんを鼠くんが迎えた。
「へへ、ヤケ酒か?もう怒んなよ。俺が一番になったのは運命なんだからさ。」
「だ、だけど私はちゃんと正々堂々ここまで来たのに、あなたは楽して・・・。」
「あ、また説教するのか?そんなに怒るとシワが増えるぜ。」
「こ、この・・・あ、あれ?鼠くん、どこにいったの?」
鼠くんの言葉にキレた牛のお姉さんは拳を振り上げた瞬間、さっきまで目の前にいたはずの鼠くんがいなくなってしまいました。
「鼠くん!鼠くん!こらー、どこにいったの?」
辺りを見回す牛のお姉さんでしたが、それでは鼠くんを見つけることはできません。なぜなら、
「イヒッ、やっぱここが一番いいや。」
鼠くんはまたもや牛のお姉さんの胸の中に素早く潜り込んでいたのでした。
「もー、本当にもー、鼠くんってばー、出てきなさーい!!」
それに全く気付かない牛のお姉さんを他の八つの干支たちが笑いながら見守る中、パーティーは朝まで続いたのでした。