ぺちSS板
カーさんSPIRAL(F/m)


1.
「母さぁん、早く帰ろうよ。脚疲れたよ」
「だめよ、まだ夕飯のおかず買ってないでしょ。いい子だからもう少し我慢なさい、ね?」
「あぁもう、恥ずかしいからそういう言い方はやめてってば」
 いつもの近所のスーパーの食品売り場。今日も僕は母さんに連れられて夕飯の買出しに来ていた。
 何だかルンルンと鼻歌まで聞こえてきそうなくらい上機嫌な母さんに、ちょっと不機嫌な僕がいやいや後をついていく、これがもう日課みたいになってる。
 僕は特に買う物もないし早く帰りたいのに、母さんがあれやこれやと色々コーナー巡りするから帰るに帰れない。どうして女の人の買い物ってこんなに長いのかな。
「ほら晶。晶は夕飯何が食べたい? 何でも言ってごらん」
「何でもいいから早くしてよ。僕クタクタだよ」
「ふうん、何でもいいの? じゃあ晶の嫌いな納豆とキュウリのごま和えにしようか?」
「うっ‥‥お、お肉とかがいい、です」
 何さその組み合わせは。母さんがちょっぴり怒ってるのがわかって、慌ててお肉を推薦してみる僕。
 それを聞いた母さんは「お肉か、じゃあ豚肉で今日は酢豚に‥‥あぁ豚カツも捨てがたいな」とかぶつぶつ言い始める。母さんはこうなるととにかく長い。もう、早く決めてほしいのに何でそんなに考えるのさ。
 こんな独り会議状態の母さんは放っといて僕だけ帰りたい、なんて思ってもしっかり手を握られてるから離れることもできない。この歳になってまで母さんと手をつないで買い物なんてもうやだ。
「母さん、まだぁ? 僕帰っていい?」
「ダメって言ってるでしょ、帰り道危ないんだから」
「も〜、早くしてよ。だいたい、何で僕まで付き合わなきゃいけないのさ」
「文句言わないの。またお仕置きされたいの?」
「うぅ〜‥‥」
 そう言われると黙り込むしかなくって。母さんの言いなりなんて嫌だけど、お仕置きはもっとやだし。そんな頬を膨らませてすねる僕を見て、母さんは「仕方ないな」って言って突然僕を抱きしめて頭をなでてきた。
「わっ、ちょっと母さん、やめてよっ」
「ちょっと言い過ぎたね。ほら、退屈ならお菓子でも見てらっしゃい。今日は3つまで買ってあげるから」
「う〜、だから子ども扱いしないでよ母さぁん」
「つべこべ言わない。お仕置きがいい?」
「ひっ‥‥い、行ってきますっ!」
「はい、いってらっしゃい」
 うぅ、この母さんの「お仕置き」攻撃には絶対逆らえない。くすくす笑う母さんから、僕は逃げるようにしてお菓子コーナーに向かって走り出した。



2.
「はぁ‥‥」
 母さんが見えなくなったところで、なんだかため息をついてしまう僕。なんで母さんってあんなに強引な人なんだろっていつも思う。
 えっと僕は村木晶。もう中学生だっていうのに、いまだに何かと構ってくる母さんに少し悩まされてる13歳。
 もう、すごいんだよ? 母さんの過保護っぷりときたら。言葉使いとか成績のこととかいちいち口うるさくて、出かける時は「誰とどこへ何の用で行くの」ってしつこいったらないし、帰ったらその日のこと根掘り葉掘り聞き出して尋問されるくらい。
 今だって「晶ひとりじゃ危ないから」って、無理やり買い物に引っ張ってこられてるくらいだし。そんな小学校低学年みたいなこといつまで続けるのって抗議しても「黙って母さんの言うこと聞きなさい」ってちっとも取り合ってくれない。僕だって、やりたいこといっぱいあるのにさ。
「あ〜、つまんないな〜。もうこのまま帰っちゃおうかな」
 思わず愚痴ってしまう僕。戻っても退屈なだけだし、今のうちに黙って帰るとか‥‥。でもそんなことしたら絶対お仕置きされるし。「誘拐されたかも」って真っ青になって心配させた時のお仕置きがどれほど怖いかよく知ってるから、やっぱりそんなことできなくて。そう考えるとまたため息が出ちゃう。
 えっと、お仕置きっていうのは‥‥その、恥ずかしいんだけど‥‥お尻を裸にされて、手で何度も叩かれちゃう、お尻ぺんぺんのこと。それが母さんのお仕置き。
 母さんのお仕置きってすっごく痛くて、「お仕置き」って聞いただけで身体が震えちゃうくらい。お尻だって何回も叩かれちゃうと痛くて我慢できなくなるし、泣いて暴れたって母さんはやめてくれないから。いつも散々泣かされて、お尻も真っ赤になって腫れ上がってしまうくらいにならないと許してもらえない、そんなのが母さんのお仕置き。
 お仕置きされるのは絶対いやだから、母さんの前じゃできるだけいい子にしてるんだけど‥‥。ちょっとでも悪いことしたり聞き分けなかったりするとすぐお仕置きだから、よっぽどいい子にしてないとだめ。こんなの、絶対厳しすぎると思うんだけど。
 一度、この歳になってまでお尻なんて恥ずかしいって言ったら、
「かわいい晶のお尻以外のとこなんて叩けるわけないでしょ」
‥‥って、ぴしゃりと言われて何も言い返せなくなった。‥それならお尻も許してほしいんだけど、そんなこと言ったらまたお仕置きされるだけだろうし。
「はぁ‥‥」
 何だか滅入っちゃうだけだから、もう考えるのはやめようと思い直す僕。
 せっかくだから、素直に買うお菓子でも選びはじめることにする。チョコレートにしようかな、それとも今日はクッキーにしようかな、あっでも暑いし今日はアイスに、なんて考えて、母さんが3つまでいいって言ったんだし全部買っちゃえ、と思ってチョコを取ろうとした時に不意に誰かから声をかけられた。



3.
「あら、村木くん?」
「え? ‥‥げっ、美河先生っ?」
「何よその驚き方は。失礼ね」
 見ると僕のクラス担任の美河景子先生が立っていた。思わず反射的に身構えてしまう僕。何で美河先生がここに? って思って、先生が同じ校区に住んでるんだってことを思い出した。
 うわぁ、厄介な人に会っちゃったなぁ。母さんに加えてこの人にまで会うなんて、余計気分が滅入っちゃう。この先生、母さんにも負けない口うるさい人だから‥‥。学校でも厳しくてやな先生って有名だし、僕なんて何回この先生と口ゲンカしたことか。
「奇遇ね。どうしたの、こんなところで。おつかい?」
「え、えと‥‥まぁ、そんなとこです」
 慌てて手拍子に嘘をつく僕。さすがに母さんの付き添いだなんて言えないし。
「へぇ、村木くんがそんないい事する子には見えないけれど。もしかして、お母さんの前じゃいい子なのかしら?」
「うっ、余計なお世話です。美河先生には関係ないでしょ」
 うぅ、当たってるだけに悔しい。母さんがいない学校じゃ、先生を無視して遊んでたり態度悪い僕だけど、家でそんなコトしたら即お仕置きものだし。どうせバレないし学校でくらい羽目を外してもいいじゃないって思うんだけれど、生徒指導の美河先生は許してくれなくて、いつも注意されては口ゲンカしてる。何で僕の周りにはこういう口うるさい人ばっかり寄ってくるんだろ。
「余計なお世話、ねぇ‥‥。先生の前じゃこんなに生意気な子なのにね〜」
「もうやめてよ。美河先生こそどうしたんです、こんなとこで」
「あら、先生は夕飯と明日の弁当のおかずの調達よ? 先生だって忙しいのよ、一人でお仕事も買い物も料理もするんだから。村木くんが学校でもいい子なら負担も減って助かるんだけど」
「もぉ、だから何でいちいち僕の話になるんだよ」
 これだからヤダこの先生。いつもいつもネチネチと人の悪口ばっかりで。嫌味を言わせたら絶対に校内一だと思う。
「今度、村木くんのお母さんに聞いてみようかしら。村木くんをいい子にする方法」
「え‥‥」
 まずい、そういえば母さんすぐ近くにいるんだった。言われてすっごくまずいことに気付く僕。この嫌味先生と母さんを会わせちゃおしまいだ! 学校での僕の悪行を母さんに言い触らされでもしたらもう助からない、お尻のウェルダン焼きが食卓に並んじゃう‥‥っ!
「あ、あ、あのっ、それじゃ先生っ、僕はこれでっ! 失礼しますっ」
「え? あ、こら! 待ちなさい、どうしたのよ急に」
 危険を悟って早々に逃げようとする僕。でも、反応の速い美河先生は僕の服を素早くつかんであっさり引き止めてしまう。さすが問題児担当の先生‥‥なんて感心してる場合じゃなくって!
「はっ、離してっ! 離してよ先生っ! いやだ、助けて‥‥」
「別に叱ってるわけでもないでしょう? 何をそんなに怯えてるのよ。いつもは嫌ってほど私に刃向かってくる癖に」
 そんなこと答えてる暇ない! 早く逃げないと、母さんが、お仕置きがやってきちゃうっ!
 僕が死ぬ気でじたばたしてるところへ、残酷にも最悪な声が後ろから聞こえてきた。



4.
「晶〜? まだお菓子見てるの? もう帰るよ〜」
「ーっ!? かか、母さん!?」
 見ると母さんが食品コーナーの入り口に立ってこっちを覗いてる。そんなっ、やだ、何でこのタイミングで来るの!? まずいぃ、僕をつかんでる先生に気付かれちゃった‥!
「お母さん? あぁ、なるほど。そういうことね」
 あぁっ、しまった! 先生にも気付かれちゃった! 先生が意地悪な顔になっていくのを見て、僕が母さんに怯えてるのがバレてるってすぐわかっちゃう。あぁぁ、まずいまずいぃ、この先生のことだから‥‥!!
「ふふっ。いい機会だし、親御さんにも知らせておきましょうか。学校での晶くんの評判をね」
「やっ‥‥やだあぁぁ!」
「きゃ‥‥!!」
 怖くなって全力で暴れる僕。僕の大声で先生の手の力が緩んだ隙に、何とか先生から逃げ出して母さんの胸に飛び込んだ。もう先生の前で恥ずかしいとか言ってられなくて。何とかしてお仕置きから逃げ出すことしか頭になかった。
「か、母さぁん!!」
「どうしたの晶? あの人、知り合い?」
「うぅん、全然知らない! ちょっと性格悪いおばさんに因縁つけられてただけ! 早く帰ろ!」
「なあぁんですって〜」
 ピクピクとこめかみをひくつかせる美河先生。でもそんなの気にしてられない。早く、早く逃げないと! 先生はひきつった顔をすぐ営業スマイルに戻して母さんに向き直った。
「コホン。え〜、晶くんのお母様ですね。初めまして。私、晶くんの担任を」
「わああぁぁぁっ!!」
 精一杯の大声でその続きを阻止する僕。でも抓られたお尻の痛みで僕の声はあっけなく途切れてしまう。
「ぃっ、痛いぃ‥‥」
「静かになさい。失礼しました、続きをどうぞ」
 母さんに怒られて、もう何も言えなくなっちゃった。あぁ、もう止められない。学校のこと、母さんに全部ばらされちゃう‥‥!
「はい。私、晶くんの担任を務めさせていただいています美河景子と申します。晶くんの学内での素行不良について、少々保護者の方にお伝えしておきたいことが」
 ギュウウウゥゥゥッ!!
「ひぎいぃっ!」
 先生がそこまで言ったところで、お尻を思いっきり逆回りに抓られた。痛くて、思わず母さんにしがみついてしまう。涙いっぱいの目で母さんを見上げると、すごい険しい目で僕を睨んでた。
「‥‥先生、続きをお願いします」
 あぁ‥‥やめてやめて。すがるような目で一生懸命首を振って美河先生にお願いしてみる。けど先生はそんな僕を見て意地悪く微笑んだだけで、どんどん続きを話し始めてしまった。
「はい。晶くんは成績や出席には問題はないのですが、授業の受講態度に少々問題があり、どの教員に対しても注意されては反発するため授業が進まず、職員の間ではたびたび問題になっています」
「ひぐうぅぅぅ‥‥!!」
「あまりに態度が酷い時はつい教員も手が出てしまうのですが、それに反発して教員を叩き返す、ということも多く各々教員は手を焼いて‥‥」
「あううぅぅっ‥!」
 先生が何か言うたびにお尻がギチギチと引っ張られて僕は擦れた悲鳴をあげてしまう。ひっ、酷いよ先生。僕をいじめて楽しんでるとしか思えない顔で僕を見下ろしてきて‥‥。母さんはと言うと、目も合わせられないくらい怒った顔で僕を睨みつけてお尻をギュウギュウと抓ってくる。
 ‥‥うぅ、誰か助けて。
「‥それと、これは私個人が晶くんを呼出して注意した時のことなのですが‥‥」
 ‥‥えっ? 嘘。まさか、先生‥‥!?
 ハッとして先生を見上げる僕。先生は僕と視線を合わせてすっごく嫌味な顔で微笑む。ば、ばらすつもりなの‥‥っ!? あの生徒指導室のこと‥‥!?
「話を聞かない晶くんに『ちゃんと頑張ってると思ってくれているご両親に悪いとは思わないの』と私が尋ねたところ、晶くんの返した答えは何だったと思いますか?」
「ひっ‥‥やっ、やだ先生! それは、それだけは言わないで!! ひうぅぅ‥‥!」
「構いません、聞かせてください」
 あぁ、言わないで先生‥‥! 恐怖でぽろぽろと涙がこぼれてくる。絶対母さんには知られたくない、お願い先生やめて‥‥。
「そんなの関係ないです ――― 小うるさい母さんとか鬱陶しいだけ ――― 晶くんは私にこう返答しました」
 ギギュウウゥゥーーーー!!!
「いっ、痛い痛い〜〜!! 母さんごめんなさい〜!!」
 すごい力で何度もお尻を抓り上げられた。必死に母さんに抱きついて痛みをこらえる僕。もう怖くて母さんの顔なんて見れなくて、泣きじゃくりながら母さんの胸にしがみついた。
「先生、よくわかりました。この子には私がきつく言って聞かせますので」
「はい。よろしくお願いします」
 母さんは先生に一礼して、無言で僕の手を引いていってしまう。もう、このまま地獄へ連れて行かれるような気分でとぼとぼ後をついていく僕。
 うぅ‥‥もう助からない‥‥今日、僕死んじゃうんだ‥‥。
 絶望した気持ちで先生の横を通り過ぎるとき、目一杯恨みをこめて睨んだ僕に、美河先生は軽く微笑み返して言った。
「たっぷり、絞ってもらいなさい」
 嫌味先生の悪魔めいたセリフを聞いて、僕は死にそうな顔のままうつむくしかできなかった。



5.
「晶、わかってるよね?」
「はい‥‥」
 母さんが自分の隣をぽんぽんと叩いて僕にお仕置きを宣告する。とっくに観念してる僕は素直に母さんの隣に座ってお仕置きを待った。
 帰りに何度も「ごめんなさい」って謝ったけど、母さんは何にも言ってくれなくて。家に帰るとすぐに居間に連れて行かれた僕は、そのまま言い訳なんて聞いてもらえなくて即お仕置きになっちゃった。
 手を引かれ、ぽすんと膝に載せられる。何度か腰の位置を調節されて、一番叩きやすい場所にお尻を動かされて、背中を押さえて固定される。
 うぅ、これだけですっごく恥ずかしいのに‥‥。
 お尻を高く突き出した感じで、この位置からお尻を動かしちゃうとお仕置きがもっと厳しくなる。だから暴れたりなんか絶対できない。もう許してなんかもらえないのはわかってるから、お仕置きが終わるまで素直にしてるしかないんだ‥‥。
「あぁ、母さぁん‥‥」
 ズボンがパンツごと引き下げられて、恥ずかしくって変な声が出てしまう。裸になったお尻を手でさわさわと撫でられてますます声が止まらなくなった。
「晶、今日は厳しく行くから。泣いても許さないよ」
「うぅ〜、ごめんなさいぃ」
「晶がそんなに悪い子だったなんてね。たっぷり叩いていい子にしてあげないとね」
 なでられていた母さんの手がお尻から離れた。叩かれる‥‥っ。覚悟して身を硬くする僕。直後、すごい音をたてて平手がお尻を襲ってきた。
 バッチイィーーン!
「うあぁぅっ!!」
 覚悟してても一発目はすごく痛くて、身体がビクンと跳ねて脚も上がってしまう。それでも何とかお尻は動かさなかった。ひりひりするお尻の痛みを、ギュッと目をつむって何とかこらえる。
「い‥‥痛いよぉ‥‥」
「1回目で何言ってるの。ほら、反省なさいっ」
 バシィーン! ベチーン!
「いうぅ‥‥っ!! たぁぁいっ‥!!」
 右、左と続けて落ちてくる母さんの手。一発ごとに息が止まりそうなくらい強く叩かれる。いつもよりずっと痛くて、いつもよりずっと怒ってるんだってわかって思わずお尻を硬くさせてしまう。
「うぅ〜〜痛いぃ‥‥」
「お尻動かしたりしたら‥わかってるでしょ? 我慢なさいね」
「はいぃ‥‥」
 それからお尻を少しなでられて、すぐまたベチンと叩かれる。またなでられて、息をつく間もなくまたバチン。叩かれた痛みでお尻が硬直するから、それが引いたらすぐ叩くっていう叩き方。僕が我慢できるギリギリで叩かれて、でもお尻はどんどん痛くなっていく一方で、途中で泣き出しちゃう。それでもお仕置きの手が緩むこともなくって、涙が後から後から溢れてくるばかりだった。
「まだ20回。まだまだ泣くのは早いよ晶」
「ごめんなさぃぃ‥‥母さんごめんなさい‥‥」
「晶、どうして母さんが怒ってるかわかる? 授業態度のことじゃないよ」
「‥‥っ‥‥わかんない‥‥っ‥‥ひぎぃっ!」
「母さんに隠し事、しないって約束したでしょ? なのに一体いくつ隠してたの。まだまだあるでしょっ!」
 今日一番怒った母さんの声。それと一緒にお仕置きもますます厳しくなってくる。
 お尻叩きの間隔が短くなってきて、だんだん我慢できなくなってきて。精一杯お尻を動かさないように我慢するけど、次第に速くなって連続になるともうほとんど限界で。
 お尻動かしちゃもっと痛い思いする、でも、でももう耐えられない‥‥!!
 痛くて痛くて泣き叫びたくなっても止まらなくって。お尻動かしちゃダメって決まりも忘れてとうとう僕は暴れ出してしまった。
「いぃ痛いよ痛いよ母さぁん!!」
「こら! いくら泣いても許さないって言ってるでしょ! 二度と母さんに隠し事なんかできないように躾けてあげる!」
 ビクッてするほど強い言い方をされて、怖くてそれだけでまた泣き出してしまう僕。我慢できないお尻に関係なく全力で平手が降って来て、痛くてもう何が何だかわからなくなって泣いて謝るしかなかった。
「わあぁぁん! 痛いよぉ!! ごめんなさぁぃ! ごめんなさぁぃ!」
「反省、しなさいっ、晶!!」
 いくら謝ってもお尻叩きは止まらない。二度としないって叫んでも許してもらえない。こんなの初めてで、こんな怖い母さんも見たことなくて。
 もう泣いて喚いて暴れることしかできなくて。それでも母さんは許してくれなくて。絶え間なく襲うお尻の痛みに、僕は二度と隠し事なんてしないって誓うだけだった。



Epilogue:
「い‥‥痛いよぉ‥‥」
 地獄のようなお仕置きを受けて次の朝。僕は教室で椅子にも座れなくて泣きそうになっていた。
 あれから何度叩かれたかわからなくて。しばらくしてお仕置きが止んだことは覚えてるけど、泣きじゃくったまま母さんの膝から動けなくて、そのまま僕は寝ちゃったみたい。
 朝起きたらお尻に湿布が貼られていて、母さんは僕に気付くと「ごめんね、痛かったでしょ?」って頭とお尻をなでてあやしてくれた。一日遅れだったけど、目一杯母さんに甘えてきちゃった。
 昨日の母さん、怖かったなぁ‥‥。今思い出しただけでも、もう絶対に怒らせたくないって思う。
「ふふっ、おはよう、村木くん。その様子じゃ、こってり絞られてきたみたいね」
「え? げっ、美河先生‥‥!?」
 お尻を擦ってるところへ、また突然に美河先生が話しかけてきた。慌てて擦る手を引っ込める僕。
 なんだか今日も嫌味めいた挨拶をしてくる先生。そう言えば、僕のお尻がこんなになっちゃったのも全部この先生のせいなんだっけ。そう思うと、愉快そうに微笑む先生に殺意がわいてきた。
「そんな怖い顔しないの村木くん。たくさん叱られてすっきりしたでしょう?」
「よ、余計なお世話ですっ」
 ‥‥当たってるのが悔しい。認めたくないけど。

 あの後母さんは僕が隠し事をしない代わりに、今までみたいにすぐお仕置きしたりはしないって約束してくれた。
 あやされてた時に隠し事をしてた理由を尋ねられちゃって。怖いけど「すぐお仕置きされるから」って正直に言ったら、母さんもそこは「ごめんね」って謝ってくれて。
 「お仕置きするかも知れないけど、ちゃんと話せばそんなにひどくはしないから」って、ちょっとしたことでも正直に話すように言われて、僕もそれはちゃんと守るって約束した。
 うん‥‥すごく痛かったけど‥‥なんだか気分が晴れた気がする。いつも「お仕置き」って言われただけでびくびくしてたから。母さんが僕の話聞いてくれたのがちょっと嬉しかった。
 まぁ、それでも母さんの過保護は相変わらずなんだけど‥‥。今朝だっていいよって言ってるのに無理やりお尻に薬塗られて湿布まで貼り替えられたし。それでも「お仕置き」の脅しが無い分マシかなぁって思ってる。

「どう? 反省して、もう私の前でもいい子になる気になったかしら?」
「‥‥いいえ、他の先生はともかく、絶対美河先生なんかの言いなりになんてならないですっ」
 言われてすぐ拒否する僕。この先生だけはいやだ! こんな人の前でいい子になるくらいなら、正直に「あの先生嫌いだから逆らいました」って母さんに報告したほうがまし! 絶対最後まで刃向かってやる!
「そう言うと思ってね。村木くんのお母さんから伝言を預かってるのよ」
「‥‥へ?」
 何それ? 母さんがこの嫌味先生に? 不思議がる僕に、先生は耳元へ顔を近づけてきて囁く。
「『晶が学校で悪い事した場合は、先生のご判断でお仕置きしてあげてください』ってね」
「え、ええぇぇぇぇっ!?」
 母さん、な、何を言うの〜!?
「昨日の晩、晶くんの家に電話したのよ。気付かなかった? 学校でのことまで面倒見きれないから、そちらでの教育は先生に一任しますってことね。私も信頼されたものね」
「でっ、でもそんな、先生がそんなことっ」
「あら、これは保護者公認なのよ。誰にも責められる筋はないわ。それとも、私にお尻叩かれたって学校でいいふらすつもり?」
「う‥‥うぅ〜〜‥‥」
 そんなことできるわけなくて、悔しいけど何も言い返せずにうつむく僕。
「諦めなさい。いい子にしてればお仕置きなんてしないわ。まずは授業はちゃんと受けること、いいわね?」
「うぅ、はい‥‥」
「声が小さい! お仕置きされたいの!?」
「はいぃっ!!」
 今お仕置きされたら死んじゃう! 慌てて背筋を伸ばして返事をする僕。
「ふふっ、いいお返事ね。あぁ、村木くんをいい子にする方法が見つかって、先生助かるわ〜。『お仕置き』って一言言えばいいんだものね」
「‥‥ひどいです」
 先生は軽く微笑んで、「それじゃ、いい子にしてるのよ」って、今まで見たことないくらいのご機嫌顔で言って僕の前から去っていった。今までで一番の嫌味だったんじゃないかって思うくらい、勝ち誇った言い方の最悪捨てゼリフだった。
「はぁ‥‥」
 気分が晴れたと思ったら、また落ち込んじゃうことになるなんて。やっぱり僕は「お仕置き」の言葉からは逃げられないのかな。なんだかこれからの家と学校の生活を予想して、ため息をついてしまう僕だった。
お茶K
2009年07月28日(火) 11時24分28秒 公開
■この作品の著作権はお茶Kさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初のSS投稿のお茶Kです。週末に投稿するはずが、書き直しがひどくて遅れすぎました。すみません‥‥!
葛藤に悩むキーくんを書いてみたくて勢いで書いてみました。ちょっとしたドタバタ展開です。
お話としては後半に力が入っています。肝心のスパシーンが短いですが、軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。

この作品の感想をお寄せください。
>tkさん
結構時間経ってるのに感想をどうもありがとうございます。
思いの外、先生がご好評で少々驚きです。お母さんが少し身勝手すぎたのが原因でしょうかw
キーくんの性格は基本お茶Kの気まぐれになってますが、その手のシチュも好みですね。もし書いたときはどうぞ読んでやってくださいませ。
お茶K(復旧コメント) ■2010-09-15 14:45:20
これは素晴らしい

確かに意地悪先生のお仕置きも見てみたいですね
自分はキーが反抗的なほど萌えます
tk(復旧コメント) ■2010-09-15 14:45:03
>まさひこさん
感想ありがとうございます♪
子ども時代にそんなエピソードが‥‥! 羨ましい限り‥‥いえ、さぞ恥ずかしい思い出かとw
先生/キーくんなお話もまたいくつか投入するかも。その時はどうぞ。
お茶K(復旧コメント) ■2010-09-15 14:44:40
いいですねー
先生からのお仕置きも見てみたかったも
肉親ではない先生からのお仕置きとなるとお尻出すだけで恥ずかしいですよね。
自分は保育園の時みんなの前で女の先生にお尻丸出しで叩かれたことがあります……笑
まさひこ(復旧コメント) ■2010-09-15 14:43:34
アカトさん、感想感謝です♪
例の長編の合間に、ということで短編のスパSSに初挑戦しましたお茶Kです。

またも厳しい強引なカーさん、をイメージして書いた一作。
超過保護なお母さんと、それにちょっと困って拗ねてるキーくん、という風景がテーマでしたのでお母さんの身勝手さはご愛嬌ですw
題名も、そんなお母さんに振り回される様子から取って付けてみました。

「お仕置き=お尻」が当然なお母さんは、あっさり先生に恐ろしいお仕置きを任せてしまったご様子。
あやしモードでお母さんが簡単に身を引いたのも、可哀相だしせめて家ではもう少し甘くしてあげようと思ったからだとか。
他にも学校でのvs先生談とか、電話での先生の熱意ある説得とか、色々細かい描写も考えたのですがドタバタ劇な都合で書ききれなくて、最後にこんな形にまとまりました。
不幸にも書けなかった部分は脳内補完でお願いしますね(笑)

それでは、感想ありがとうございましたっ。
お茶K(復旧コメント) ■2010-09-15 14:43:15
感想、遅くなってすみません!
投稿ありがとうございますー!

お母さんがスパ的に厳しい…!
SS最後で理由聞いてくれるようになってるけど、そもそも晶くんが学校で色々して問題になってるのも、元はと言えばお母さんが原因な気がするぞw
それに、理由聞いてくれるようになっても、学校で有名な厳しくてやな先生にお仕置き権限委託してどーするんだw
晶くん、これだとすっげグレそーな気が…。

ではではー!
アカト(復旧コメント) ■2010-09-15 14:43:01