日曜の朝、私はいつもどおりに起床して、簡単に朝食を取った後、すぐに家事にとりかかった。
 やんわりとした日差しの晴れの日。洗濯物を干すのに持ってこいの良い天気。気分もさわやかになって、自然と笑みがこぼれる。

 私は花村七瀬。このお家で住み込みの家政婦をしています。本業は小説家ですけどね。これでも、そこそこ名の知れた小説家なんですよ。自分で言うのもなんですが。

 洗濯物を干し終わると、とんとんと二階から人が降りてくる。

「あ、翔くん起きたのね。おはよっ」
「うん。七瀬さん、おはようございます」

 ちょっとだけ眠そうに眼をこしこしこすりながら、翔くんは挨拶を返してくれた。ちょっぴり充血気味みたい。まぁ、原因は分かってるんだけれどね。
 彼は翔くん。柚木 翔くん。今年大学に入ったばかりの、この家の一人息子。実は彼こそが、私がここで住み込みの家政婦をする理由だったりする。

 柚木姉さま―――と、翔くんのお母さんのことだけれど。柚木姉さまは私の担当編集者でもあり、敏腕編集長でもあります。
 私が中学の頃からずっと担当してくれていて、小説のことでも日常生活のことでも、いろんな面で面倒をみてもらっていました。
 ただ、数年前から編集長に抜擢されて、仕事が忙しくて家庭にちゃんと余裕を持てなくなってしまい…。
 柚木姉さまに「私の代わりに、翔の面倒をみてもらえないかしら?」と頼まれて。
 翔くんとは住み込む前から何度も会ったこともあるし、翔くんも私に懐いてくれていたし。それから私は、柚木家の住み込みの家政婦になって、翔くんの面倒を見ています。


 今日の朝はフレンチトースト。お砂糖と卵黄と牛乳をたっぷり浸した食パンをフライパンでこんがり焼いて、あまーいメープルシロップをたっぷりかけて。外は軽く焦げ目がついて、中はふわふわもちもち。
 平日の朝だと栄養が偏ってるし、軽すぎるけれど。休日の朝ならいいと思うの。
 甘いもの大好きな翔くんはにっこにこして、すっごく嬉しそうに食べてくれた。


 翔くんが朝ご飯を食べ終わって、私も午前にやっておく家事が終わってしばらくした後、居間で翔くんが飼い猫のナナちゃんと遊んでるところに声をかけた。


「ところでさ、翔くん。昨日は何時に寝たの?」

 びき、と翔くんの体がかたまったのが目に見えて分かった。

「え、えっと…。その…」
「ちゃーんと正直に言いなさいね?」
「…ごめんなさい。その…2時、です」

 翔くんはしょんぼりとうなだれて、申し訳なさそうに私の方を見た。
「遅くても何時には寝るって約束したっけ?」
「12時、です…」
「そうよね。それなのに、なんで夜更かししたの?」
「その…。…新しく買ったゲームが、面白くて、つい…」
「その気持ちは、よーく分かるんだけれどね…ダメでしょ?」
「ごめん、なさい…」

 今にも泣きだしちゃいそうな顔で、翔くんがごめんなさいした。

「それと。最近ずっと夜更かししてるよね? 私が気付いてないって思ってたの?」
「あぅ、えと…」
「そんなにお目目真っ赤にしちゃって、めーでしょ?」
「ごめんなさい…」

 しょんぼりしてる翔くんの隣に座布団を敷いて、その上に正座して、ぽんぽんをお膝を叩いた。

「さ、翔くん。おひざっ」
「えと、その…七瀬さん、許して…」
「ダメよ? ほら、おいで?」
「…はい…」

 諦めて、翔くんはのそのそと私のお膝の上で四つん這いになった。

 ―――――にー…?

 悲しそうな声で鳴いて、ナナちゃんが私の方を見た。

「ナナちゃん。別に翔くんのこと、いじめてるわけじゃないのよ?」

 ――――――にー…。

 分かってくれたのかどうか分からないけど、ナナちゃんは四つん這いになった翔くんの正面から少し離れたところに寝転がった。

「翔くん。ちょっと腰あげてね」
「はい…」

 ふるふる小刻みに体を震わせながら、翔くんが四つん這いの姿勢のまま、腰を少し浮かせてくれた。
 私のお膝と翔くんが腰を浮かせてくれてできた空間に手を差し込んで、翔くんのベルトをかちゃかちゃと外して。ズボンのホックをはずして、チャックを下げた。じじじじ、とチャックの降りる音と、翔くんを心配そうに見つめてるナナちゃんの鳴き声が部屋にこだました。
 そのまま、翔くんのズボンとパンツを指にひっかけて、太もも辺りまでずり下げた。ぷりんとして、ちっちゃい女の子みたいなお尻が外気にさらされると、翔くんはビクって体を強く震わせて、体をギュッと丸く縮こませた。



 ―――――約束を破ったり、悪いことをしたら、お尻ペンペン。これが、私と翔くんとのお約束。昔、私が柚木姉さまにされてたみたいに。
 中学生の頃に柚木姉さまが私の担当編集者になってくれて、仕事の面でも学校とかの面でも、私が悪いことをしたり約束をやぶったりすると、容赦なく柚木姉さまにお尻をぶたれてました。お尻ペンペンのお仕置きは怖くて痛くて、お仕置きされるたびにワンワン泣いちゃったけれど…いつも、そのあとに優しく抱きしめて慰めてくれました。
 翔くんも、私がされたみたいに、柚木姉さまからお尻をぶたれて育ちました。私がここで家政婦になる前にも、何度もその現場に直面したことがあります。
 私が家政婦になってからは、翔くんのお仕置きは私の仕事の一つになりました。最初は、私も翔くんもびっくりして、戸惑ったけれど…。
「恥ずかしいけれど…七瀬さんになら…」
 って。
 顔を真っ赤にしながら翔くんがそう言ってくれた時は、変かもしれないけれど…すごくうれしかった。
 それから、翔くんが悪いことしたり約束を破るたび、お膝にのせて、お尻ペンペンするようになりました。


 ――――――にー。

 心配そうなナナちゃんの声が部屋に響く。

「それじゃ翔くん。ペンするからね」
「はい…」

 すべすべなお尻を何度かなでてから、す、と大きく手を振りかぶって。
 スナップをきかせて、小刻みに震える翔くんのお尻に、手を振りおろした。
 ぱちぃん! とかわいた大きな音が響くのと、翔くんが悲鳴をあげて体を大きくそりかえらせたのは同時だった。
 叩く方とは逆の手で翔くんの体を私の膝に押さえ込んで、続けざまに手を振りおろした。何度も、何度も。

「うあん! ひあっ…やあっ! いたいぃっ…ふああっ!」

 ぴしゃん、ぴしゃんと叩かれるたびに、翔くんの体がびくんはねて、ヤダヤダって頭を振った。翔くんのお尻には、私の手が振り下ろされた数だけ、手の平の後が赤く残ってる。
 けれど、お仕置きは緩めない。このぐらいだと、すぐにお尻の痛いのはなくなって、ちゃんと反省できないのは昔の自分の体験と、今までの翔くんのお仕置きの経験からよくわかってる。

「いたっ…ひんっ! ごめ、ごめんなさい七瀬さん、ごめんなさいっ!」
「何について、ごめんなさいかな?」

 一度叩く手を止めて、翔くんの言葉に耳を傾けた。お尻ぶたれながら話したりするのは、大変だものね。
 淡い淡い紅色に染まってきた翔くんのお尻をいたわるようになでてあげる。やさしく。やさしく。
 翔くんは気持ちよさそうに吐息をもらしてから、

「ぅ…ん…。…その…。
 約束…やぶって、夜更かししてた…こと…」
「そうね。ゲームやりたくて夜更かししちゃう気持ちは分かるけど、めーでしょ?」

 ぱちん!

「ひんっ!」
「一日二日ぐらいの夜更かしなら多めに見てあげてもいいけれど、そんなにお目目真っ赤っ赤にしちゃうほど夜更かしするなんて。悪い子、悪い子」

 ぴしゃん! ぴしゃん! ぱちん、ぱちんっ!

「ふあっ! やだっ、ごめんなさいごめんなさい!」

 お尻全体をなでられて少し落ち着いたところに、続けざまにお尻に手をおっこどした。  気持ちが緩んでたところに痛いのがいくつも落ちてきたもんだから、翔くんはやだやだって体を左右に揺らして暴れ出した。
 気にせずに、私は叩く方とは逆の手で、翔くんの体を自分のお膝に押さえつけた。これでも、力には自信があるんだから。


「最近ずーっと夜更かししてたみたいだけど、何日ぐらいしてたの?」
「ぐすっ…その…。…あぅ…」
「正直に言わないと、おしゃもじ使っちゃうよ?」
「あぅ…。…その…。…一週間ぐらい…」
「……」

 ぱちん! ぴしゃん ぴしゃん ぺんぺんぺちん!

「うああん! いたいいたいいたいぃっ! ごめんなさい七瀬さんごめんなさいぃ!!」
「そんなにずーっと夜更かししてたなんてっ!
 今日は翔くんのお尻、お目目より真っ赤っ赤になるまでペンペンするからね!」
「やだやだやだぁ! ごめっ、ごめんなさいぃ! ふああんっ!」

 そんなに夜更かししてだなんて、もう…悪い子!
 なので、さっきよりお尻を気持ち強めに叩くようにした。
 翔くんはじたばたと手足をパタパタ動かして、体をよじよじ左右に大きく動かしたりねじったりして、痛みを紛らわそうとし始めた。
 手足パタパタとならいいんだけれど、大きく体をよじられたりすると、危ないのよね。


「こーら、あんまり力いっぱい暴れたら、危ないでしょっ」

 ぺんっ!

「ふああん! いたいぃ…やだぁ、もうおしまいぃ!」
「あ! こらっ!」

 痛いのにガマン出来なくなっちゃったみたいで、翔くんは手でお尻を庇いだした。
 軽くペチンって、翔くんのお尻を庇った手を叩いたけれども、どかすつもりはないみたい。

「翔くん? お手手でお尻かばっちゃダメでしょ?」
「えぐ、ぐすっ…だって…」
「だってじゃありません。素直にお手手どかしなさい?」
「やだぁ…! ふえぇぇ…!」
「もー…」

 可哀そうだけど仕方ないか。お尻をかばってる翔くんの手をつかんで、腕ごと背中に押さえつけた。

「これは、お尻ペンペンの途中なのにお尻かばった罰」

 バッチーン!!

「〜〜〜〜〜…!!! ひぐっ…ふえっ…ふえぇぇぇぇ…!」

 お尻のど真ん中に力いっぱい平手を落とした。
 体を数秒間大きくそりかえらせた後、くったりと倒れこみ、ひっくひっくと嗚咽をあげて弱々しく泣き出してしまった。
 …なんだか罪悪感を感じる…。

「それじゃ、お尻ペンペンの続きするからね?」
「ふえぇぇぇ…やだぁ…ふあぁぁん…」
「だーめ」

 ぱちん ぱちん ぱん ぱちん

「ふあぁんっ…いたいぃ…ごめんなさいぃ…! ふえぇぇん…!」

 一定のリズムで、翔くんのお尻をまた叩き始める。でも、もうそんなに強くぶつ必要なんかない。
 すでに真っ赤っ赤になったお尻は、きっとヒリヒリして何かあたるだけでも結構いたいと思う。時々翔くんのお尻をなでると、火照って熱くなってるのがよぅくわかる。
 翔くんはえぐえぐ泣きじゃくっちゃって、背中に押さえつけられてないもう片方の腕で私の膝にしがみついて。足はパタパタ動かしたり膝をすり合わせたり、体も痛みを逃がそうとイヤイヤって左右に動かした。体を左右に動かすもんだから、自然とお尻をふりふりしちゃうようになってて、かわいそうなんだけれど、すっごく可愛かったりする。

 お尻全体が真っ赤っ赤になったかな、というところで私はいったん手を止めて、翔くんのお尻を包み込むようになでた。ついでに、背中に縫い付けるように押さえてた翔くんの手も解放してあげる。
 お尻ぶたれてる最中はずっと嗚咽をもらしながらずっと「ごめんなさい」って言ってたのに、お尻をなでられた途端に「ごめんなさい」がパッタリと止んだ。えぐ、ぐすっ、と嗚咽をもらしながら、両腕で一段と強く私の膝にギュっとしがみついた。

「翔くん、うーんと反省した?」
「反省…えぐっ…したぁ…。うえぇぇん…」
「もうお約束、破らない?」
「破らないぃ…ちゃんと守るぅ…ひっく…」
「うん。よい子」

 くちゃくしゃと、さっきまで背中を押さえてた手で翔くんの頭をなでてあげる。もう片方の手は、もちろん真っ赤なお尻をなでている。

「絶対に約束厳守! じゃなくてもいいけれど。夜更かししちゃダメーってお約束は、そーいう風にお目目に悪いからなんだよ?
 そんな風にお目目真っ赤っ赤にしちゃ、お目目はもちろん、体にも悪いのは翔くんちゃんと分かるよね?
 それに、私だって柚木姉さまだって、心配しちゃうんだよ?」
「ふえぇぇ…えぐ、ぐすっ…ごめ…えっく…なさいぃ…」

 うん。よーく反省できたみたいね。

「それじゃあ、最後に仕上げ。あと3回ぺちんするから、ちゃーんと数数えるんだよ?」
「はい…えぐっ…ぐすっ…」

 ぎゅ、と翔くんは体をうんと縮こませた。
 いつもなら、仕上げでうーーーーんとイタイイタイお尻ぺっちんするんだけれど…今日はいつもよりもうーんと厳しくしたから、そんなに強く叩くわけじゃないんだけど。
 でもお尻ヒリヒリだし、このぐらい頑張る体勢になってた方が、いいかな。

「頑張ろうね、翔くん」

 翔くんのお手手をつかんで、翔くんを安心させてあげる。もうこの状態になった翔くんは、背中を押さえることは必要ない。

「はい。ひとーつ。ぺちんっ!」

 ぺちっ。

「んっく…ひとつ…! ごめ、なさい…」

 軽くぺちって音がするぐらいのぺちんなのに、やっぱり翔くん、お尻がすでにヒリヒリしちゃって痛いみたいね。


「ちゃんとごめんなさいも言えて、良い子良い子。
 はい、ふたーつ。ぺっちん!」

 ぺちっ。

「ひんっ…! ふた、つぅ…ふえぇぇ…ごえんなさいぃ…」

 うんうん。いい子いい子。

「それじゃ最後。最後はも少し強くぺちんするからね?
 ラスト。みーっつ、ぺっちん!」

 ぺちんっ!

「〜〜〜っ…! み、みっつぅ! ごめんなさ…ふえぇぇぇ…!」

 最後のぺちんが終わって、翔くんは力尽きたみたいにへたりとお膝に倒れこんだ。

「はい。よしよし、途中はけっこ暴れちゃってたけれど、最後はよーくガマンしてお仕置き受けられたねー。偉いねー♪」

 わあわあ泣きじゃくってる翔くんの頭を、ぽむぽむとなでなでしてあげる。ホントにお目目よりも真っ赤っ赤になっちゃったヒリヒリのお尻も、労わるように包む込むようになでさすってあげる。
 ちょっぴり(どころじゃないぐらい)厳しくしちゃって、ごめんね。
 でも、翔くんのことが嫌いなんじゃなくて、大好きなんだからお尻ペンペンするんだからね。
 大好きだよ、翔くん。
 いい子、いい子。





 しばらく頭とお尻をなでて慰めて。
 ちょっぴり嗚咽が収まったところで、翔くんをお膝からおろして「ちょっとそこで待っててね」って言って、流しに向かった。
 泣きじゃくってワンワン喚いたと思うから、きっと喉が渇いてると思うのでコップ一杯の冷えたお水と、冷たいお水でぬらしたタオルを持って翔くんところに向かった。
 翔くんのところに行くと、ナナちゃんが翔くんのお尻をてしってして「いたいっ!」って翔くんを驚かせてた。こらこらナナちゃん、やめなさいな。
 翔くんのところで私はもう一度正座して、ひょいと翔くんをまたお膝にのせた。

「翔くん、お水、飲む?」
「うん、飲む…ぐすっ…」

 まだちょっぴり嗚咽をもらしながら、翔くんはお水を受け取ってコクコクと飲み始めた。やっぱりあれだけ泣いて喚いたもんだから、お水が欲しかったみたいで、すぐにコップの水を飲みほしちゃった。

「お尻、濡れタオル乗っけるからね」

 コクと翔くんが深く頷いてくれた。まっかっかなお尻に、冷たい濡れタオルを乗せる。
 乗せた瞬間、翔くんがびっくりして「ひゃん!」て声をあげて体をビクッと震わせた。そのあとは、冷たさが気持ちよくなったのか、また私の膝の上でふにゃんと倒れこんでしまった。

「ぐすっ…。…ぅ…ん…」

 嗚咽を漏らすけれど、すごく気持ちよさそう。翔くんの体の力が抜けてくのがお膝に伝わる感じからすごくよく分かる。
 懐かしいなぁ。私も、柚木姉さまにこーしてもらったっけ。
 小説執筆に力を入れすぎて、学校の方をおろそかにしちゃって中間テストで赤点取りかけた時は、柚木姉さまにお尻真っ赤にされて、こんな風に濡れタオルで冷やしてもらったなぁ。





「翔くん、大丈夫?」
「うん。その…まだお尻ヒリヒリするけど…」
「そっか」

 しっかり泣きやんだ様子で、翔くんは恥ずかしがりながら答えてくれた。
 翔くんのお尻にのっけたタオルを取ると、やっぱりまだ真っ赤でヒリヒリしてそうなお尻のままだった。


「それじゃ翔くん、おまちかねの抱っこたーいむ♪」
「わわっ!」

 翔くんの両脇に手を差し込んで、ひょいと持ち上げて、とすんとお尻が膝にも床にも当たらないように、私の膝に座らせた。

「な、七瀬さん! お、おろしてっ!」
「どーして? 昔、柚木姉さまにお仕置きの後こーしてもらってたら、喜んでたじゃないの?」
「い、今は違うの!」
「ごたごた言わないの。観念なさい♪ はい、ぎゅーっ」
「う…あぅ…」

 ぎゅーって抱きしめてあげると、翔くんは観念したようで抵抗しなくなった。ギューって抱きしめて、お尻をやさしくなでてあげると、翔くんは気持ちよさそうな声を小さくもらした。


 ―――――にーっ。

 ナナちゃんも「まぜろー」って言ってるみたいで、私のお膝をてしてし可愛い手で叩いてきた。
 はいはい。みーんな抱っこだよー♪