継母(ままはは)との絆A(スイーツパワー)


セレンが大吾の父親と結婚してから、2ヶ月以上が過ぎた。
大吾の父親は、結婚後まもなく海外転勤となったため、現在の本村家はセレンと大吾の2人暮らしである。しかしながら、相変わらずセレンと大吾は仲が良く、大吾の父親が見たら間違いなく悲しむくらいの明るい家庭を作り出していた。外国人ながらセレンは、近所の人々との付き合いを難なくこなし、同じ小学校の大吾の友達が遊びに来た時も明るく対応し、それでいて長身でスタイル抜群の美人であることから、その友達が大吾をうらやましがるほどであった。そんな感じで、セレンは主婦業をこなしながら、愛情を持って大吾を育てるのであった。優しくそして時には・・・。
そんなある日のこと。
コンコン
「はーい。」
ガチャ
セレンの部屋をノックし、中から返事が聞こえてから大吾はドアを開けた。そして、ドアを閉めて部屋の中央まで入り、セレンの方を見ながらその場に立ち止まる。
「どうしたの?こんな夜遅くにママの部屋に来るなんて珍しいじゃない。」
「う・・・うん。」
「ママに何か用かしら?」
長い金髪を後ろに束ね、胸元の大きく開いた薄いオレンジ色のパジャマ姿のセレン。これから寝ようとしてたのかベッドの縁に腰掛けた体勢で、にっこりしながら大吾に話し掛ける。
「え、えっと・・・あ、あのね・・・。」
モジモジしながら、バツが悪そうに何かを言おうとする大吾。そんな大吾を不思議そうに見つめるセレン。
話は、数時間前にさかのぼる。



学校から帰ってきた大吾は、自分の部屋にランドセルを置いてから、おやつを食べにリビングへと入った。しかし、買い物にでも行ったのかそこにはセレンの姿はない。いつもならばセレンがいて、おやつを用意してくれる。また、いない場合でも書置きをしておやつのある場所を教えてくれるのだが、なぜか今日はその書置きすらない。
(ママは何か急いでいたのかなぁ)
と思いながら、仕方なく何かないかと台所周辺を探索する大吾。すると、
「あっ。これは・・・。」
戸棚の奥にケーキ屋さんの小さな箱を発見した大吾はすぐさまそれを取り出した。
「やっぱり・・・これ、昨日食べたケーキだ!まだ残ってたんだ・・・。」
箱をあけるとイチゴタルトのショートケーキが1つ入っていた。ちなみにこのケーキは昨日、セレンがとなり町のケーキ屋さんで買ってきたものであり、その日は二人で1つずつ食べた。どうやら、セレンは同じケーキを3つ買っていたらしい。
「食ーべよっと!」
このケーキが今日のおやつだと判断した大吾は、冷蔵庫からジュースを取り出し、ケーキと一緒にペロリと食べたのだった。
そしてしばらくすると、外からセレンが帰ってきて、リビングでテレビを見ながらくつろいでいる大吾に、
「ただいまー。」
と言ってから、外国人ならではといえる「ただいまのチュー」を大吾の頬にすると、
「すぐにごはんを作るからね。」
と言って、買い物袋を持ちながらいそいそと台所へ向かった。
そして夕食後、大吾は先ほどと同じくリビングでテレビを楽しんでいると、しばらくして、台所で後片付けを終えて戻ってきたセレンが大吾に真顔でこう話し掛ける。
「ねえ、大吾・・・戸棚にあったケーキ知らない?」
「え?」
珍しく硬い表情のセレンを見て一瞬ドキッとする大吾であったが、すぐさまこう答える。
「うん。さっき僕が食べたよ。今日のおやつだと思って・・・。」
そんな大吾の言葉を聞くと、セレンはその場で数秒間無言の後、表情を和らげて、
「・・・そっか。ならいいの・・・夕食の後にデザートとして二人で半分こして食べようと思っただけだから・・・。」
そう言って再び台所へ戻るセレン。すると、その途中で「ふぅ」とため息をしたのを大吾は見逃さなかった。
それから風呂からあがり、いつものグリーンのパジャマを着て自分の部屋に入った大吾は、さっきの事をふりかえる。
(ママは僕があのケーキを食べたから・・・あんなため息をつくぐらいがっかりしたのかなぁ。確かにママは甘いものが大好きだけど・・・そんなにあのケーキがもう一度食べたかったのかなぁ)
そう思いながら大吾は、すぐさま自分のパソコンでそのケーキの箱に書いてあった店名でネット検索して、詳細を調べようとした。すると、
「うへー!」
大吾は仰天する。その店のケーキリストの中に「月1回50個限定販売スイーツ(お一人様3個まで)、超イチゴタルト、500円」と昨日今日と大吾が食べたケーキが紹介されていた。
「たっかーい!しかも、限定販売って・・・あっそうか!だからママは・・・。」
大吾は子供なりにセレンの気持ちを察した。
「ママ・・・すごく楽しみにしてたんだろうなぁ。」
しばらくの間、パソコンの前で固まっていた大吾であったが、スクッと立ち上がり、何かを決めたような表情をして、足早に自分の部屋を出ると、一目散にセレンの部屋の方へ向かったのであった。



そして今、大吾はセレンの部屋の中にいる。そう、この言葉を言うために・・・。
「ママ・・・ごめんね。ケーキ食べちゃって・・・。」
「え?」
「・・・僕、あのケーキがあんなに高くて、いつでも買えるものじゃないって知らなかったから・・・。」
「・・・・!」
思いもよらない大吾の言葉に驚き、あぜんとするセレン。
(この子ったら、さっきの事を気にしてわざわざ調べたのね・・・)
「ママ・・・楽しみにしてたんだよね?」
さらに、大吾が一言付け加えると、セレンはしばし黙っていた。そして、その表情に次第に笑顔が戻ってきて、
「もうー!大吾はまだ子供なんだからそんなこと全然気にしなくていいのに!それに、今日はバタバタしておやつを用意しなかったママが一番悪いんだから。ウフフフフ。」
「・・・ヘへヘヘ。」
セレンの笑い声に思わずつられて笑う大吾。そんな大吾を見て、
「・・・おいで。」
セレンはベッドの縁に腰掛けた体勢のまま、両腕を広げて大吾を呼ぶ。すると、大吾もセレンに近づいていき、その両腕に包まれるように胸の中に抱きしめられる。
「んもぅ・・・本当に可愛い子。」
セレンはそう言いながら、大吾を強く抱きしめる。大吾はベッドに腰掛けたセレンの体をまるで木にしがみつくような感じで抱きつき、セレンの温かくて大きな胸が自分の体に当たり、さらに心地よい気分になる。
「ママ・・・。」
大吾はセレンに優しく抱きしめられ、しばらくその温もりを愛しく感じるのであった。すると、そんな状況の中でセレンはこんな質問を大吾に投げ掛ける。
「ねえ、大吾。」
「何?」
「これはママの思い違いかもしれないけどね・・・ひょっとしてお仕置きを覚悟してた?」
「・・・・!」
セレンの質問に大吾は思わずハッとする。
「どうなの?正直に答えて。」
セレンは再度優しく問いかける。すると、
「・・・うん。」
大吾は大きくうなずく。
「そっか・・・。」
大吾の返事を聞き、セレンは大吾の頭を優しく撫でる。そしてそのまま少し時間が過ぎた後、セレンは再び話し始める。
「ウフフフ。今回の件は、全面的にママが悪いんだから大吾がママにお仕置きされることはないわよ・・・。」
そんな言葉を聞き、半ばホッとしたかのような顔をする大吾。しかし、セレンの言葉にはまだ続きがあった。
「・・・本当だったらね。」
「へ?」
「つまりね、勝手にケーキを食べたのは事実だから、ママがおやつを用意してなかった点を差し引いても・・・少しだけお仕置きしなきゃいけないかなって思うの。」
「・・・・!」
衝撃の言葉に驚きをかくせない大吾。わずかであるが体が震えはじめている。
「でもそんなに厳しくするつもりはないから、これから10回だけ大吾にお尻ペンペンするから・・・そのことだけちゃんと反省してほしいの。ねっ、ママの気持ちわかってくれるよね?」
「・・・うん。」
大吾は戸惑いながらもまた大きくうなずく。そして、
「よいしょっと!」
「・・・・!!」
セレンはすっかりこの国に馴染んだと思わせるような掛け声を放つと、自分の膝の上に座っている大吾の体を、その膝から大吾のお尻を浮かせるように軽く抱き上げる。そんないきなりの行動に大吾はびっくりする。
「今日は、このままお尻ペンペンするからね。」
「・・・・??」
いつものお仕置きの場合、そのまま膝の上にうつ伏せにされてから裸のお尻を叩かれるのであるが、今回は違うとばかりのセレンの言葉に首をかしげる大吾。しかし、数秒後に自分がどうされるのかをはっきりと理解することとなる。
ズルリッ
「いっ!」
そして、大吾を抱き上げた体勢のまま、素早く大吾のズボンと白ブリーフを右手で下ろすセレン。裸のお尻がしっかりと見えたところで下ろすのをやめ、左手のみで大吾の体を抱き上げる。
「さっ、ママがいない間にこっそりお菓子を食べちゃう食いしん坊ちゃんには、赤ちゃんみたいに抱っこされてのお尻ペンペンでちゅよー。しっかり反省しなちゃーい。」
まるで赤ちゃんまたは幼児に対して叱っているような口調で言いながら、セレンは覗き込むようにして大吾のお尻の位置を確認し、サッと右手を振り上げる。しかしながら、お仕置きの理由が理由だけに、いつものお仕置き時のような厳しさがあまり感じられない。とはいえ、大吾にとってはお仕置きには変わりなく、これから与えられるお仕置きに備えてしっかりとセレンに抱きついている。
バシーン!
「ひぃっ!」
大吾のお尻に力を込めた平手打ちが当たると、大吾は声をあげると同時にセレンの着ているパジャマをぎゅっと握りしめる。
バチン!バシン!ビシッ!
「うひぃー!痛ーい!」
続けざまにお尻を叩かれてさらに大声で叫ぶ大吾。今日のセレンの平手打ちの威力は、叩く体勢が異なって力が思うほど入らないのかいつもの8割程度である。だが、同世代の母親と比較しても明らかに力のあるセレンのお尻ペンペンは子供のお仕置きには十分すぎるほどであった。
バシッ!バチン!ビシィ!バシン!バチーン!
怖さは感じないが平然とした表情でお仕置きするセレン。大吾はヒーヒー言いながらセレンに必死にしがみついてお仕置きに耐えている。そして、最後の10回目・・・
バシィーン!
「びぎぃーっ!」
渾身の一撃が大吾のお尻に炸裂し、大吾は声にならない声をあげる。叩かれた回数は少なかったが、大吾のお尻は誰が見てもお仕置きされたことがわかるくらいに赤く染まっていた。結局、大吾は大泣きはしなかったが、グスグスと鼻水をすすりながら、目にはうっすらと涙を浮かばせていた。
そして、お仕置き中は終始無言だったセレンがここでようやく口を開く。
「はい、大吾ちゃん。これでお尻ペンペンはおしまいでちゅよー。よく我慢できまちたねー。よしよし。」
再び赤ちゃん言葉で話し掛けながら自分の頭をなでるセレンに対し、普段の大吾であれば、こんな風に赤ちゃん(幼児)扱いされた場合、小学生としてのプライドを持って反論しているところであるが、今はお仕置きから解放された安堵感の方が遥かに大きいようであり、
「ママー、ごめんなさーい。」
大吾はこう返事をして甘えるようにセレンに抱きつき、セレンの肩付近に顔を擦りつけて涙を拭う。どうやら大吾はこれまでもそうであったように、お仕置きをされた後、いつもは影を潜めている「素直に親(セレン)に甘える」という面が大きく表に出るようだ。
「はいはい。いい子いい子。」
ここでセレンは、大吾を横抱きするような体勢にかえて今度は赤くなったお尻を丁寧になではじめる。そして、横抱きになったために大吾の顔はセレンの肩から胸の近くへと移動していた。
「ママ・・・。」
大吾はここぞとばかりにセレンの大きな胸に顔を埋めて甘え出し、さらに強く抱きついてきた。
「アハハハ、くすぐったいってば。もう、今日はそんなに叩いてないのに・・・本当に甘えん坊なんだから。」
そう言いながらも、嬉しそうな顔をして大吾を胸に抱いているセレン。そして大吾の方はというと自分の頬に伝わるセレンの胸の温もり、そして柔らかさに癒されたのか、すっかり表情が緩んでいた。
こうして、そんな状態のまま時間が過ぎていく。すると、もうすぐ日付が替わる時にきて、大吾はお尻をなでられながらセレンの胸の中でうつらうつらと今にも眠りそうになっていた。
「大吾・・・。」
「・・・ん、な、なあに?」
セレンの呼びかけに大吾は、もうすでに寝ぼけたような口調で返事をする。
「一緒に寝る?」
そうセレンが笑みを浮かべながら大吾に言うと、
「・・・うん。むにゃむにゃ・・・。」
眠気がもう限界に達したらしく、大吾はこう答えた後、安心したような表情をしてスヤスヤと眠り始めた。
「フフフ。しょうがないわねぇ。」
眠っている大吾にセレンはそう言葉を掛けると、大吾のブリーフとパジャマズボンをそっと上げてやり、そのままベッドに寝かせた。そして、自分もその隣に横になり、自分と大吾の体を覆うように優しく毛布を掛ける。
「おやすみ、大吾。明日は学校はお休みだから、一緒にお出かけしようね。」
セレンは可愛い寝顔をした大吾に向かってこう言いながら、大吾の頬に軽くキスをすると、明かりを消し、二人寄り添って仲良く眠るのであった。



そして、その翌日の午後3時。
リビングのテーブルの上に、セレンが大奮発して買った直径20cm以上はあると見られるイチゴがたくさんのった生クリームケーキがどーんと置かれた。今回のケーキは近所のケーキ屋さんで買ったものであり、決して高級店ではないものの一緒に買い物に行った大吾が誕生日とクリスマスが同時にきたと思わせるほど豪華なケーキであった。
早速とばかりにセレンはそのケーキにナイフを入れ、豪快に4分割にする。一切れ当たり昨日大吾が食べたイチゴタルトの約3倍の大きさであった。
「おいしいね、大吾。」
「うん!」
二人は紅茶を片手にケーキを食べると、セレンは昨日おあずけをくらったこともあり、かなり満足そうな顔をしている。そして、セレンはあっという間に一切れ食べ終わると、さらにもう一切れを自分の皿に置き、再び食べ始める。
よほど甘いものが好きなのであろう。そんなセレンを見て大吾は、
「ねえ、ママ。よかったら僕の分も食べていいよ。僕、これでお腹いっぱいだから。」
「え、本当に?いいの?ママ、残さず食べちゃうよ。後で欲しいって言ってもダメよ。」
「うん、いいよ。」
「嬉しいっ!」
そんな会話をしてるうちに、セレンは二切れ目も食べ終え、その手はすでに最後の一切れに触れていた。実際のところ大吾はまだまだ食べられたのであるが、息子ながらに母親の喜ぶ顔をずっと見ていたいと思ったがゆえの行動であった。しかし、この行動が後に大吾の身に大きな災難がふりかかることになろうとは・・・。
「あー食べた。食べた。大満足ー!」
「ごちそうさまー。」
「高級スイーツもいいけど、やっぱりこういうオーソドックスのスイーツが一番ね。ママ、調子に乗って食べ過ぎたかな?太っちゃったらどうしよう・・・あ、でもこれから運動するからちょうどいいかも。」
そう言いながらセレンは自分のお腹をさする。
「アハハハハ。」
セレンの明るい表情を見て思わず笑い出す大吾。しかし、
(これから運動?夕食の支度の事?いや、それは運動じゃないよなぁ。それとも、夕食前にジョギングでもするのかな?いや、それはない。外は午後から雨降ってるし・・・。)
大吾は、セレンの言葉に何かが引っ掛かり、こんなことを考えていると、
ガバッ
「うわっ!」
いきなり目の前にセレンが現れるやいなや、大吾は驚きの声を放つと同時にセレンに抱き上げられる。何がなんだか訳がわからない大吾に対し、セレンはこんな質問をする。
「大吾・・・今日までいい子だった?」
「は?」
思いもかけないセレンの言葉に対し、大吾はぼう然とする。
「意味がわからない?じゃあ、質問を変えるね。この1ヶ月の間、大吾はいい子だった?」
「へ?」
質問を変えられてもますます意味がわからず、さらに途方にくれる大吾であったが、次のセレンの言葉により、はっきりと理解することとなる。
「もう一度質問を変えるね。一ヶ月前、ママのお膝の上でわんわん泣いていた子は、今日までいい子でいられたかな?」
「・・・・!!」
この質問で大吾はハッとする。
一ヶ月前、つまり大吾の父親がセレンと再婚後、ひと悶着あってから一ヶ月がたったあの日、大吾は母親のセレンと交わしたお約束3ヶ条を何気ない気持ちで破ってしまったため、セレンから涙と怒りのお尻百叩きを受けた日である。そして、そのお仕置き後に大吾はセレンから手厚すぎるくらいのお尻のケアを受けながら、
「大吾・・・わかってると思うけどママは大吾が憎くてお仕置きしてるんじゃないからね・・・可愛くて食べちゃいたいくらい大好きで、いい子になってほしいからお仕置きするんだからね・・・だから、ママはそのために毎日大吾を見てるから、もし、大吾がママとのお約束を破ったり、ママを悲しませたりしたら・・・今日みたいにお仕置きする日を決めて、厳しくお尻ペンペンするからね。」
「え?じゃあ・・・毎月1回とか?」
「そうね・・・そう思ってもらってもいいわ。でも、大吾がとびきり悪い子になったときには、そんなの関係なしで即座にお仕置きするし、逆にずっといい子でいれば、お仕置きはずーっとしないけどね。」
「それだったら僕、ママにお仕置きされないようにいい子になるもん!」
「本当に?ママは厳しいわよ。」
「大丈夫だもん!」
「もう、大吾ったら。こんな真っ赤なお尻でそんな事いっても説得力ないわよ。ウフフフ。」
「ふんだ、馬鹿にして!ママなんて知らない!」
「フフフフフ。」
大吾は一ヶ月前にセレンとこんな会話をしたことを鮮明に思い出す。すると、
(待てよ?僕、あれから何か悪いことしたっけ?)
そう思いながら、大吾はこの一ヶ月間を振り返る。
(お約束3ヶ条の1つである学校に行く前のいってきますのチューはあれからは全てやってるしー、ママに嘘をついたり隠し事をした覚えもないしなぁ。それに、門限だってきちんと守って・・・たよなぁ)
結局、自分ではお仕置きの理由が見つけられず、
「僕、いい子だったと思う・・・けど。」
少し自信なさげな態度で言う大吾に対してセレンは急に怖い顔をして、
「こら、何言ってるの!よく思い出しなさい。10日前、ママをあんなに心配させたくせに。」
「い?」
「「い?」じゃないでしょ。あの日、大吾は友達の家に行って遅くまで遊んで・・・ママと決めた門限の夜7時に帰ってこなかったのを忘れたの?」
「へ?」
「1分よ、1分!あんなに遅くなってから帰ってきたことなんてなかったのに・・・あの時、本当に心配したんだから!」
「あ!」
大吾は何か思い出したのか、思わず声を出して口をあんぐりさせる。
(そうだ、確かにあの日は帰ったのは7時ギリギリぐらいだったっけ・・・)
10日前のことをおぼろげながら思い出していく大吾。すると、大吾はついついこんなことを言い出してしまう。
「でも・・・たった1分だし・・・。それに、あの時ママは何も言わなかったし・・・。」
プチッ
大吾はそう言ってから「しまった」と思った瞬間、セレンの何かが切れた。
「たった1分ですって!ママを1分も心配させときながらそんなことを言うなんて・・・それに、ママがあの日何も言わなかったのは、大吾が自分から謝りにくるかなって思ったからなのよ・・・それなのに・・・。」
「・・・・。」
「少しでも反省の色が見れれば、少しはお仕置きを軽くしようと思ったけど・・・絶対に許しません!これからたっぷりとお仕置きしてあげるから覚悟しなさい!」
そう言い放つとセレンは大吾を抱きかかえたままリビングを出る。
「ひぇぇー!ママー、許してー!」
「・・・・。」
大吾はそう叫びながら許しを求めるも、セレンは無言のままスタスタと歩いていく。そう、一ヶ月前には「お仕置き部屋」と化した、そして今日、さらにこれからもそうなるであろうセレンの部屋へ・・・。



バシーン!バチッ!バシン!バチン!バチィーン!
「うわぁぁーん!ママ、許してよぉー!」
「だめ!まだまだ許しません!」
バチン!バシッ!ビシッ!ベチン!バシィーン!
「ひぃぃー!びえぇぇーん!」
今日の朝まで二人でスヤスヤと眠っていたセレンの部屋。今やそんな和やかな面影はすっかりと消え、大吾にとって恐怖のお仕置きが続けられている。もちろん、昨日行われた「抱っこペンペン」とはお仕置きの質も量も明らかに異なり、椅子に座ったライトグリーンの長袖シャツにグレーのスカートそれにチェック柄のエプロンをしたセレンの膝の上に、赤い半袖Tシャツと黒いショートパンツと白ブリーフを膝上あたりまで脱がされてお尻を丸出しにされた大吾がうつ伏せにされ、そのお尻に何度も何度も強烈なセレンの平手打ちが襲う。たくさんのケーキを食べてパワー満タン状態のセレン・・・そのためなのか前回のお仕置きも十分すぎるほど強烈であったが、今回はそれを上回ってるのではないかと思わせるほどのお仕置き風景である。手足をバタバタさせて暴れる大吾をガッチリと押さえつけ、鬼のような形相をしてお尻を叩き続けるセレン。心なしか目が潤んでいるようにも見える。
そして、この時点でお尻ペンペンは50回を過ぎ、大吾のお尻がみるみると真っ赤に染められていく。すると、
「いい、大吾?今度またママに心配かけたりしたら・・・こんなものじゃすまないからね!わかった?」
ここで一旦、セレンは叩く手を止め、火照っているお尻に手を置き、大吾に問い掛ける。
「う、うぇぇぇーん、グスン、グスン・・・。」
大吾は泣きながら、コクコクと大きくうなずいた。そして、セレンはそれを見るやいなや再び手を振り上げ、
バシーン!バチーン!バシッ!バチッ!バッシィィーン!
ビシッ!バシッ!バチーン!バシーン!バッチィィーン!
「ぴぎぃぃぃーん!!」
最後に超強力な10連打が炸裂し、大吾は部屋中いや家中響きわたるくらいの大きな声で泣き叫んだ。結局60回、前回の百叩きよりは回数が少ないものの大吾にとって厳しいお仕置きだったのには変わりなく、大吾はセレンの膝の上でしばらくすすり泣き、まさに「スイーツパワー」の犠牲になったお尻はまるで熟した甘いイチゴを連想させるくらいに真っ赤に腫れあがっている。そしてそのお尻を、お仕置きが終わって厳しさが消えてすっかりと優しい表情に戻ったセレンがゆっくりと丁寧になでていた。
「ママー。お尻痛いよぉー。」
「はいはい、今日はよく頑張ったわね。痛みが早く消えるようにもっともっとお尻なでであげるから、ママの膝の上でいい子にしててね。」
「・・・うん。」
「その後で、たっぷりとお尻を冷やしてあげるからね。」
「・・・うん。」
「それから、夕食は大吾の大好きなビーフシチューを作るから、できるまでいい子にして待ってるのよ。今日は特別にママがふーふーして食べさせてあげる。」
「うん!」
こんな会話がしばらく続き、先ほどの恐怖のお仕置き風景とは一変し、今日食べたスイーツ以上の甘い甘い関係の母子の姿となっていた。昨日は少し痛いけど甘ーいお仕置き、そして今日は厳しいお仕置きのあとのこれから立て続けに与えられるであろう超強力な「アメ」。大吾にとっては苦しみのあとの大きな快楽といえよう。そのためか、
(来月こそはお仕置きされたくないけど・・・無理かもなぁ、ママ厳しいし。でも・・・まっいいか、そうなったらなったで・・・)
大吾はセレンの膝の上でズキズキと痛むお尻を撫でられながら、こんなことをふと思ってしまい無意識に顔がにやけるのであった。



日が沈み、しとしとと外で雨が降り続く肌寒い中、大吾は母親の厳しくも優しいそしてあったかい愛情にいつまでも包まれていた。