新任女教師 お仕置きのススメ(F/m)
実りの9月。
まだまだ残暑が続きながらも、秋の気配が少しずつ感じられる。
子供達も夏休みが終わり、再び学校に行く姿か見受けられるようになった。
そして、ここ井伊古小学校でもすでに新学期が始まり、子供達が教室で賑わっている。ちなみにこの地域はまだ2学期制は導入していないため、9月からが2学期となる。
5年2組。全校児童が200人足らずで1学年2〜3組に分けられている小さな学校の中でも児童数が18名と最も少ないクラスだ。
ワイワイガヤガヤ
もうすでに授業中であるというのに、教室の中は互いにおしゃべりをしている声が飛び交い勉強をするという雰囲気でない。
「おーい。もう授業は始まってるよー。」
そんな中、こんな蚊の鳴くような声で注意を促している一人の女性がいた。
真田千代美(さなだ ちよみ)、23歳。今年からこの小学校に新任として配属となった先生である。
眼鏡をかけ、少しパーマをかけた肩に掛かるくらいの長さの黒髪美人、長身で細く華奢な体格、さらに、声のトーンからでも読み取れるように気弱な面が随所でみられ、いかにも大人しげな感じの人といえる。
しかしながら、大学時代は成績優秀、さらにここ数年困難と見られている教員採用試験も一発合格したということが評価され、就任1年目でクラス担任、しかも上級生となる5年生の担任を任されていた。そんな輝かしい実績を持つ千代美であったが、なかなかクラスの児童をまとめることができないままズルズルと半年になろうとしていた。いくら成績が良かったとはいえ、それがそのまま仕事がうまくできることにはつながらない。それは教師だけでなく、全ての職種に言えることではあるが正にその典型的な例といえる。
「もう・・・お願いだから静かにして。」
さらに子供達に注意する千代美。しかし、一向に静まる気配がない。完全になめられている。
ところが、そんなオロオロしている千代美をじっと見ながら、その中でただ一人黙って教室の窓際最後尾に踏ん反り返って座っている一人の児童がいた。そして、その横縞のランニングシャツにベージュのショートパンツ姿の裸足の少年はそんな様子に業を煮やしたのか、
「おらー!てめえら、静かにしやがれ!」
教室中に小学生とは思えないドスのきいた声で一喝すると、たちまち静かになり誰一人一言も発しなくなった。
「先生、これでいいだろ?さっさと授業始めようぜ。」
「え、あ、そうね。いつもありがとうね、堅剛くん。」
そして、千代美は何事もなかったのように、教科書を開いて国語の授業を始めた。
この児童の名は三島堅剛(みしま けんごう)、11歳。小学5年生の男の子。
クラス、いやこの小学校の中ではガキ大将的な存在であり、6年生に対しても平気でケンカを売っては勝利してしまうほどの腕白ぶりである。また、休み時間や放課後には学校内外問わずに様々なイタズラをしてはみんなを困らせてることもしばしばであった。
しかしながら、本当に困ってる人を見かけるとほっとけない性格であり、いろいろ身の回りの世話をすることから、同級生からの人望は厚い。さらに、勉強もそれほど不得意ではなく、授業中に限りまじめに勉強するという普段からはあまり考えられない面ものぞかせている。
そんな一長一短があり、まだ140cmに満たない(138cm、本人は140cmだと主張)小さな少年は、4月から自分の担任となった千代美に毎度のようにやきもきしているのであった。
その日の放課後。
この小学校では放課後に4〜6年生はクラブ活動をすることが義務付けられている。そのため、サッカーやバレーボール、美術や科学など様々なクラブが存在している。そんな中、あの堅剛が所属しているクラブはなんと・・・「音楽部」であった。
日ごろの行いをみると、運動部の方が適してるのではないかと誰もが感じてしまうのであるが、堅剛は楽器を演奏するのが大好きであった。ピアニカやリコーダーを使わせればクラス一いや下手したら学校一ではないかと思わせるほどの腕前であり、そろっとギターを覚えようかとも考えているらしい。
一方、その音楽部の顧問は千代美が努めていた。一応、ピアノが弾けることや自分のクラスだけじゃなく男性担任クラスの音楽授業を全て受け持っていることもあり、自然とそうなってしまったとの事である。
そして、今日の音楽部の活動が終わり、各部員は後片付けを始めている。とはいえ、音楽部の部員はわずか8名。6年生4名、5年生2名、4年生2名の少し寂しい構成であり、堅剛以外は全員女の子である。
「堅剛くん、これも片付けてくれる?少し重たいけど。」
「まかせとけって、部長!ここはもう俺一人でいいからみんな帰っていいぜ。4年生もな。」
「そう?じゃあみんな帰りましょ。それじゃ、堅剛くん。」
「堅剛先輩、さようなら。」
「おう、また明日な。」
「千代美先生、さようなら。」
「はい、さようなら。みんな気をつけて帰ってね。」
「はーい!」
こうして堅剛以外の音楽部員は、支度を整えて音楽室を後にした。
その音楽室の中には、もうすぐ片付けが終わる堅剛と顧問である千代美の二人が残っていた。
薄ピンク色の長袖Yシャツに黒のスカート、さらにその細い足にはストッキングをはいているその女教師は教壇で椅子に座りながら何やら書き物をしている。
「よっしゃ、これでラスト!」
楽器や用具を全て片付け終わった堅剛は額の汗をぬぐう。そして、教壇の方にいる千代美に向かって、
「先生、終わったぜ。」
堅剛の声に千代美はハッとした顔をして、
「あっ、堅剛くん。ご苦労様、外は暗くなるのが早くなってきてるから気をつけて帰るのよ。」
「へーい。」
そう大きな返事をすると、堅剛は音楽室を出ようとする。すると、
「・・・・。」
堅剛は急にその場に立ち止まり、しばらく黙りこむ。そして、何を思いついたのか一目散に千代美の方に向かった。
「なあ、先生。」
「・・・・!」
急に呼ばれ、千代美は少しビクッとする。
「なんだ、堅剛くんか。まだ何か用?」
「あのさぁ、先生・・・もうちょっとビシッとした方がいいぜ。」
「え?それは一体どういうことか・・・な?」
「言わなくてもわかるだろ。毎日のように授業中の教室がカラオケBOXみたいになってりゃあな。」
「・・・・。」
「俺が毎回奴らに言わなけりゃ、ずっとあのままだぞ。そうなれば隣のクラスだって黙っちゃいねえと思うしよ。」
「うん。それはわかってる。堅剛くんには本当に感謝してる。でもね、子供を叱るってなかなかできないものなのよね・・・。」
「そんなこと言ってられないだろ!もう半年近く先生やってんだし、このままじゃダメなのは先生もわかってんだろ?」
「・・・うん。私もこのままじゃいけないとは思ってるし、頑張ってるつもりなんだけど・・・ごめんね、こんな先生で。」
「情けねえなぁ・・・こっちも悲しくなるじゃんか。」
「ごめんね・・・。」
ここで二人の会話が一旦途切れる。堅剛はバツが悪そうに頭をポリポリ掻き、千代美は椅子に座ったまま少しうつむいている。
そして、今度は千代美から口を開く。
「私ね、子供のころから大人しくてね・・・自分で活発に行動をすることなんて全くなかった。だから親に言われるがまま勉強だけをしてクラブにもあまり参加せず、周りからは根暗と呼ばれてたわ。でもそれじゃいけないと思って大学に入ったら自分から進んでサークルに所属していろんな人と触れ合ってきたわ。今の自分を打破しようと思ってね。でも・・・表面では取り繕ってもうまくはいかないもんね。結局、何も変わらないまま親と同じ教師の道ってことになっちゃった。でもね、この道を決めたのは親じゃなくて自分の意志よ。子供は本当に大好きだし、それだけは自信を持って言える。けど・・・現実は厳しいものね。」
「・・・・。」
まるで同世代の人間に言ってるかのように洗いざらい自分の悩みをぶつける千代美。その悩みをぶつけられる対象となった11歳の少年はただただぼう然とするしかなかった。
(根暗って何?サークルって何?先生は何言ってんだ・・・まあでも今まで苦労してきたことだけはわかった気が・・・する)
しかしながら、所々の言葉の意味は理解できなかったものの、堅剛は自分なりに千代美の悩みを汲み取っていた。
「私、やっぱり教師に向いてないのかな・・・。」
千代美はこう言いながら、さらにうつむき黒髪が顔をほとんど覆いつくしてしまう。そんな千代美に堅剛は、
「えーい、うじうじしてんじゃねえよ!」
「・・・・!」
堅剛の大声に千代美は思わず顔をあげる。
「ガキなんてのはな、思いっきりガツンとやればビクビクして大人しくなるんだよ!先生もそうすりゃいいんだ。」
「そうするって、具体的にどうするの?」
「本気で怒鳴りつけるんだよ!ぶん殴るくらいの勢いでな。そうすりゃたいていのガキは静かになって先生を見る目も変わるぜ。」
「ぶん殴るなんて穏やかじゃないわね。もしそんなことしたら先生、PTAで問題になってクビになるかも・・・最近は体罰にうるさいから。」
「別に本当に殴れとは言ってねーよ。それぐらいの意気込みで叱りつけろってことだよ!」
「うーん。でもねぇ、それができれば苦労はしないんだけど・・・。」
堅剛からの提案に千代美は理解を示すが、やっぱり自分にはという感じで自信が持てない様子である。すると堅剛は、
「俺なんてなあ、母ちゃんにはそんな感じで毎度毎度怒られてんだぜ!ほんのちょっとイタズラしたぐらいで鼓膜が破れるくらいの大声で怒鳴り散らすしよぉ。それに・・・。」
「それに?」
話が急に堅剛の家庭の話となり、千代美はさらに堅剛の言葉に真剣に耳を傾ける。
「ケツを叩きやがるんだぜ。それも馬鹿力でこれでもかってぐらいバシバシとな。」
「ケツを叩かれるって、もしかして「お尻ペンペン」のこと?」
「ペンペンなんて生易しいもんじゃねえや!ケツが猿みたいっていうか猿がさらにケツ叩かれたぐらい真っ赤っ赤にしやがる。何日もまともに椅子に座れねえくらいにな。学校と違って我が家では体罰なんかしょっちゅうだぜ。」
「あ、そういえば先生もこれまで何回か授業中の堅剛くんの様子が変だなって思ったことがあったけど、そのせいか。」
「ああ、先生にも周りにも絶対本当のことは言いたくねえから、その度転んで痛めたとか言ってごまかしてたけどな。」
「ふーん。堅剛くんの家は厳しいのね。まあ、自業自得って面もあるけど。」
「まあ、厳しいのは母ちゃんだけだけどな、父ちゃんは大人しいし。でもこれだけやんなきゃガキなんてなかなか言うこと聞かねえもんだぜ。俺が言うのもなんだけどな。」
「でも、そんな目にあっても堅剛くんは懲りずにイタズラを続けてるわよね。」
「くっ、揚げ足とるんじゃねえよ!俺は他のガキとは違って別格なの。だからよぉ、先生もそんな気持ちでぶつかっていけばいいんだよ、そうすりゃ何とかなるって。」
「そっか、要するに言うことを聞かなきゃお尻ペンペンするぞっていう勢いで思いっきり叱れってことね。」
「ケツ叩くことに限定することはねえけどな。でも。やっぱ気合入れて叱ればガキ共はちゃんと言うこと聞くぜ。」
堅剛の自分の体験を通じての話に千代美は感謝し、そして心の中で子供達をしっかりと指導するんだという決意が少しずつ芽生え始めていた。
「そうね、私ようやくやれるって気がしてきたわ・・・あ、でも。」
「今度は何だよ、先生。」
「そういえば私、お尻ペンペンなんて誰にもした事ないわ・・・。」
「へ?」
千代美の言葉に堅剛はあ然とする。
「そ、そんなのはどうでもいいじゃんか。本当にやるわけじゃねえんだし、逆にやったら問題になるだろ?」
堅剛は薄ら笑みを浮かべながらこう言うと、千代美はまじめな表情のままこう言い返す。
「うん。だけど、実際それをしたことない人間がそういう思いをもって叱りなさいって、なかなかできないと思うの。だからもしそれを経験できれば、より子供達が私の言葉を素直に聞いてくれると思うんだけど・・・あ、ごめん、やっぱりちょっと無理な話よね。」
「・・・・。」
千代美のもっともな意見を堅剛は黙って聞き入る。確かにそのとおりだと心の中でうなづき、しばらくの間じっと考える。そんな堅剛の様子を椅子に座ったままじっと見つめている千代美。すると突然、堅剛は何か決心したような顔をして、
「よっしゃ、いっちょやってみるか!」
そう叫ぶと堅剛は全速力で音楽室の出入口の方へ走っていく。
ガチャリ
どうやら鍵を掛けにいったようであり、そんな堅剛の行動に首を傾げる千代美。そしてまた全速力で戻ってくるやいなや、堅剛はいきなりその椅子に座っている千代美の膝の上にうつぶせになるように体を預けてきた。
「・・・!!」
その瞬間、堅剛の体は床から離れ、千代美の膝の上に完全に乗っかる体勢となる。堅剛の頭は千代美から見て左側、足は右側となる。千代美は膝の上から落ちないよう無意識に左手で堅剛の背中を押さえているが、思いもしない堅剛の行動に驚きを隠せないでいた。
「え、何?何をするの、堅剛くん!」
「決まってんだろ、これから先生が俺のケツを叩くんだよ!」
「えっ!」
ズルリ
千代美が驚きの声をあげると同時に堅剛はその体勢のまま自分でショートパンツとグレーのブリーフを自分のお尻が出るくらいまで脱がすと、千代美の膝の上には小さくて吹出物ひとつないお尻がひょっこりとあらわれた。そして、堅剛は覚悟を決めてそのまま腕組みをする。
「さあ、ひと思いにやってくれ!」
「堅剛くん、ひと思いにやれって言ったって・・・先生にはできないわ。」
当然のごとく千代美は困惑し、おどおどしている。すると、そんな千代美に対して堅剛は一喝する。
「できないじゃねえよ!今、経験したいって言ったのは先生の方じゃねえか!」
「でも・・・。」
「だから俺がこうしてやってるんじゃねえかよ。それなのに先生は俺の厚意を無駄にすんのか?親以外の人前でケツを丸出しにしてめっちゃ恥ずかしい思いをしてる俺のこの厚意によぉ。」
「・・・・。」
「いいからやれよ!俺、先生にいくら叩かれても平気だぜ。母ちゃんのあの悪魔のお仕置きに比べりゃ大したことねえだろうし。それに、もし俺が我慢できなくなったらやめろって言うしさ。まあでも手が痛くなって先に先生の方がギブすると思うけどな。」
「・・・・。」
堅剛の言葉をじっと黙って聞く千代美。口は悪いが自分を心から思ってくれているということが十分に伝わり、千代美は感謝の心でいっぱいになった。そして、そんな堅剛の思いに応えるべく、ついに千代美は意を決した。
「・・・わかったわ。」
千代美の返事を聞くと、堅剛は組んでた腕をさらに強く組み、歯を食いしばる。あれだけ強がってはいても母親以外からお尻を叩かれるのは初めてであり、堅剛の方も緊張が隠せないでいた。
「じゃあ・・・叩くね。」
「・・・おう。」
そう言って、千代美はおそるおそると右手を振り上げる。そして自分の頭ぐらいの高さまで振り上げたところで一瞬手を止め、再度堅剛のお尻を確認する。
互いにつばをゴクリと飲み込む。そして次の瞬間、
パシーン!
「・・・っ!」
最初の一打が堅剛のお尻に当たる。千代美と堅剛だけしかいない3階の音楽室の中、乾いた音が室内に響く。出入口の鍵を掛けているため誰も入ることも覗くこともできない二人のお尻ペンペンの時間が始まった。
パン!パシーン!パシン!パーン!パチーン!
「・・・っ、・・・うっ、・・・くっ!」
腕組みしながら声を殺して黙って耐える堅剛。お尻もうっすらとピンクに染まってきている。しかしながら、堅剛の表情は歯を食いしばっているもののまだまだ余裕が感じられる。一方、千代美は細くしなやかな手をゆっくりと振り上げながら堅剛のお尻を叩き続ける。目は真剣そのものであるが、力は思ったよりも入れてないようであり、多少遠慮が見られる。
パーン!パチーン!パン!パン!パシーン!
「・・・いっ、・・・くっ、・・・つっ!」
ここでお尻ペンペンは10回をこえたが、堅剛の表情にはあまり変化がない。千代美もまた黙々とお尻を叩いている。緊張感は見られるが、いまいち迫力に欠けるお尻ペンペンの風景。ここで、これまでほぼ黙って耐えてきた堅剛が口を開く。
「先生、ちょっと待った。」
堅剛の言葉を聞き、千代美は手をピタリと止める。
「あっ、これでお終いかな?」
「ううん、違う。先生、もっと本気で叩いていいぜ。先生はたしかにひ弱そうだけど明らかに力入れてねえってわかったからな。」
「えー、でもこれはあくまでも経験を積むってことであって、本気で叩くなんて・・・ねぇ。」
そう千代美が言うと、堅剛はこう言い返す。
「それじゃダメだぜ先生。そんなんじゃまたあいつらになめられるぞ!」
「・・・!」
「そうならねえために今こうやってんだろ?それなのに全力でやらないでどうすんだよ!さっき言ったろ、俺はいくら先生にケツ叩かれても平気だって、自分のクラスのガキ大将を信じてくれよ。」
「・・・堅剛くん。」
そして、堅剛は再び腕を組み歯を食いしばる。さあ、今度こそ全力でこいと言わんばかりに。そんな堅剛の思いを受け、千代美の表情が一変する。
「よーし!!」
「・・・!」
今度は千代美が大声で叫び、堅剛は思わずびっくりする。そんな堅剛をよそに千代美は自分の着ているYシャツの両袖をまくり、左手で堅剛の背中をさらに強く押さえつけ直し、右肩をぐるぐると回す。まさに気合を入れている様子である。そして右手を堅剛のお尻にそっとのせ、息を一つフーッと吐き出した後、そのまま何も言うこともなく再び右手を振り上げる。
先ほどとは明らかに違う雰囲気を感じつつある堅剛。そしてその雰囲気の違いが確信へと変わる千代美の堅剛へのお尻ペンペンが再開される。
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
「・・・うっ、・・・うっ、・・・ぐっ、・・・ひぎぃー!」
千代美の間髪入れない強烈な連打により、これまで黙って耐えてきた堅剛からついに悲鳴が漏れる。痛い、痛すぎる、これが先生の本当の力?堅剛は自問自答する。だがそんな余裕は次第に薄れていく事となるのであった。
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
「・・・びいっ、・・・ぎいっ、・・・ぴいぃっ!」
あまりの痛さに堅剛は腕組みを解き、手足を少しバタバタとさせる。そんな中、千代美はわき目も振らず冷静になってお尻を叩いている。テンポ良く、叩く強さにも波がない・・・まるで精密機械のようである。
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
「ぎゃぴーーーん!!」
今日一番の大声が堅剛の口から発した。そんな声を出すのも当然であり、堅剛のお尻は一面見事な赤色へと変貌していかにも痛そう、いやものすごく痛い状態であった。しかし、そんな状態であっても千代美の手は止まらない。堅剛の思いに応えるためにも堅剛が納得するまでお尻を力一杯叩かなければいけない・・・そう決めていたからだ。時折ずれた眼鏡をかけ直しながらも、必死になって堅剛をお尻ペンペンしている千代美の姿は誰が見ても圧倒されるものであった。
「せ、先生!ス、ストーップ!!も、もうやめてぇー!!!」
仕切り直し前と合わせて30回手前でついに堅剛が根負けし、大声で千代美に向かって叫ぶ。すると千代美は我に返って叩く手を即座に止めた。
「はっ!私は何を・・・堅剛くん!」
恐らく一瞬記憶がとんだのであろうしばらくぼう然とする千代美。すると膝の上にたった今まで自分にお尻を叩かれ、ようやく解放され少しぐったりとした堅剛の姿を確認し、大声で名前を叫ぶ。そしてあわてて真っ赤に腫れ上がった堅剛のお尻をなで始めた。
「ごめんね!ごめんね、堅剛くん!痛かったでしょう・・・。」
千代美はぺこぺこと頭を下げながら、これでもかというくらいお尻をなで続ける。すると、
「・・・謝るんじゃねえよ、先生。」
「えっ?」
「俺がやれって言ったんだから、先生は全然悪くねえよ。」
「でも・・・。」
「先生のお尻ペンペン・・・けっこう痛かったぜ。これからはこの勢いでいけばいいんじゃねえか?」
「・・・堅剛くん。」
堅剛なりの優しい言葉に千代美は感極まって涙目になる。
「もう一度だけいうね・・・ごめんね。そして・・・ありがとう。」
千代美はそう言いながら、今度はゆっくりと優しく堅剛のお尻を撫でるのであった。
「ふん、いいってことよ!」
千代美の感謝の言葉に堅剛は少し照れながらソッポを向き、カッコつけるかのように再び腕を組む。しかしながら、真っ赤に染まったお尻をさらけ出し、若い女性の膝の上にうつ伏せになっている小さなガキ大将の姿はまさに滑稽なものであった。
「ウフフフフ。」
そしてそんな堅剛を見て、千代美は堅剛にわからないように小さな声で笑った。
それから数日後の9月末日。5年2組の教室では、
「ほら、静かにする!席につきなさい!」
「そこ、何してるの。授業中はおしゃべりはダメよ!」
「こらこら!そんなことすると先生許しませんよ!」
以前とは比較できないほど活発に愛情を持ちながらも厳しく子供達を叱る千代美の姿があった。そして、そんな千代美の迫力に押されてクラスの児童は素直に従っている。そして、そんな様子を堅剛はニヤニヤしながら眺めていた。
(へへへ。やりゃあできるじゃんか・・・)
自分が体(お尻)をはり、一人の先生を立ち直らせた。堅剛は子供ながらもその達成感に浸っていた。
ちなみにあの日に行われた千代美の堅剛へのお尻ペンペンは二人だけの秘密となった。さすがに学校はもちろん堅剛の親に知れれば大事になる可能性があるため、いわば当然の処置といえよう。結局、堅剛のお尻は2、3日で完治したが、予想以上に力強い千代美に対して人は見かけによらぬものと堅剛自身も学ぶことのあった1日であった。
それ以来、相変わらず千代美に対して口が悪く、時には軽いイタズラをして困らせてはいるが、クラス担任とその児童、音楽部顧問とその部員、そしてあの秘密の1日によるつながりもあり、二人はこれまで以上に仲の良い関係となっていった。
ところが・・・千代美と堅剛には新たな展開が待っていたのである。
その日の夕方、音楽室にて。
バシッ!バチン!バシッ!バシッ!バチン!
ビシッ!バチッ!バシン!バチン!バシッ!
「・・・いてっ、・・・いたっ、・・・いってぇー!」
そこには音楽部の活動を終えた堅剛と顧問である千代美がいた。そしてなんとあの秘密の1日の時と同じように椅子に座る千代美の膝の上に堅剛がお尻だけ出された格好でうつ伏せにされ、そのお尻めがけて千代美は力強くお尻を叩いている。
互いの服装も偶然にもあの時と同じ、大きく違うとこといえば堅剛のお尻を叩く千代美の手が右手でなく左手になっていることぐらいか。ちなみに音楽部の他の部員はすでに帰っていて、出入口には鍵がしっかりと掛けられている。ちなみに今回鍵を掛けたのは千代美の方であり、これもまたあの時とは異なっていた。
ビシッ!バチッ!バシン!バチン!バシッ!
バシッ!バチン!バシッ!バシッ!バチン!
「・・・いてぇ、・・・いてぇよ、先生、・・・俺が何したっていうんだよぉ!」
次から次に与えられるお尻の痛みに苦しみながら、千代美に問い掛ける堅剛。それもそのはず、千代美は堅剛と二人きりになってすぐに堅剛を自分のもとへ呼び出し、近くに寄って来た堅剛をいきなり自分の膝の上にうつ伏せにし、ショートパンツとブリーフを同時に膝上までずり下げてお尻をあらわにした。そして、そんなあっという間の行動に驚き、千代美に何かを言いかけようとした堅剛に構わず、千代美の平手打ちが堅剛のお尻に思い切り振り下ろされたのである。
いわば、なぜ千代美は再び堅剛をお尻ペンペンしているのか?その理由を、堅剛は全くわからないでいた。
バシッ!バチン!バシッ!バシッ!バチン!
バシッ!バチン!バシッ!バシッ!バチン!
「・・・先生、やめろよ、・・・やめてくれよぉ、・・・いてぇ、・・・いてぇよぉ!」
堅剛は涙目になり、さらに千代美に問い掛ける。そして、叩かれている間に堅剛が一番に感じたことは、
(この前叩かれた時より、めちゃくちゃ痛ぇ・・・)
あれから数日しかたってないのにこれだけ変わるものなのかと不思議に思いながらも、堅剛は理由不明のお尻ペンペンに千代美の膝の上で多少暴れながらも
何とか泣かずに耐えていた。そして、そんな堅剛を膝の上にガッチリと押さえつけ、平然とした顔で無言のままお尻を叩き続けていた千代美が、お尻ペンペンが30回に達したところで叩く手を止め、ここでようやく口を開く。
「フフフ、驚いた?堅剛くん。」
なんとこの状況の中でこんな言葉をしかも笑顔で言いのける千代美。堅剛は一瞬あ然としたが、すぐさま千代美に怒りをぶつける。
「驚いたじゃねえよ!。どういう事なんだよ、説明しろよ説明!」
そう言いながら、真っ赤に染まったお尻を手でさする堅剛。痛みで顔がゆがみっぱなしである。
「はいはい。今、ちゃーんと説明するからよく聞いてねー。」
「・・・・。」
堅剛はまだ怒りがおさまらないものの、千代美の言葉に素直に従って説明を聞こうと黙って腕組みをした。そんな堅剛の様子を確認すると、千代美は早速説明をはじめる。
「あのね、実はね・・・ばれちゃったのよ。」
「へ?ばれた?誰に?何を?」
「うんとね、この前先生が堅剛くんにお尻ペンペンしたことを・・・堅剛くんのお母さんに。」
「い、い、いーーーっ!!」
堅剛はお尻ペンペンされているとき以上に大きな声をあげる。
「な、な、何でばれたんだよぉ!」
堅剛はさらに説明を求める。
「率直に言うと、原因は堅剛くんよ。」
「え、何で俺が?」
「あの日結局帰りが夜になっちゃって、先生の方から堅剛くんのお母さんに音楽部の活動が長引いたから帰りが遅くなりますって電話したよね。そしてその後、堅剛くんはおうちに帰ったわけだけど、微妙に歩き方がおかしいってお母さんは気付いたらしいの。」
「・・・・!」
「それで気になったお母さんは、堅剛くんがお風呂に入るときにそーっと脱衣所を覗いてみるとあらあらまあまあ、赤いお尻がはっきり見えたんだって。」
「・・・・!!」
「お母さんはそれを見てすぐに誰かにお尻ペンペンされたなって思ったの。でも、当然自分はやっていない、だとすると誰だと考えたらふとさっき家に電話を掛けてきた先生、つまり私が怪しいと思われたの。まあ当然よね。」
「・・・それで?」
「それで、お母さんは学校に電話を掛けてきたわ。もちろん私を名指しでね。それで、どういうことなのか説明を求められてねぇ、先生もう覚悟を決めて全部しゃべっちゃった。同意があったとはいえ堅剛くんに体罰を与えたのは事実だしね。」
「・・・それで、母ちゃんはなんて言ったの?」
「うん。もう訴えられるのは間違いないなって思っていたんだけれど、それがね・・・「えらーい!!」って大声でほめられちゃった。」
「は?」
「「先生のために自分の体(お尻)を差し出した息子もあっぱれだけど、それに応えて容赦しないで息子にお尻ペンペンをしたあなたは素晴らしい」って。」
「・・・・。」
「あと、「最近、厳しく子供を叱る先生が少なくなってきているから、あなたみたいな先生がこれからは必要なのよ」とも言われたわ。」
「・・・・。」
「というわけで、先生は訴えられることはなくなったけど・・・それで堅剛くんのお母さんに一つお願いをされたのよ。」
「お願い?」
「小学校を卒業するまででいいから、母親である私の代わりに息子、つまり堅剛くんにお尻ペンペンのお仕置きをしてやってほしいって。」
「い、い、いーーーっ!!!」
千代美からの思いもよらない言葉に先ほどと同じ、いやそれ以上の大きな声をあげる堅剛。
「「もう私がいくらお尻を叩いてもあの子は全く懲りないし最近マンネリ化してるから、せっかくのこの機会を無駄にしたくないのよ」ってさらに言われてね。最初は先生、かなり戸惑って悩んじゃったけど・・・結局OKしちゃった。」
「げっ!な、何でそんなの引き受けんだよ!」
「だって先生、堅剛くんのおかげでようやく子供達を思いっきり叱ることができたんだもの。だからそれを持続するためにも、実際に子供をお尻ペンペンすることで、自分の中にある厳しさを常に磨いていきたいと思ってね。あと・・・」
「あと?」
「先生、堅剛くんがすっごく大好きだからかな。」
「・・・え!!!」
思いがけない千代美の言葉に、堅剛は照れてしまったのかポッと顔を赤らめる。
「自分が好きになった子は、やっぱり立派な人間になってほしいもんね。だから先生、堅剛くんがいつもいい子でいられるようにちょっとでも協力したいのよ。」
「そ、そんな協力なんかしてほしくねー!」
「フフフ、遠慮しなくていいのよ・・・。それじゃ、早速本題に入るわね。」
「本題?」
「堅剛くんもさっきから聞いてたじゃない、今日のお尻ペンペンの理由をね。」
「あ!」
「それについては昨日、すでに堅剛くんのお母さんからメールを頂いてまーす。「堅剛のお仕置き願い」ってタイトルでね。」
千代美はそう言うと、自分の胸ポケットから携帯電話を取り出した。
「お、お仕置き願いだってー!!」
「とりあえずそのまま読むね。「9月29日、堅剛は自分が家の花瓶を割ったのにも関わらず飼い猫のせいにしました。正直に白状するまで1時間かかり、それまでは見え透いた嘘の繰り返しでした。よって、千代美先生に堅剛のお仕置きをお願いします。お仕置きはもちろんお尻ペンペンで、回数は花瓶を割った罰よりも親に嘘をついた罰を重く考え、普段であれば30回程度であるのですが、今回は千代美先生からの初めてのお仕置きとしてのお尻ペンペンなので、その倍である60回を最低回数として下さい、最初が肝心ですから。また、堅剛のお仕置き中の態度が悪かったり反省の色が見られない場合は先生の判断で数を増やしても構いません。それでは、どんなに泣こうが喚こうが気にしないで厳しくお仕置きしてあげてねー。By三島民代こと堅剛マミー」。」
「な、何が堅剛マミーだっつーの!畜生、どうりであの時すぐにケツを叩かれなかったわけだぜ!」
「とにかく、こんな感じで随時お母さんは先生にメールを送ってくるからね。今後は、学校でのケンカやイタズラなんかは大事に至らない限り先生は大目に見るけど、それ以外については、お母さんが目を光らせてこうやって先生に報告してくるからね。これからは少し心を入替えなさい。」
「ふ、ふん!ケツ叩かれるのが怖くてイタズラができるかってんだ。」
「あっそう。じゃあこれからお尻ペンペンのお仕置きの続きを始めるわね。さて、あと何回残ってたかなぁ・・・確か50回だったっけ?」
「ブブブー、なに勝手に数増やしてんだ?あと30回だっちゅーの!先生のくせにそんな計算もできないのかよ!」
堅剛は自分の立場を忘れ、馬鹿にするように千代美に向かって叫ぶ。すると千代美は鋭い目でにらみつけ、
「あらぁ?先生に向かってそんな口きいていいのかなぁー。うん、やっぱり50回だったわね。」
「あ、あの・・・その・・・。」
「ウフフ。お尻ペンペンなんか堅剛くんにとっては全然怖くないんでしょ?さっきまでのが30回だと数える余裕もあったみたいだし。」
「う、ううう・・・。」
ここで堅剛は情けないうめき声をあげる。「後悔」・・・ここ最近はほとんど考えたこともなかった言葉が堅剛の脳内を縦横無尽に駆け巡っていた。
「さっ、覚悟を決めなさい!言っとくけどさっきまではウォーミングアップでこれからが本番。それに堅剛くんは知らなかったと思うけど、先生の利き腕は左なのよ。だがら今日は思いっきりお尻ペンペンしてあげる!」
「ひ、ひぃっ、先生、ごめ・・・。」
「堅剛!!」
バシーン!
「ぎぎー!!」
堅剛が何か言いかけようとしたが千代美はそれを聞くことをせず、すでに赤くなっている堅剛のお尻に平手打ちを浴びせた。そしてここから、堅剛にとって長い長いお仕置きタイムが始まる。
「全く、いつもいつもイタズラばかりして!」
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!
「どうしてお母さんの言うことを聞かないの!」
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!
「さらに嘘までつくなんて!今日という今日は先生、絶対許しませんからね!」
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!
「びぇぇぇーん!うぇぇぇーん!!ぶぎぁぁぁーん!!!」
あの我慢強い堅剛もついに泣き出した。大声をあげ、お尻を叩く音と共に音楽室内に響き渡っている。さらに千代美の宣言どおり、お尻ペンペンは相当厳しく前回の時とは比べものにならない。まるで鬼がのりうつったかのような堅剛へのお仕置きの凄まじさは間違いなく堅剛の母親を超えていた。
ついこの前まではあれだけ気弱だった千代美はもういない。いや、もう二度と現れないであろう。そこには、自分が一番大好きである少年を厳しいながらも愛情を込めてお尻ペンペンのお仕置きをしている生まれ変わった千代美がいた。
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!
「・・・し、しぇんしぇーい!・・・ぐぉ、ぐぉめんなしゃーい!!・・・む、む、むぉうちまちぇーーん!!!」
泣き叫び続けてとうとう擦れた声しか出ない堅剛。そんな堅剛に対して千代美は、
「やっと心から謝れたね・・・はい、よくできました!」
ヴァチィィーン!!
「$%¥@§♯!!!」
渾身の力を込めた一打が最後に堅剛のお尻に与えられ、堅剛の叫び声はもはや言葉にならなかった。結局、追加分を含めて80回ものお尻ペンペンが叩き込まれた堅剛のお尻は最後には黒みがかった赤紫色に腫れ上がっていた。
そんな堅剛を、千代美は叩く手を止めてすぐに自分の膝の上から起こすと思いっきり胸に抱きしめた。
「もう、ほんっとにいたずらっ子なんだから・・・でもこれでお仕置きは終わりだからね。はいはいもう泣かないで、いい子だから。」
「うぇーーん。びぇぇーーん。ひっくひっく・・・。」
堅剛は千代美の胸に顔をうずめ、しばらく泣き崩れていた。そして次第に泣き止んでくると、千代美はその無残に腫れ上がった堅剛のお尻をゆっくりとなで始める。すると、堅剛はようやくほっとしたのか力が抜けたかのように千代美の胸から離れ、再び膝の上にうつ伏せになった。そんな堅剛を優しい目で見ながら、千代美は自分の膝の上に戻ってきた堅剛のお尻をさらに優しくなで続けるのであった。
午後7時。あれから1時間は過ぎただろうか、もう外は暗くなっていた。
防音がされているため外からは全く聞こえずに、ついさっきまで散々泣き叫び声やお尻を叩く乾いた音でいっぱいになっていたここ音楽室では、千代美と堅剛が何やら話をしている。もうそこにいるのはは悪い子とその悪い子をお仕置きする先生ではなく、ただの普通の児童と先生に戻っていた。
「ほんと、先生は手加減を知らねえよな、イチチチ。」
「ほら、だからまだパンツは履いちゃいけないっていってるのに・・・薬だって塗ったばっかりなんだし。」
「いいよもう、ケツなんかずっと出したくねえし。こんなのツバつけときゃ治るって。」
「またそんな強がり言って、この前の時だって少し時間が掛かったでしょ。本当に素直じゃないんだから・・・。」
「へん、よけいなお世話だよ。」
「お仕置きされている時はあんなに素直になれるのに・・・まだお仕置きが足りなかったのかしらね。」
「ふんだ、いくらケツ叩いたって俺の性格なんかそう簡単に直らねえよーだ。おしーりペンペ・・・イテー!」
「ふぅ、何してるのよ馬鹿ねえ。ウフフフフ。」
「エヘヘヘヘ。」
こんな会話が二人の間で交わされている。ちなみに千代美は椅子に座り、堅剛はその前に立っている状態である。そしてそんな中、千代美は堅剛にこんな質問をする。
「ねえ、堅剛くん。」
「ん?」
「先生とお母さん、これからはどっちにお尻ペンペンされたい?」
「へ!何だよ急に、そんなこと聞いてさ。」
「だって、先生とはいえやっぱり他人にお尻を何回も叩かれるのはやっぱり自分の親に叩かれるよりは嫌なんじゃないかなっと思ってね。」
「ハハハ、そんなことかよ。うーん、ぶっちゃけいえばどっちにも叩かれたくねえな。」
「もう、それだと答えにならないでしょ。」
「へへへ。」
「ちゃんと答えなさい。もしお母さんの方がいいのであればね、先生、堅剛くんをお尻ペンペンするの今日で最後にするから。」
「・・・・!」
千代美の言葉に堅剛は急に真顔になる。千代美はさらに話を続ける。
「今回は事の成り行きで堅剛くんをお仕置きするのを引き受けて・・・でもやるからには厳しくしようって心を鬼にしたわ。でもその結果、堅剛くんが泣いているのを初めて見ちゃったし、お尻もあんなにひどくしちゃって・・・少しやりすぎたと思ってる。でもちゃんといい子になってほしいって本気で思いながらお仕置きしたし、決して憎らしいという気持ちでやったんじゃないんだからね。」
「・・・・。」
「まあ、正直に言えば・・・堅剛くんの泣き顔をもう見たくないってとこかな。これ以上大好きな堅剛くんを自分の手によって泣かせるのはちょっと、ね。」
「・・・・。」
「さっ、そろそろ答えを聞かせてもらおうかな?」
千代美は嘘一つつくことなく自分の思いを話し、それをずっと黙って聞いていた堅剛。すると考えることなくすぐさま堅剛はこう答えた。
「俺、他人になんか自分のケツを見せたくねえし、もちろん叩かれたくもねえ。でも・・・。」
「でも?」
「先生だったら・・・別にいい。」
「えっ!」
「先生ならいいって言ってんだろ!第一、母ちゃんにケツ叩かれるのは確かにもう飽きてきたからな。」
「堅剛くん・・・。」
「だから、これからもよろしくたのむよ。俺の恥ずかしいとこ見せられるのは、親以外では先生だけだからな。」
「・・・・。」
「じゃ、そろそろ帰るぜ。」
堅剛はそう言って、音楽室出入口の方へゆっくりと歩き出す。すると、
「堅剛くん!」
「ん?うわっ!」
千代美の声に堅剛は振り向くやいなや、千代美の体が目の前に押し寄せてきた。
「ありがとう。」
そして千代美は自分の胸に堅剛をギューッと強く抱きしめる。すると堅剛の顔がちょうど千代美の胸にあたり、ほとんど息ができない状態となっていた。
「・・・うっぷ。く、苦しい・・・。」
そんな堅剛に千代美はハッと気付いて、すぐに力を緩めてそっと目の前に堅剛を立たせる。
「はぁ、はぁ・・・お、俺を殺す気か!」
「アハハ、ごめーん。つい嬉しくて力が入っちゃった。」
「くそ、馬鹿力め。なんでそんなひょろっとした体でこんな力が出せるんだよ!」
「それは、ズバリ愛の力・・・なんちゃって。」
「ば、ば、馬鹿馬鹿しい。帰る!」
ペロッとイタズラっぽく舌を出す千代美の仕草と言葉に、堅剛は顔を紅潮させ、早足にスタスタと音楽室を出て行こうとする。そして、
「堅剛くーん!」
ここでまた千代美が堅剛を呼ぶ。
「今度は何だよ!」
「バイバーイ!また明日ねー。」
千代美は満面の笑みを浮かべながら堅剛に向かって大きく手を振った。
「・・・ふん。」
堅剛はそんな千代美を横目で見て、手を振り返すことなく、自分のお尻をさすりながら暗い廊下の中へと消えていった。
「さて、と。これから堅剛くんのお母さんに報告、報告。」
千代美は堅剛を見送るとすぐに携帯電話を取り出し、堅剛の母親にメールで今日の報告をした。
お尻ペンペンの回数、堅剛のお仕置き中及びお仕置き後の態度、お仕置きを終えての自分自身の反省点、そして・・・自分の堅剛に対する気持ち・・・etc。
それから1時間後、千代美が帰宅しようとする直前に携帯電話が鳴り出した。
(あ、堅剛くんのお母さんね)
千代美はその場に立ち止まり、早速メールを見る。
[今日は本当にありがとうございました。おかげさまでうちの堅剛は少しは反省しているみたいです。家に帰ってきたときかなりお尻を痛がっていたので私はわざとらしく、「どうしたの?」と言ったらあの子は何も言わず自分の部屋へと入っちゃいました。私はてっきり「何で先生にあんなことたのんだんだよ!」って怒鳴られると思っていたのでちょっと意外です。食事のときも一言もしゃべらないので、私もさすがに気になってきたからこの前と同じく堅剛がお風呂に入ろうとして脱衣所にいるときにこっそりと覗いてみました。そうしたらお尻の赤いこと赤いこと、この前の時や私がお尻ペンペンしたときとは比べものにならないくらい。そうしたら、堅剛に覗いてるのがばれちゃって思いっきり戸を閉められました。でも、それでもまだ無言だったので私ちょっと言ってみたんです。「お尻そんなにされちゃって、千代美先生って見た目は大人しそうなのにけっこう非情な人ね。」ってね。そしたらすぐもう一度戸が開いて、「うるせえな、先生の悪口言うんじゃねえ!」って裸のまま前も隠さずに怒鳴ってきて、そしてまたピシャンと戸を閉めちゃったわ。で、そんなあの子の行動を見て私思いました。あれだけ痛い目にあったのに先生に対してああ言うってことは、先生の気持ちがきちんとあの子に伝わっているんだなって。]
「・・・・。」
黙々とメールを見る千代美。表情が次第に緩んでいく。
[まあそれとは別に違う感情が先生に対して芽生えてきてるんでしょうけど・・・まあそれはこれから先の話ということで。でもあの子は少したてばまた懲りずに悪さするでしょうから、そのときはまた報告するので今日ぐらい、いやそれ以上のお仕置きをしてあげて下さい。では今後ともよろしくお願いします。By堅剛マミー P.S. これからも堅剛を末長く見守ってあげて下さい。]
長々と書かれているメールをすべて見終えた後、千代美は夜空を見上げて、
「もう、しょうがないなぁ、堅剛くんは。ウフフフフ♪」
千代美は上機嫌になり、もう一度そのメールを見ながらゆっくりと歩き出し、校門を後にするのだった。
そして翌日の朝、堅剛の席に白い薄くて柔らかい手作りの座布団が一枚、そっと置かれていた。