クリスマスプレゼント(F/m)
クリスマスイブ。
繁華街ではクリスマス一色で賑わっているその一方、
昨日から小学校が冬休みに入っていた幸司(こうじ)は家で留守番をしていた。季節が冬になったこともあり、あったかいグレーのセーターを着て、お気に入りのベージュのショートパンツをはいた元気な少年。
そんな幸司はお昼ごはんを食べ終わり、テレビを見ながらくつろいでいると、
ピンポーン
玄関のインターホンが鳴る。
「あれ?誰だろう。」
幸司は小走りで玄関に向かい、ゆっくりとドアを開ける。
「あ、こんにちは。幸司くん。」
聞き覚えのある一人の女性の声が飛びこんできた。
「あれ、里乃(りの)お姉ちゃんかぁ、こんにちは。」
目の前には4年3組のクラスメイトの橋本浩(はしもと ひろし)の姉、里乃が立っていた。
髪は肩に少しかかる程度の長さであり、パープルのコートを身にまとい、長身で容姿端麗な女性。去年に大学を卒業し、OLとして地元で働くようになって今年で2年目。年齢も24歳となり、弟の浩とは14も離れている。
ちなみに里乃と浩の父親は3年前に病気で他界し、現在は母親と3人家族である。
「ちょうどよかった。これ、浩からなんだけど。」
そう言って、里乃は幸司にあるものを差し出す。
「あ、これはこの前、浩くんに貸したゲームソフトだ。」
「浩ったら、今日幸司くんに返すんだって言ってたのにすっかり忘れてお母さんのマンションに電車で出掛けちゃったの。ほら、うちのお母さん仕事で地方に単身赴任でしょ?それで、浩は学校が始まる直前まであっちにいるから・・・それで、幸司くんが困ると悪いと思って私が代わりに持ってきたってわけ。ごめんね。」
「ううん。別にいいよ、気にしないで。」
「ありがとう、幸司くん・・・えーと、今日は一人でお留守番なのかな?」
「うん。パパとママが急な出張とかなんかで一昨日からいないんだ。明後日には二人そろって帰ってくるって言ってたけど。」
「ふーん、暮れも近いからどこも忙しいのかな?でも偉いねえ、まだ小さいのに一人で留守番なんて。」
「もう、小さいのは体だけだもん!もう10歳になったんだから、留守番くらいできるもん!」
「アハハ、ごめんごめん。」
里乃は少し怒ったような表情をしている幸司を優しくなだめる。
そんな里乃に対し、すぐさま笑顔に戻る幸司。それもそのはず、幸司は元々里乃が大好きであり、休日に浩の家に遊びに行った際には、何かとお世話になっている。そして、その度に一人っ子である幸司は、こんな優しい姉がいる浩がうらやましいと思っていた。
すると、その里乃がまた幸司に話しかける。
「ねえ。幸司くんがよかったらでいいんだけど、これから私と一緒に遊ばない?」
「えっ!」
「一人でお留守番なんて退屈かなって思ってね。ほら、さっきのゲーム・・・私も浩と何度か相手になってやり方は知ってるからさ。二人でお留守番しながらそれをやりましょうよ、ねっ!」
「・・・・。」
「だめ?」
「う、ううん、全然だめなんかじゃないよ!僕も里乃お姉ちゃんと遊びたいと思ってたし。」
あまりに突然の喜ばしい出来事に幸司は驚き、慌てふためいてしまう。そんな幸司を見て里乃はクスクス笑いながら、
「じゃ、幸司くんのおうちにお邪魔しまーす。」
そう言って玄関に靴を脱ぎそろえると、
「僕の部屋はこっちだよ!」
幸司に手をひかれて里乃は家の奥へと入っていった。
ドッカーン!
「あーっ!また負けちゃった・・・幸司くん強ーい。」
「エヘヘヘ。」
あれから1時間ぐらい過ぎてその間、幸司の部屋からは幸司と里乃の楽しそうな声が聞こえている。
部屋の中では二人仲良く座ってテレビゲームをする姿があった。
「うーん、浩とやったときはこんなに負けなかったのになぁ。」
「へへへ。だって僕はこのゲームを浩くんに貸す前から何度もやってるからね。」
「そっかー、何事もやりこめばこんなに上手くなれるのねぇ。」
「僕、このゲームすっごくやってたからね。それに今度は2(ツー)も出たからそれも楽しみにしてるんだ!」
「2って・・・ああ、このゲームの続編のことか。もしかして、それが幸司くんのクリスマスプレゼントになるのかな?」
「うん!本当は今日デパートで買ってもらえるはずだったけど、行けなくなっちゃったから・・・。」
「あらあら、それは気の毒ね。でも、明後日にはパパとママが帰ってくるんだからそれまで楽しみね。」
「うん、楽しみ!」
「フフッ。遅れてきたサンタクロースを待ってるって感じね。」
二人で楽しく話が弾んでいる。すると、里乃がふと幸司にこんな質問をする。
「ところで幸司くんてさぁー、サンタクロースっていると思う?」
「へ?」
「私はね、幸司くんや浩くらいの歳の頃はいるって信じてたよ。」
にっこりしながら話す里乃に幸司はこう答える。
「えーと、幼稚園の頃はいるって思ってたけど・・・小学生になって「そんなのいないよ」って 言われて、それでクリスマスの夜に寝たふりしてバッと起きたら・・・目の前にプレゼントを持ったパパが 驚いた顔して立ってた。すごくがっかりした。」
「ふうん、それはパパもばつが悪かったわね。それにしても、サンタがいると夢見てる子に対して子供とはいえそんな無神経なこと言うなんて・・・今時の子供ってそういうものなのかなぁ。」
そう嘆いている里乃を見て、幸司は申し訳なさそうに小声でこう言った。
「浩くん・・・。」
「・・・・え?」
「僕にサンタがいないって言ったの・・・・浩くん。」
それを聞いてしばらく黙る里乃。そして、
「えーーーー!その子供ってうちの浩なの?マジ?まあ、確かにあの子は昔からサンタなんか全く信じちゃいなかったけど・・・。あー、なんか私が悪いことしちゃったような気分だわ!」
幸司の夢を壊したのが弟の浩とわかり、天を仰ぐ里乃。
「ごめんね、幸司くん。うちの浩がそんなこと言ってたなんて・・・姉として心から謝らせてもらうわ。」
「え?いや、僕は別に・・・。」
「そうとわかれば、弟の代わりに何かおわびをしなければいけないわねえ。どうしたらいいかしら?」
「だから、僕は別に・・・。」
戸惑う幸司に構わず自分の頬に手を当ててしばらく考えこむ里乃。すると、
「そうだ!」
「・・・・!?」
里乃は何を思いついたのか急に大声を上げると、幸司は唖然とする。
「ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから。」
そう言いながら、里乃は自分のコートを羽織って颯爽と部屋を飛び出した。
「え・・・どういうこと?里乃お姉ちゃーん!」
幸司はこう叫んだものの、もうすでに里乃の姿はない。
(どこにいっちゃったんだろう・・・)
こうして幸司は、誰もいなくなった部屋で一人立ちつくしてしまうのだった。
それから約15分後。
幸司は気を取り直して一人でゲームをしていると、ドアの向こうからタッタッタッと足音がだんだん大きく聞こえてきた。
(・・・里乃お姉ちゃんだ!)
幸司はゲームをやめてドアの方に振り向いた。するとその瞬間、
バターン
「わっ!」
ノック一つなく、いきなりドアが開いたため少しびっくりする幸司。そして、
「ジャジャジャジャーン!どう?幸司くん。」
「・・・・えーっ!」
里乃を見て、幸司はさらに驚いた。それもそのはず、そこには赤いワンピース風のサンタ服に身を包んだ里乃の姿があった。
赤い帽子、白い袋、そしてなぜかピンクのエプロンをしているものの、まさにサンタクロースの姿そのものであった。
「ど、ど、どうしたの?里乃お姉ちゃん。」
誰でも尋ねるだろう当然の質問に、里乃はにっこりしてこう答える。
「サンタがいないって知らされて、浩に早々と夢を壊された幸司くん。そんなかわいそうな幸司くんのために、この私がサンタとしてやってきたのよ。」
「は、はぁ・・・。」
「あ、ちなみにこの衣装は明日の町内クリスマス会で使う予定のやつね。幸司くんも参加する予定でしょ?実は私、女性サンタ役を頼まれてたんだ。だから、幸司くんには一足早くお披露目って感じかな。」
「へぇー、そうなんだ。すっごく似合ってるよ、里乃お姉ちゃん。」
「ウフフ。ありがとう、幸司くん。」
「でも、どうしてエプロンなんかしているの?サンタはエプロンなんかしてないんじゃ・・・。」
「えへへ。これはね、私はサンタだけじゃなくて会場準備も引き受けてるからついでに貸してもらってたの。急いでたんで、ついつけてきちゃった。」
「アハハハ。でも、それも似合ってるよ。」
「もう、ほめるのが上手いんだから。」
そう言いながら里乃は、椅子に座っている幸司の額を人差し指でちょんと突くと、幸司は照れながら頭をポリポリとかく。
「ということは僕、これからプレゼントもらえるの?」
「もちろんよ。」
「ワーイ!じゃあ、この袋の中にプレゼントが入っているんだね。」
幸司は嬉しさのあまり里乃が持っている白い袋を思い切りつかんで引っ張った。
スルッ
袋が里乃の手から離れ、幸司の手元へとくる。ところが、
「あ、あれ?何にも入ってないよ。」
袋の中を覗くと明らかに何も入っていないのがわかり、首をかしげる幸司。
「フフフ。あのね、形のあるプレゼントは明日のクリスマス会で子供たちみんなにあげるわ。だから、今日幸司くんにあげるプレゼントは形のないもの、簡単に言うと幸司くんのお願い事をこの私、里乃サンタが1つだけ叶えてあげる。」
「えーーー!!本当に?」
「サンタは嘘つかないわ。でも、私がどうしても無理なことは勘弁ね。例えば、身近なとこでは部屋の掃除とか、夕食の支度とかはお安い御用よ。」
「願い事・・・かぁ。」
「まっ、ゆっくり考えてていいからね。それまで私は・・・またこのゲームで遊んじゃおうかな。」
里乃はそう言うと、床に正座して再びゲームで遊び始めた。サンタがTVゲーム・・・なんとも奇妙な光景である。
(うーん、どうしよう・・・)
一方、幸司は腕組みをしながらまじめな顔で考える。
(里乃お姉ちゃんの料理も食べたいし、公園まで一緒に散歩ってのもいいなぁ。一緒にお風呂・・・って僕、何考えてんだ?そんなこと言えるわけないじゃんか!)
こんな感じで自問自答を繰り返していると、
「あ、そうそう、一緒にお風呂に入るってのもいいわよー。浩だったら恥ずかしがって拒否しちゃうけどね。幸司くんもやっぱり恥ずかしいかな?」
ドッキーン
あなたは心が読めるのかと思わせるくらいのタイムリーな里乃の言葉に幸司は動揺を隠せないでいた。
「そ、そ、そんなことぼ、僕だってで、できるわけないじゃん。ア、アハハハ・・・。」
幸司は額からの汗を手で拭う。ちなみに、里乃はゲームに集中しているため、そんな幸司の様子は見ていない。
(ふぅ。それより、そろそろ決めないと・・・)
再び考えこむ幸司。しばらくして、幸司の脳内にある考えが浮かんだ。
(あっ、そうだ!)
幸司は自分の座っている椅子の脇に置いてあるランドセルをさっと手にとって開けると、そこから一枚の紙を取り出した。
ランドセルを元の場所に置き、すぐさま里乃の方を向く。
「里乃お姉ちゃん!」
「ん?そろそろ決まったのかな。」
「うん。」
幸司の呼びかけに、里乃はテレビを消して幸司の顔を笑顔でじっとみつめる。
「あのね、里乃お姉ちゃん・・・。」
「なあに?」
「僕に・・・勉強を教えて!」
「えっ?」
思いがけない幸司のお願いに里乃は目を白黒させる。
「どういうこと?確か幸司くんは浩と違って学校の成績は優秀なはずじゃない。」
「うん。でも・・・これ。」
そう言って幸司は椅子から立ち上がり、先ほどの紙をそっと里乃に差し出す。
「これは算数のテスト?えっと、氏名山沢幸司、点数は・・・50点!あらぁ、幸司くんにしては珍しいわね。テストではいつも最低でも80点は取ってるって浩から聞いてるけど。」
「今回のテストの問題はよくわからなくって・・・ちゃんと勉強はしたつもりなんだけど。」
「なるほど、幸司くんでもなかなか上手くいかないことがあるってことね。それで私に・・・。」
「うん。だから里乃お姉ちゃんに冬休みの間、勉強を教えてほしいなって・・・。そうすれば次のテストではいい点が取れるかなって・・・。」
「うん、うん。そっかぁー。」
幸司の言葉をうなづきながら真剣に聞く里乃。そして、
「わかったわ!」
「え?本当!」
「もちろんよ。でも、大晦日から正月以降は私もお母さんのマンションに行ったりお仕事もあるからちょっと無理だけど、年末までの3日間くらいだったら大丈夫。だから、その間いつでも私の家にいらっしゃい。幸司くんがわかるようにしっかりと教えてあげるから。」
「やったー!わーい!!」
「もう、そんなにはしゃぐことないでしょ、フフフフ。」
幸司の無邪気にはしゃぐ姿を笑いながら見つめる里乃。
目的が勉強とはいえ、大好きな里乃と1日だけじゃなく何日か一緒にいられる・・・その約束だけで幸司の心は満足でいっぱいだった。
ところが、ここで里乃の口から思いがけない言葉が飛び出す。
「ねぇ、幸司くん。」
「え、何?」
「このテストなんだけど・・・パパやママにはもう見せてるのかな?」
「え?テスト?パパやママに見せてる?」
「・・・どうなの?」
「あ、ううん。まだ見せてないけど・・・。それがどうしたの?」
里乃からの質問に幸司は不思議そうに答えると、その瞬間里乃の顔から笑みが消え、スッと立ち上がり、幸司の目の前へと立ちはだかる。
グニッ
「い、痛ーい!」
そして、即座に里乃は幸司のほっぺたをつねりあげると、幸司はそんな里乃の行為に対して訳がわからぬまま痛さで大声をあげる。
「こら!悪い点数だからってテストを隠すなんて・・・そんなことしていいと思ってるの!」
「・・・・!?」
ここで幸司は里乃の行動の意味を理解し、必死で弁解しようとする。
「ち、違うよ、里乃お姉ちゃん。それは・・・。」
「何が違うというの?見せてないって言ったのは幸司くんでしょ!」
「でも・・・。」
「言い訳は聞きません!!」
ガバッ
「うわっ!」
幸司が驚きの声をあげる中、里乃はさっきまで幸司が座っていた椅子に腰をおろすとすぐさまその膝の上に幸司の体をうつ伏せにした。幸司は驚きのあまりに足をバタバタさせるが、里乃はそれに動じることなくしっかりと幸司の体を押さえつける。そして、ここで里乃はさらに幸司が考えもしない行動に出る。
ムキッ
「・・・・!!」
なんと、里乃は幸司のショートパンツに手を掛け、ブリーフと一緒に太腿の中間あたりまでずり下ろす。すると、美味しそうで小さな桃を連想させる幸司の可愛いお尻が顔を出す。ちなみにここ最近では、母親以外の大人の女性に丸出しのお尻を見られたことは幸司の記憶になく、驚きと共に恥ずかしさも加わり、即座に顔面を紅潮させる。
「な、な、な、何・・・。」
もはや幸司はどうしていいかわからず、とにかく何でもいから里乃に向かって何かを言おうとしていた。しかしその時、
バシーン!
「・・・びぃっ!」
いきなり自分のお尻に里乃の平手打ちが炸裂し、里乃の膝の上で跳ねる幸司。そしてさらに、
ビシッ!バシッ!ビシッ!バシッ!バシン!
「・・・ぐっ!・・・うっ!・・・つぅ!・・・いっ!・・・ひぃっ!」
間髪いれず無言で幸司のお尻を叩く里乃。そして、叩かれる度に悲痛の声を出す幸司。幸司はこの時点でようやく自分が何をされているのかに気付く。自分は里乃に「お尻ペンペン」のお仕置きをされているのだと。最近ではお仕置きとして行なっている家庭が少なく、マンガやアニメでもごくたまに見られるあの「お尻ペンペン」を・・・。
バシッ!バシン!ビシッ!バチン!ビシン!
「・・・つぅ!・・・ひっ!・・・びぃ!・・・いっ!・・・痛い痛い痛ーい!」
あまりに厳しい里乃のお尻ペンペンに幸司の声がついに叫びへと変わり、ここで里乃がようやく口を開く。
「何言ってるの!悪い子にはこれぐらい当たり前です!いいこと、幸司くん?悪い子にはサンタはプレゼントをあげません。だからプレゼントを渡せるいい子になるように、今日はたっぷりお尻ペンペンしてあげるからね。」
「・・・いーっ!そんなぁ・・・。」
里乃の非情な言葉に思わず反論しようとする幸司。しかし、里乃の平手はそれすら許さない。
バシッ!バシン!ビシッ!バチン!ビシン!
ビシッ!バシッ!ビシッ!バシッ!バシン!
「・・・・びぃぃっ!・・・ぎぃぃっ!・・・うっ、うっ、うえぇぇーん!!」
積み重なっていくお尻の痛みに幸司はついに泣き出した。幸司のお尻はすでに一面赤く染まっており、見るからに痛そうである。
するとここで、里乃は幸司のお尻を叩く手をピタリと止めると、しばらく幸司が泣き止むのを待つ。そして再び幸司に向かって話しかける。
「幸司くん、悪い事をしたらどうすればいいの?」
「・・・ぐすん。・・・ぐすん。・・・えっ?」
「聞いているのよ!答えなさいっ!」
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!
「・・・びぎぎぃーん!」
里乃はこう叫ぶやいなや先程までよりもずっと力を込めて幸司のお尻を叩くと、幸司は再び海老のように里乃の膝の上で跳ねる。
「どう?これで答えられるかな。もし答えられないと、まだまだお尻ペンペンは続くわよ。こんな風にね。」
バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!
「・・・ぎゃぴぃぃーん!」
幸司の目からは大粒の涙がぽろぽろと流れ、目の前の床に小さな水溜りを作る。お尻の痛みによるものだけでない、普段優しい里乃がこれほどまでに厳しくなる事実に対しての恐怖の涙で・・・。
「さっ、答えなさい!悪い事をしたらなんて言えばいいの?」
さらに厳しく問いつける里乃に対し、幸司はお尻の痛みに耐えながら口を開こうとする。
「・・・・ご、・・・・ご、ご・・・。」
「ご?その後は?」
いまだ冷たい目で幸司を見下ろす里乃。そして、幸司は残っている力を振り絞ってついに・・・
「ごめんなさーい!!」
さっきまでの泣き叫び声と同じ、いやそれ以上の大声で幸司は叫ぶ。そして、
バッチィィーン!
「ひいぃぃーっ!!」
里乃は幸司の精一杯の「ごめんなさい」を聞き、最後に1回思いっきり幸司のお尻を叩くとすぐに幸司の体を抱き上げて自分の胸に抱きしめる。
「はい、幸司くん。よくごめんなさいができたね、いい子いい子。これでサンタも幸司くんに喜んでプレゼントをあげるって。よかったね。」
「・・・・。」
「このテストのことは、ちゃんとパパとママに言って正直に話そうね。大丈夫、サンタがついてるからきっと許してくれるよ、ね。」
「・・・う、う、うわぁぁーん!!」
いつもの優しい里乃の言葉に幸司は再び泣き出した。そんな幸司を里乃はさらに強く胸に抱くとともに、
「お尻痛かったでしょう。ちょっと厳しかったかなぁ、ごめんねぇ、よしよし。」
真っ赤に腫れた幸司のお尻を優しく撫でてあげるのだった。
あれから数分後、厳しいお尻ペンペンのお仕置きが行なわれた幸司の部屋。
当然もう叱責や叫び声はもう聞こえるはずがなく二人仲良くお話をしている・・・と思いきや、再び叱責らしき声が聞こえてくる。しかし、今度の叱責は女性の声ではなく男性、いや男の子の声であった。
「ふんだ、里乃お姉ちゃんなんか知らない!」
「あーん、ごめん、ごめんってば。そろそろ許してよぉ。」
なんと、今度は幸司に対して里乃が謝っている。
「私、知らなかったのよ。あのテストが一昨日渡されたものだったなんて・・・だからその日からお仕事に行ったパパとママに見せられるわけないってことも・・・。」
「知らなかったじゃないよ、もう!」
「でも、幸司くんが先にそう言ってくれればよかったのに・・・。」
「言い訳は聞かないって言ったの・・・理乃お姉ちゃんでしょ!」
「・・・そうでした。ごめんなさい。」
「プンプンプンプン!」
誤解によるお仕置き・・・それにより形勢が逆転した里乃と幸司。しかしながら、まだお尻が痛いということで平謝りしている里乃の膝の上にうつ伏せになってお尻を出したまま、そのお尻を里乃に撫でられながら怒っている幸司の姿は、はたからみると何ともおかしな光景であった。
「本当にごめんなさい。実は、前に浩にも同じ理由でお仕置きしたことがあってね・・・それが今回の幸司くんの事と重なっちゃったもんだから、つい。」
「え、浩くんも?」
「そうなの。あの子ったら、学校からのテストを何枚も隠してたのよ。うちのお母さんが単身赴任になって1ヶ月ぐらいたった頃かなぁ、浩にはあらかじめ言っておいたのよ。お母さんがいない間は、私がお母さんの代わりなんだから学校でのことはきちんと報告しなさいってね。でも、早速その約束を破ったもんだから、今日の幸司くんにしたようにお尻ペンペンしたのよ。あの子わんわん泣いて何度も謝ってたわ。で、それ以来テストを見せるのはもちろん何でも私に話すようになったわ。まあ・・・テストの点数は相変わらず悪いんだけど、成績についてはお母さんも叱ることはしないし、普段いい子だったらそれでいいと思うからね。」
「ふうん。」
「あの子、お母さんにには何度もお尻ペンペンされてたけど、私にされたのはあの時が初めてだったのよねえ。よっぽど嫌だったのか、あれから私の前ではそんなに悪い子にならないもんなぁ。だから幸司くんで2回目よ、私が子供にお尻ペンペンしたのは・・・って話が横道にそれちゃったわね。」
そう言いながら頭をぽりぽりと掻く里乃。
「・・・もういいよ。」
「え?」
「里乃お姉ちゃんのこと、許してあげる。だって、僕をいい子にしようとしてお仕置きしたんだから。」
「幸司くん・・・。」
「でも、里乃お姉ちゃんのお尻ペンペン痛かったなあ。こんなに痛い思いしたのは僕、初めてかも。」
「あれ、幸司くんは親からお仕置きされたことってないの?」
「ううん、全然。叩かれたことはないもん。」
「そっか、幸司くんのパパとママはどっちも温厚だもんね。多分、あのテストを見せても何事もなさそうだし。」
「僕もそう思う。」
「ウフフフ。」
「エへへへ。」
共に笑う二人。そして、
「よーし。じゃあ、いい子にはクリスマスプレゼントをあげないとね。明日はクリスマス会、明後日は幸司くんの両親が帰ってくるから・・・3日後から3日間、約束どおり私と一緒にお勉強をしましょう!」
「わーい!」
幸司は喜びのあまり万歳をした。しかし、相変わらずお尻を出したまま里乃の膝の上でうつ伏せになった格好のままである。
「でも、私が教えるんだからそれだけじゃ終わらないわよ。ちゃんと勉強の成果があったかどうか、最終日にテストをします。」
「えー、本当に?」
「本当よ。もし、それで悪い点を取ったら・・・。」
「・・・取ったら?」
「お尻百叩きよ!」
「ひ、ひ、ひぇー!」
幸司はたまらずお尻を両手でおさえる。
「・・・なんてのは冗談。」
「へ?」
「頑張って勉強するんだから点数なんてどうでもいいの。たとえ0点でも何もしないから安心して。」
「ふぅー、驚かさないでよぉ。」
「ごめんごめん。でも、逆に100点が取れたら私からごほうびをあげるわ。」
「え、嘘!ごほうびって何、何?」
「そうねえ、レストランで二人で外食なんてどう?」
「うわぁー、やったー!!」
「こらこら、まだ先の話でしょ。」
「エヘ、ごめんなさい。つい・・・。」
「それとも、他にご希望があればそれでもいいわよ。」
「ご希望?」
「そう、あればね。」
「うーん、他の希望かぁ・・・。」
幸司は目をつぶって考える。しばらくして、幸司の頭の中にある光景が少しずつ浮かんでくる・・・ある女性が小さな子供を自分の膝の上に乗せて、丸出しのお尻を何度も何度も叩く姿を・・・そして当然その子供は大泣きしている。
そして、その女性と子供の顔が鮮明に見えてきたところで、
「えっ!!」
幸司はハッと我に返る。
「ど、どうしたの幸司くん。いきなり大きな声出して。」
「い、いやな、何でもないよ。へへへ。」
そう言って、うすら笑みを浮かべる幸司。
(なんで、なんでこんなことを考えちゃうんだろう・・・)
先程浮かんだあの光景に対してしばらく自問自答を繰り返す幸司であった。
そして、そんな幸司の様子を見ながら里乃もまた、
(フフ、変な幸司くん。あ、そういえば変っていえば今日の浩も変だったわねぇ。自分のテストを何枚か荷物と一緒に、お母さんのマンションへ持ってったけど、どうするつもりかしら?テストの結果は、私がお母さんにきちんと報告してるから改めて見せる必要はないと思うけど・・・)
こんなことをふと思ってしまうのであった。
そしてその夜、とある地方のとあるマンションの一室にて、
バチーン!バチーン!バチーン!バチーン!バッチィーン!
「うえーん!痛いよぉ!お母さん、ごめんなさーい!」
「ダメです!テストで悪い点取ったのはしょうがないとして、悪びれることもなくそのヘラヘラした態度は何ですか!クリスマスプレゼントはおあずけよ!今日はこの悪い子のお尻が真っ赤っ赤になるほどうーんとお仕置きするからね!!」
母親は容赦せずに自分の膝の上にあらわになっている息子のお尻を叩き続ける。しかし、その表情は怒りというよりもむしろ穏やかである。久しぶりに会った息子の少し大きくなったお尻を見て、しみじみと喜びを感じながら・・・。
そして、息子もまた母親の思いを受け止めるように、泣きながらも逃げることなく自分のお尻を母親が振り下ろす平手の方へと突き出すのであった。
バシーン!バシーン!バシーン!バシーン!バッシィーン!
「うぇぇぇぇーん!びぇぇぇぇーん!」
こうして、お尻を叩く音と子供の泣き声が一晩中、部屋の中に響き渡るのだった。
さらに、それから5日後の夕方。
デパート内にあるレストランの前に里乃と幸司の姿があった。
それもそのはず、幸司は里乃との3日間の猛勉強の末、最終日のテストで100点を取ったのだ。こうして幸司は外食のごほうびをもらえたわけだが・・・いささか様子が変である。
里乃と手をつないでいる幸司の歩き方が明らかにおかしく、おそるおそる歩いている。まるで、普通に歩いたら体のどこかが痛むのかと思わせるほどに・・・。
するとどうやら幸司は里乃からもう一つ「ごほうび」をすでにもらっていたらしい。その「ごほうび」とは・・・100点を取った直後、幸司は里乃に向かってこう言ったそうである。
「テストで悪い点を取ったときの「ごほうび」がほしい。」と・・・。