着物美人は躾上手(F/f、F/m)
ガシャーン!!
「あーっ、やっちゃった・・・。」
「・・・あ・・・あ・・・。」
窓ガラスが割れた大きな音にあ然とする二人の子供。するとそこに、
バーン!
「比奈(ひな)!あんた何やらかしたの?」
「あらあら、これは大変だこと。怪我はなかったかな、比奈ちゃん?それに研一(けんいち)も。」
ふすまを豪快に開け、血相を変えている比奈の母親の速水麗華(はやみ れいか)と落ち着いた表情のままその後についてきた研一の母親である岡本郁代(おかもと いくよ)が和室へと入ってきた。
割れた窓ガラスと部屋一面に飛び散っているガラスの破片、転がっているボール、そして・・・その場に立ち尽くす子供たち。
「これは一体どういうことなの?あ、さては比奈ったら・・・。」
「まあまあ、落ち着いて麗華。子供たちに事情を聞くのはここをお掃除してからでいいでしょ?さっ、危ないから比奈ちゃんと研一は居間の方に行っていなさい。」
「そ、そうね、もちろん私も手伝うわ。比奈、あとできちんと説明してもらうわよ!どうせあんたが原因なのはママわかってるんだからね。」
「・・・・。」
麗華と郁代が掃除を始めると比奈と研一は逃げるように部屋から出て行った。
冬の晴れた日の日曜日。麗華とその一人娘の比奈は、となり町にある岡本家を訪れていた。
麗華と郁代は中学生時代からの同級生であり、親友。そして、その繋がりもあって、その子供である比奈と研一も幼稚園からの幼馴染という間柄であった。麗華は学生時代、勉強はイマイチであったがスポーツは万能さらには音楽が得意であり、要するに勉強以外なら何でもできる活発で明るい女の子であった。一方、郁代はというと勉強ではトップクラスの成績であったが、運動が苦手という麗華とはまるで正反対。また、性格についても落ち着きがあり、たいていの事では怒らないおっとりタイプというこれまた麗華と相反するところがあった。当時の二人の共通点といえば容姿端麗で、男の子にモテていたことであろうか・・・。そして今はというと、共に洋服より和服が好きで家の中や外出するときでも着物を着るという今時珍しい30代半ば過ぎの女性であった。ちなみにそれぞれ着物を少なくても20枚は所持しており、それも妻が家を守っている間、毎日夜遅くまで仕事を頑張っている旦那様たちの努力の賜物といえよう。
そして、それぞれの子供である比奈と研一は見事に母親のDNAを受け継ぎ、比奈はお転婆な学級委員長、研一は少し気弱な副学級委員長という同じ小学校の4年1組のクラスメイトである。そんな比奈と研一は昼食後、居間で母親たちが楽しく雑談している間、となりの和室で一緒に楽しく遊んでいた。そしてその最中で、この騒動が発生してしまったのである。
20分後、掃除をすませた和室では麗華と郁代が並んで正座をし、その向かいには先程呼びつけられた比奈と研一が小さな体をさらに小さくするかのように怯えながら正座をしていた。
「なるほど。比奈が家から持ってきたソフトボールで遊んでるうちに、比奈の投げたボールがガラスを割っちゃったわけね。それも、研一くんが部屋の中でボール遊びは危ないからやめようって言ってたのを無視して・・・そうなのね、比奈。」
「・・・うん。」
「研一くんもそういうことでいいのね?」
「・・・は、はい・・・。」
研一は比奈を横目でチラチラと気にしながら、オドオドして返事をする。
「まあまあ麗華、もういいじゃない?比奈ちゃんも反省してるみたいだし・・・。」
「郁代、そんな甘い事言っちゃダメよ!この子は反省してるふりして内心ケロッとしてるんだから。それに、今日は人様の物まで壊して・・・弁償しなけりゃいけないわ。」
「大丈夫よ、窓ガラスなんかそんなに高い物じゃないし・・・お金なんかいらないって。子供は元気が一番!」
「いいえ!それじゃ、私の気がすまないわ。」
こんな会話の中、比奈は足がしびれてきたのか、足を崩して徐々にだらけた姿勢になってきた。すると、
「比奈!!」
「・・・は、はいっ!!」
麗華の大声に比奈はすぐさま元の正座の姿勢に戻る。
「やっぱり反省していないようね。自分が悪いことをしたくせに何ですかその態度は!」
「・・・だってぇ〜。」
「だって?だってって何よ?」
「研一くんがきちんとボールをキャッチしてれば、ガラスは割れなかったのに・・・。」
「比奈!!!」
「・・・・!!!」
「・・・・!!!」
更なる麗華の大声に、比奈は体をビクッとさせる。そして、その隣にいる研一も一緒に驚き、思わず比奈と同じ動きをしてしまう。
「あげくの果てに研一くんのせいにするなんて・・・もう絶対許しません!これからお仕置きです!!」
「えーー!!」
お仕置きという言葉を聞き、比奈は大声をあげる。
「えー、じゃありません。そうさせるような事をするからいけないんでしょ!」
「じ、じゃあ、それだったら家に帰ってからでいいでしょ?こんなとこでお仕置きなんてイヤ!郁代おばさんと・・・研一くんがいるし。」
比奈は恥ずかしそうに手をモジモジさせながら、麗華にお願いするが、
「あんたにそんな事を決める権利はありません!研一くんのおうちで悪い事をしたんだから、ここでお仕置きされるのは当然でしょ。」
「そ、そんなぁ・・・・。」
麗華に一喝され、比奈は観念したかのように俯いてしまう。そして、比奈のその様子を見ながら研一はふと考える。
(お仕置きって、これから比奈ちゃん何をされるんだろう・・・)
そんな疑問が頭の中をよぎる。すると麗華が、
「郁代!」
「え?何かしら。」
「聞いてのとおり、これから比奈のお仕置きをするから。いいわよね?」
「いいも何も、一度決めたら麗華は引き下がらないもんね・・・ちょっとかわいそうだけど。」
「よし。そうと決まれば、すぐに準備して!」
「え?準備って、どういうこと?」
「決まってるでしょ!郁代に比奈のお仕置きをしてもらうから。いつも私が比奈にしているお尻叩きのお仕置きをね。」
「はいー?」
唐突な麗華の言葉にキョトンとする郁代。
「今日のこの子には私がお仕置きするより、むしろ迷惑を被ったあなたがお仕置きするのが一番いいと思うの。そしてその姿を研一くんにも見てもらう・・・この子にとって最高に厳しいお仕置きになるわ。」
「うーん。でも、私・・・うちの研一にだってそんなこと・・・。」
戸惑う郁代に対し、麗華はさらに話を続ける。
「あなたが体罰とか人を叩く事を好まないのは昔から知ってる。けど、今回だけ、今回だけ協力してほしいの。今日の比奈は特別悪い子だから、こうやって違う角度でお仕置きすることで、より一層反省してほしいと母親として思うから・・・。だからお願い!このとおり!」
麗華はついには土下座をして郁代に頼みこむ。
「もう、やだぁ。顔をあげてよ麗華・・・わかった、わかったわよ、期待に応えることができるかわからないけどやってみるわ。」
「郁代・・・本当にすまないわね。」
麗華からの感謝の言葉を聞くと、郁代はコクリとうなづき、目を比奈の方へと向ける。
「比奈ちゃん。そういう訳だから、早速お仕置きを始めるわね。さぁ、こっちに来ておばさんの膝の上にうつぶせになりなさい。」
郁代はそう言いながら、正座をしている自分の膝をポンポンと手で叩く。
「・・・・。」
「コラ、比奈!グズグズしないでさっさと行く!」
「・・・・!」
比奈は麗華の怒声に押されるように、よつんばで歩きながら郁代に近づき、そしておそるおそると紫系の着物に白いエプロン姿の郁代の膝の上にうつぶせに体を預けた。
「はい、いい子ね。それじゃ、ちょっと失礼して・・・。」
そう言うと、郁代は比奈の着ているピンクのワンピースのスカート部分を捲くり上げ、白いショーツに包まれたお尻をあらわにした。そして比奈が驚く暇もなく、そのショーツを膝のあたりまでスルリと脱がし、小さなお尻を丸出しにする。するとその瞬間、比奈の顔が一気に紅潮したのが誰にでもはっきりとわかる。
(比奈ちゃんのお尻、これから叩かれちゃうんだ・・・)
正座したまま、比奈のそんな姿を目の当りにして一瞬顔を背けるものの、結局、興味津々に見入ってしまう研一。
「・・・・郁代おばさん、お願いだから許して!研一くんに見られて恥ずかしいから・・・。」
あまりの恥ずかしさに比奈は郁代に向かってこうお願いする。しかし、
「郁代、そんな悪い子の言うことなんかほっときなさい!あなたのペースでいいから、きつくお仕置きしてあげて。」
「はいはい。」
比奈の嘆願も麗華にあっけなく却下され、比奈は覚悟を決めたのかおとなしくなった。そんな比奈を見て、麗華は研一の隣に正座すると、さらに郁代に指示を出す。
「とりあえず50回叩いてやって。普段なら2、30回ってとこなんだけど今日はとっても悪い子だったからね。」
「まあ、厳しいママだこと。私、こんな事するの初めてだから全然慣れてないけど、比奈ちゃんのためと思って頑張ってみるわ。じゃあ比奈ちゃん、これから叩くよー。」
郁代は比奈にそう声を掛けるとすぐに手を振り上げる。そして比奈の体をしっかりと押さえながら、お尻めがけてその手を振り下ろした。
ピシャン!
「・・・ひっ!」
お尻を叩く音が部屋中に響く。そしておそらく初めて聞くであろうその音に、研一は思わず体をビクッとさせる。
ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!
「・・・つっ!・・・あっ!・・・いっ!・・・くっ!」
ゆっくりと時間をかけてお尻を叩く郁代。その度に歯を食いしばって耐える比奈。そして、郁代はここでしばらく比奈のお尻を撫でながら、
「さっ、比奈ちゃん。しっかり反省するんですよ。あと45回だからね。」
こう言葉を掛けてやると、再び郁代の手が振り上げられる。しばらくの間、この動作が繰返し続けられていく。
ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!
ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!
ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!
「・・・あぁっ!・・・つぅっ!・・・いぃっ!・・・ぴぃっ!・・・びぃっ!」
ここで、比奈の目から涙が零れ落ちる。痛みによる・・・いや、むしろ研一に見られているという恥ずかしさによる要素が大きいものと思われる。初めてのお仕置き、しかもそれが親友の娘へということで多少遠慮がみられる郁代のお尻叩きでは、この時点でお尻は一面ピンク色に染まっているものの、これまで何回も麗華のお仕置きを受けている比奈にとってはまだまだ軽いものであった。しかし、お尻叩きのお仕置きを初めて目にする研一にとっては、かなり衝撃的であることには変わりなく、
「・・・痛そう。」
と、つい小声でポツリと言ってしまう。そして、それを隣で聞いていた麗華はクスッと笑って、
「フフフ、研一くん。あれぐらいじゃ比奈のお尻には全然ダメージは残らないわ。でもまあ、今日は痛みでというより精神的に比奈を懲らしめるのが目的だからね。だから、しっかり見てあげて。」
そう研一の耳元にささやく。すると、
(けど・・・やっぱりかわいそうだよ)
比奈のお仕置きされる姿を見ているうちに、だんだんと研一の心の中ではこんな思いが大きくなってきていた。
ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!
ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!ピシャン!
さらに続けられるお仕置き。郁代は変わることのないゆっくりとしたペースで比奈のお尻を叩いていく。そして、比奈はここでついに泣き出してしまう。
「あーん、ごめんなさーい!郁代おばさーん、もう許してぇー!」
「比奈ちゃん・・・もう少しだけ我慢しなさい。あと20回だから・・・。」
郁代は比奈の甘えた泣き声に少し困った顔をするものの、お尻を撫でながら優しく説得する。そして再び郁代が手を振り上げようとしたその時、
「お母さん!」
「えっ?」
突然の研一の声に郁代の手がピタリと止まる。
「もうやめてよ!それ以上叩いたら比奈ちゃんがかわいそうだ!」
「研一・・・。」
我が子の言葉にぼう然とする郁代。するとここで麗華は、
「研一くん。比奈のことを思ってくれるのは嬉しいけど、比奈はとっても悪い子だから、こうやってお仕置きされているの。残念だけど、途中でやめることはできないわ。」
こう言って、研一を納得させようとする。だが、ここで研一は、
「だったら・・・今度は僕のお尻を叩いてよ!」
そう言ってすぐさま、自分の着ているグレーのスウェットパンツと真っ白なブリーフを脱ぎ出してお尻を出すと、隣に正座をしていた水色系の着物に黄色のエプロン姿をした麗華の膝の上に飛び乗るようにうつぶせになった。
「・・・わっ!ちょ、ちょっと研一くん。」
「比奈ちゃんがボール遊びするのを止められなかった僕が悪かったんだもん!だから、僕だって悪い子だもん!」
「研一くん・・・。」
研一は麗華と郁代にそう訴える。
麗華の膝の上で比奈と同じくらい小さなお尻を出したまま体を硬直させ、怖くて涙目になりながらも、じっと郁代の方を見ている研一。そんな研一の行動に比奈は驚いて郁代の膝の上で動かなくなり、郁代と麗華もまた共に困った顔をしながらアイコンタクトをとっていた。すると、しばらくして郁代が無言でコクリとうなづくと、麗華はその意味を理解し、息をふーっと大きく吐く。そして、
「じゃあ・・・両成敗ってことでいいのね。」
麗華がそう言うと、膝の上でじっとしている研一の体をがっちりと手で押さえて固定する。そして、研一も覚悟したかのように身を縮め、視界に入ってくる畳だけをじっと見つめていた。
「研一くん、これからお仕置きとしてお尻を20回叩きます。初めてだからといって容赦はしませんから覚悟して受けなさい。それから・・・比奈!」
「・・・・!」
突然名前を呼ばれ、比奈は無意識にお尻をピクッとさせる。
「あんたへのお仕置きはこれでおしまいだけど、まだお尻をしまっちゃダメだからね。研一くんのお仕置きが終わるまで、その格好のままでいなさい!」
麗華がビシッと厳しい言葉を研一、そして比奈に放つ。表情も一段と真剣さを増し、周辺に恐怖感を漂わせている。
それから麗華は研一の裸のお尻の上にそっと手のひらを置く。麗華の手のひらの温もりに、研一はこれから自分に与えられるお仕置きに怯えながらも、ほんの一瞬だけ安堵の表情を浮かべてしまう。10秒ほどそのままの状態が続いた後、麗華はゆっくりと研一のお尻から手を離し、そのままその手を高く振り上げる。研一のお尻から、先程まで感じていた麗華の温もりがだんだんと消えていく。そして、完全にその温もりが消えた時、今度は種類が全く異なる温もりが研一のお尻へと伝わることになるのであった。
バシッ!バシッ!ビシッ!バシッ!バシン!
郁代とは全く異なるテンポが速くて強烈な麗華の平手打ちが次々と研一のお尻に炸裂する。
「・・・びいっ!・・・くうう!・・・いひぃ!・・・ぐひっ!・・・ぎゃぴぃ!」
おそらく生まれてからずっと感じたことがないであろう痛みが自分のお尻に集約し、研一は叩かれるたびに声をあげる。これがお尻叩きのお仕置きなんだと実感し、懸命に耐えながら・・・。
バシッ!バシッ!ビシッ!バシッ!バシン!
「・・・うひぃっ!・・・ぎいっ!・・・痛っ!・・・痛いっ!・・・痛ーい!」
あまりの痛さに研一はだんだんと目に涙を浮かべて叫ぶ。しかし、麗華は全く気にする素振りを見せずにただひたすら研一のお尻を叩く。
その一方で比奈はというと、そんな二人の姿を直視できず、お尻を叩く音と研一の声だけが耳に入ってくる。自分のせいで研一がお仕置きされている・・・そんな罪悪感に苛まれていた。すると、
「比奈ちゃん、しっかり見てなきゃダメ。研一は勇気を出してお仕置きを受けているんだからね。さあ、顔を上げなさい。」
郁代はさっきまで叩いていた比奈のお尻を優しく撫でながらそう言うと、比奈は涙で濡れた目をこすりながらじっと麗華と研一の方を真剣に見るのだった。
バシッ!バシッ!ビシッ!バシッ!バシン!
バシッ!バシッ!ビシッ!バシッ!バシン!
「・・・ぴぃっ!・・・痛いっ!・・・お尻、痛いょぉ!・・・麗華おばさん、ごめんなさいっ!!・・・お母さん、ごめんなさいっ!!!」
腹の底から大きな声を出し、必死になって許しを請う研一。そして、その声を聞いたのと同じくらいのタイミングで麗華からのお尻叩きがちょうど20回となり、ようやく麗華の顔が緩んだ。
「はい、これでお仕置きはおしまい。研一くん、よく頑張ったわね。ごめんね、比奈のせいでこんな痛い思いさせて・・・。」
麗華はそう言いながら、今度はうってかわって研一の見事なまでに赤く染まったお尻を優しく撫でる。
「比奈!あんたからもきちんと謝りなさい。」
「まあまあ、麗華。比奈ちゃんも十分反省してるんだからそんなに怒らないの、ウフフフ。」
「・・・そうね。ま、よしとしましょうか。フフッ。」
そんな言葉を交わしながら、思わず笑ってしまう麗華と郁代。そして、
「ごめんね、研一くん。痛かったでしょ、ママのお仕置き。」
「うん・・・すごく痛かった。」
「それにしても、研一くんすごいね。泣きそうで泣かなかったもん。私だったらワンワン泣いてたよ。」
「ううん、もう泣く寸前だったよ。ほら見て僕の目、涙でいっぱい。」
「え、本当?もっとよく見せて・・・ってププププ。」
「な、何がおかしいの?」
「あ、ごめんね。今、私と研一くんが赤くなってるお尻を出しながらしゃべっていると思ったら・・・恥ずかしいってよりも何だかおかしくなっちゃって。」
「本当だ。比奈ちゃんのお尻、ピンク色。」
「もう、あんまりジロジロ見ないで!エッチ!プンプン!」
「・・・ごめんなさい。」
「あらあら、今度は研一が比奈ちゃんに謝っているわ。」
「全く、仲のよろしいことで。ヒューヒュー!」
「あーん!ママも郁代おばさんもからかわないで!そんなんじゃないもん!」
「・・・アハハハ。」
こうして部屋から厳格な空気を吹き飛ばし、和やかな雰囲気に変えてしまう母親と子供たちであった。
それから、4日後の木曜日の夜。
入浴中の麗華のもとに、比奈から呼出音が鳴っている携帯電話が渡される。
麗華はタオルで手を拭いてからそれを受け取ると、
「あれ、郁代じゃない。何の用だろ?」
相手が郁代であると確認し、すぐに電話に出る。
「もしもし。郁代、どうしたの?こんな時間に電話するなんて珍しいじゃない。」
「あ、麗華。ごめんね、ちょっと聞いてほしい事があって。」
「ん、さてはこの前比奈が割ったガラス代の事?大丈夫、ガラス代以上の埋め合わせをちゃんと考えてるから。」
「いや、そうじゃなくて。ガラス代なんか別に大したことないし。」
「じゃあ、もしかして研一くんまだお尻痛がってる?えー、でも比奈ならあれくらいじゃ2日でピンピン動くけど。」
「それも違うわ。研一も痛がってたのは当日と次の日くらいで、今は平気で学校行ってるから。」
「うーん。それじゃ、一体何?」
「実は・・・その研一の様子が変なの。」
「変?研一くんが?」
「そうなのよ。あのね、一昨日からなんだけど、このくらいの時間に部屋で一人で遊んでいるのよ。ボールで。」
「ボール?」
「うん。おもちゃ屋で買ったビニールボールなんだけど、部屋の壁に何度も当てて遊んでいるの。」
「ふーん。でも、ビニールボールならこの前のソフトボールと違ってガラスに当たったって割れることもないし、別にいいんじゃない。」
「ええ。でも、もう寝る時間も近いから、そういう事は明るいときにお外でやりなさいって研一にちょっと注意したのよね。まあ、そのときはちゃんとやめたんだけど・・・。」
「だけど?」
「そうしたら昨日も、そして今日もまた同じくらいの時間に部屋の中でボール遊びをしてるのよ。一度言えば言うことを聞くあの子が二度目、そして三度目と同じ注意をさせるなんて最近じゃ記憶にないわ。」
「へー、うちの比奈なら何十回同じこと言っても聞かないことなんかよくあるけど、あの研一くんがねぇ。」
「それで、さっき研一に「どうしてお母さんの言うことが聞けないの?ボール遊びはお母さんだけじゃなくて麗華おばさんからも注意されてたでしょ?さもないと、今度は麗華おばさんにも言いつけちゃうわよ」ってほんの冗談のつもりで言ってみたの。そしたら・・・。」
「そしたら?」
「「別にいいもん」・・・だって。」
「へ?研一くんが本当にそう言ったの?」
「そうなの。だからもしかして、少し早い反抗期かなってちょっと思ったから、麗華にも相談してみようと思って・・・。」
「・・・・。」
そんな自分の一人息子を心配している郁代の話を聞いていくうちに、麗華はピーンときた。
(あ、そうか。研一くんはもしや・・・)
「ねえ、聞いてる?麗華。」
「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事してて・・・うん、何も問題ないわよ。研一くんはとってもいい子だから。」
「えっ?」
「いいからいいから。とりあえず、この件は私に任せてくれる。理由は後で説明するから。」
「・・・え、ええ、何だかよくわからないけどお願いするわ。」
「了解。なら早速だけど研一くんにこう伝言しといてくれる?あのね、明日・・・。」
それから、次の日の午後。
学校の帰りに研一は小走りである場所へ向かっていた。
ピンポーン
ガチャ
「はーい、待ってたわよ研一くん。」
「あ・・・こんにちは。」
その場所とは比奈の家である。橙系の着物にベージュのエプロン姿の麗華が玄関のドアを開けて優しい声で出迎えた。
「比奈はねえ、町内のソフトボールキッズクラブの集まりがあって6時頃まで帰ってこないわ。そうねえ、あと2時間ぐらいかしら。」
「・・・は、はぁ。」
麗華はそんな話をしながら、草履を脱いで玄関を上がる。そして、
「・・・とは言っても比奈なんか関係ないけどね。だって、研一くんを家に呼んだのは私だし。」
ギクッ
くるっと振り向き、玄関にたたずんでいる研一の顔をじっと見る麗華。研一の動揺を隠せず緊張している顔とは裏腹に麗華はにっこり笑っている。
「研一くん。どうして今日呼ばれたかわかるかな?」
「・・・えっ?」
「もう、とぼけちゃって。研一くんの考えてることは私にはお見通しなのよ。最初からこういう風になってほしいと思って、この何日かずっと郁代を困らせてたんでしょ。」
「・・・・。」
「ダメよー、いい子の研一くんがそんなことしちゃ。郁代、本当に心配してたんだぞー。でも、私が自分なりに推理した事を郁代に説明したら、すごくホッとしてたけどね。つまり、郁代は研一くんにとって最高のお母さんである。だけど、研一くんはあることがきっかけで、郁代には絶対求められない事をもう一度求めてみたくなった・・・この私にね。そうでしょ?」
「・・・・。」
研一は麗華の話を聞いているうちに、だんだんと顔が赤くなっていく。その研一の様子を麗華は心の中で楽しみながら、さらに話を続ける。
「ううん、別に恥ずかしいことじゃないわ。人間、特に子供は色々な事で、まわりの人の気を引かせたいものなんだから。例えば、テストの点が良かった時は褒められたい、体の具合が悪い時は心配してもらいたい、そして・・・悪い事をした時は叱ってほしいなんてね。」
「・・・・。」
依然として黙りこんでいる研一。すると麗華はここで本題に入るべくこんなことを言い出した。
「だからこうしましょう。今後、もし研一くんがそういう気持ちになったら、まわりくどい事なんかしないで直接おばさんに相談しなさい。そうすれば、おばさんはいつでも研一くんの力になってあげる。だから二度と郁代お母さんを困らせるようなことをしちゃダメ。特に、わざとそんなことするなんてのはもってのほかなんだから。ねっ!」
「・・・はい。」
ようやくここで麗華に対して研一は小声で返事をする。
「はい!これでおばさんからのお小言は終わり。後は研一くんが郁代に一言ごめんなさいって謝れば、間違いなく許してもらえてめでたしめでたしなんだけど・・・そうなると、わざとそんな事をした意味がなくなっちゃうわよね?」
「・・・・!」
麗華の意味深な言葉に研一の体は急にガチガチとなり、額から冷や汗がスーッと流れる。
「という訳で、今からおばさんが研一くんのお望みどおりのことをしてあげる。何をするかは当然わかってるわよね?」
そう言うと麗華は研一に向かって手を差し出すと、研一は思わず後ずさりをしてしまう。
「どうしたの?やっぱり怖くなっちゃった?まあ、おばさんも別に無理にとは言わないわ。比奈とは違って研一くんはこんなことしなくても心から反省のできる子だからね。ウフフフ。」
研一の怯える姿を見てついつい笑ってしまう麗華。しかしここで、研一は唇をギュッと噛みしめ、目を見開き、気合の入った表情をすると、そのままスタスタと麗華に近づき、差し出された麗華の手を自分からしっかりと握った。
「あらまあ・・・。」
言葉はない。研一に強く握られた手から研一の思いが麗華に伝わっていく。
(フフッ、やっぱり研一くんは根っからのいい子なのよね・・・)
そうしみじみと感じながら麗華は研一の手をゆっくりと引く。すると、研一は即座に靴を脱ぎ、玄関を上がって麗華と同じフロアに立つ。
「さっ、もう後戻りはできないわよ。これから研一くんをもっともっといい子にしてあげるんだから。あ、言っておくけどこの前と同じだろうなんて考えていたらそれは大きな間違いよ。その気がなかったのならまだしも、わざと悪い事をしてお母さんを困らせるような子には、それがどれだけいけない事なのかをたーっぷりと時間をかけて教えてあげるわ。その、お・し・り・に・ね。」
麗華はそう研一に忠告した瞬間、笑顔がすっかり消え、研一の手をしっかりと握ったまま家の奥へと向かっていく。研一はズルズルと引かれる形で麗華の後をついていき、
(僕、どうなっちゃうんだろう・・・)
と思いながら、だんだんと恐怖心が膨らんでいくのであった。
バチーン!バチーン!バシーン!
「うわぁぁーん!あぁぁーん!ごめんなさーい!」
ひっそりとした6畳の和室。その中央で正座をする麗華。そしてさらにその麗華の膝の上にデニムパンツとブリーフを足に絡ませて裸のお尻をさらしている研一がいた。
ゆっくりとした間隔で振り下ろされる麗華の平手、その度にひしゃげる柔らかいお尻、さらには大きく乾いた音と共に響きわたる研一の泣き叫び声がより一層、この前以上に厳しいお尻叩きのお仕置きであることを物語っていた。
「こらっ、いくら泣いたってまだまだ許さないわよ!始まってからたったの5分しか経ってないわ。時間はたっぷりあることだし、こんな悪い子のお尻はもっともっと叩いてあげないとね!」
「・・・・!!」
あのいつもは優しい麗華から立て続けに厳しい叱責を受け、震える研一。前回の電光石火のお尻叩きとは違い、およそ5秒に1回ほどの緩いペースであるものの、渾身の力が1回1回にこめられているため、すでにお尻は遠くから見てもわかるほど真っ赤に染まっていた。麗華はここまで60回近く研一のお尻を叩いている。娘の比奈にさえもこれだけのお仕置きをしたことはない。しかし、それでも麗華の手は止まらない。
バシーン!バシーン!バチーン!
「びぇぇぇーん!もうしません!もうしませーん!」
一体いつまで叩かれるのだろうか?そんな先が見えないお仕置きに研一は嗚咽しながらも、畳に爪をたてて、必死で痛みを堪え続けるのであった。
その後結局、お仕置き開始から10分を過ぎたところで麗華の手はようやく止まり、後はただひたすら100回を超える平手打ちを浴びて大きく腫れあがった研一のお尻は、これでもかというくらい撫でまわされるのであった。
「研一くん。今日は本当にすっごくすっごく頑張ったよ、さすが男の子。でも、ちょっとおばさんも脅かしすぎちゃったかな?ごめんね。」
「ううん。僕が悪い子だからいけないんだもん・・・ごめんなさい、麗華おばさん。」
「・・・ありがとう。でも、その言葉は家に帰ったらお母さんに言ってあげてね。」
「うん!!」
二人の間でこんな言葉が交わされながら・・・。
あれから、比奈と鉢合わせる前になんとか速水家を後にした研一は、麗華からもらった沢山のお菓子を手に、お尻をズキズキさせながら家路へ急ぐ。そして数十分後に家へ着くと、研一にもうひとつのサプライズが待っていた・・・。
「まあまあ、こんなに真っ赤になって・・・まるで小猿ちゃんみたい。」
「・・・ごめんなさい、お母さん。」
郁代は研一が帰ってきてすぐにあの和室へと連れていくと、その場に正座をしてから即座に研一を膝の上にうつぶせにし、動揺する研一に構うことなくデニムパンツとブリーフを膝上まで脱がす。先程まで麗華に叩かれていた裸のお尻をまじまじと見て郁代はそう一言言うと、研一は前日までの態度を一変し、素直に謝った。
「もう、本当にしょうがない子なんだから・・・フフフフフ。」
さらに郁代は一言付け加えると、やれやれといった表情で研一の真っ赤なお尻を優しくゆっくりと丁寧に撫でる。研一が帰ってくる前に電話で麗華から少しやりすぎたと平謝りしてきたことを思い出しながら・・・。
その間研一は、少し顔を赤らめながら共にピンク系の着物とエプロンに包まれた郁代の膝の上でじっと動かず、油断すると眠ってしまうくらい気持ちがよくなっていき、少しずつお尻の痛みが薄れていくように感じていった。
「研一。麗華おばさんは厳しいわねぇ、こんなにお尻を叩くなんて・・・こんなことする麗華おばさんなんか大嫌いになっちゃったかな?」
しばらくして、郁代はいきなり研一にこんな質問をする。すると、研一は大きく何度も首を横に振った。
「じゃあ・・・大好き?比奈ちゃんと同じくらい。」
「・・・うん。」
次の問いかけには、研一は顔をさらに赤くしながらもコクリとうなずいた。そんな研一を見て、ホッとする郁代。今回のことを麗華に任せてよかったという安堵感が見て取れる。
(さてと、明日は薬局で腫れあがったお尻によく効くお薬を買わないとね。どうやら、これからもよく使うことになりそうだし・・・)
こうして、夕食を食べるのも忘れて小一時間ほど、母子の甘い時間がゆったりと過ぎていくのだった。
そしてそれからというもの、郁代が親友の手により赤く染められた我が子のお尻を優しく撫でたり薬を塗ったりしている光景が、時折見られるようになったとの事である。