ペンペン会C(25thペンペン会:授業参観日編)


風も冷たくなり、だんだんと秋の気配が感じられるようになってきた。
夏休みもすでに終わり、学校では休み前と同じように子供達が頑張って勉強に取り組んでいる。ところが、涼平は平日にも関わらず、小学校ではなく自宅の1階にある現在海外転勤中の母親の部屋のベッドで横になりながら雑誌を読んでいた。すでに時間も午後3時になろうとしているのにまだブルーのパジャマ姿のまま、いやそれよりも学校では授業が行なわれているのになぜ家にいるのだろうか?
「・・・もう学校は終ったかな?」
涼平は壁時計を見ながらそうつぶやくと雑誌を枕もとに置く。
「夕御飯はまだ早いし、少しだけ寝よっかな。」
そう言いながら、涼平はゆっくりと目を閉じる。
それから数分がたち、ようやく眠りかけたその時、
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴り、涼平はその音でバッと起きてしまう。
「・・・うーん、何だろう?回覧版かな。」
寝起きで足取りが少しヨタヨタしながらも玄関の方へ向かうと、
「・・・どなたですか?」
玄関の引き戸ごしに涼平が声をかける。
「あ、中川ですけど・・・ってその声は涼平くんね。涼平くん、私よわ・た・し。」
「え?もしかして久子おばさん!」
久子の声を聞き、眠気が一気に覚めた涼平は急いで鍵をあけ、ガラガラと引き戸を開ける。
「あー、やっぱり涼平くんだったー。こんにちは。」
「こ、こんにちは・・・。」
久子は涼平と目を合わせて挨拶すると、涼平はなんだか照れ臭そうに少しモジモジしながら挨拶を返す。
薄茶色に染められて肩に少しかかるくらいの長い髪。
ベージュの長袖ジャケットにスカート、インナーには胸元の開いたピンクの長袖Yシャツ、さらにはストッキングに黒のハイヒール。そしてお化粧もバッチリ整えていて、その風貌からは涼平の親友で同級生の武彦を一人息子に持つ母親にはとても見えない綺麗な女性である。
「ところで大丈夫、涼平くん?今日、学校をお休みしたって聞いたから・・・。」
「え?」
「ほら、今日は授業参観日だっだでしょ。だからこんな気合の入った格好して学校行ったんだけど、そしたら教室に涼平くんの姿がないじゃない。おかしいなと思って授業が終った後、武彦に聞いたら38度の高熱で寝込んでるって言うから、おばさんすっごく心配になって急いでここに来たわけ。だって涼平くんは軟弱な武彦と違ってめったに学校を休まないからね。」
「そ、そうだったんだ・・・。」
「病院には行ってきたの?」
「び、病院?病院には・・・行って・・・ないよ。少しふらっとするけど家には薬もあるし・・・。」
「そっか・・・。ところで、お父さんはどうやらお仕事みたいね。心配してなかった?」
「うん・・・昨日から出張であと1週間は帰ってこれないみたい。い、一応パパには電話で1日休めば大丈夫って言ってある・・・けど。」
「そう、でももう心配はいらないわ。これから涼平くんのためにすぐに元気になれる食事を作ってあげるからね。」
久子はそう言うと、自分の手に持っている買い物袋を涼平の目の前に差し出した。そこには大根、かぼちゃ、そして果物などが入っているのが見受けられる。
「そ、そ、そんなに気を使わなくても・・・。ぼ、僕、一人で大丈夫だから・・・。」
「何言ってるの!おばさんと涼平くんの仲じゃない。それに武彦やうちのパパにはちゃんと事情を話して夕食は宅配ピザを手配してあるし、多少遅く帰っても平気なんだから。」
「は、はぁ・・・。」
涼平はこう生返事をする。久子に対して申し訳ない心で一杯なのは当然ではあるが、なぜかそれ以上に態度にぎこちなさが感じとれる。しかし、そんな涼平をよそに久子は涼平の家にあがりこんでスタスタと歩き出した。
「おっ、ここは確か涼平くんのお母さんの部屋ね。そういえばここににくるのは今年の正月にお母さんが帰国したとき以来かな?」
台所に向かう途中、涼平の母親の部屋に目が止まって立ち止まり、中をまじまじと見渡す久子。
「じゃあ、とりあえずここに荷物を置かせてもらおうかなって・・・あーっ、涼平くん!」
久子はその部屋に入ったとたんに、いきなり涼平に向かって叫ぶ。
「わっ!び、びっくりした・・・。」
「びっくりしたじゃないでしょ。涼平くん、今日は自分の部屋じゃなくてここで寝てたんでしょ?ベッドの上のお布団が使ってないはずのお部屋なのに少し乱れているし。」
「・・・う、うん。」
「それだったら枕もとに置いてあるあの本は何?病人なんだから安静にしてなきゃだめよ!」
「ご、ごめんなさい・・・。」
「・・・もう、しょうがない子ねえ。まあ、うちの武彦も同じこと何回かやらかしたことあるからじっとしてらんない気持ちは少しわかるんだけどね。でも、これからおばさんが食事を作っている間はちゃんとおとなしくしてるのよ・・・あ、ちょうどよかった。このハンガーとエプロン借りるわね。」
ここで久子は着ていたジャケットを脱ぐと、部屋の脇に掛けてあったハンガーとエプロンを取り出し、そのハンガーにジャケットを掛けて元の場所に戻した後、山吹色をした花柄模様のエプロンをさっと身につける。
「うん、これで準備OK。いいこと涼平くん、もう一度言うけどいい子になって待ってるのよ。もし言う事をきかなかったら・・・お仕置きよ!」
「・・・・!!」
お仕置きという言葉が久子の口から出た瞬間、涼平は直立不動になり、額から冷や汗が流れる。
そんな涼平の様子に久子は、
「フフッ、冗談よ。さすがにおばさんも病人にはお仕置きしないわ。」
と、笑みを浮かべながら言うと、涼平は安心したのかフーッと大きく息を吐いた。すると、
「でも、この件は次の「ペンペン会」で涼平くんのいい反省材料にはなりそうね。それじゃ、おばさん台所へ行ってるから。」
久子はさりげなくこう付け加えると機嫌よく部屋を出て行った。しかし、涼平の方は心なしか体を震わせていた。その原因は、久子が話題にした「ペンペン会」である。
「ペンペン会」・・・簡単に説明すれば久子と涼平だけの秘密の会。発端は、久子が子供の頃から心に秘めていたお仕置き願望。箱入り娘として育てられたために実兄たちは何度も受け、自分は一度も受けることがなかったお尻ペンペンのお仕置き願望が運命的?に息子の親友である涼平にばれてしまい、その願望を満たすべく久子が涼平を巻込む形で結成された会である。
そして「ペンペン会」の活動についてはいくつかの(久子により)決められたルールのもとで行なわれており、要は@涼平が久子のお尻をペンペンするA久子が涼平のお尻をペンペンするの二通りのみである。
まだ小学5年生(結成当時は4年生)で体の小さい涼平が大人の女性である久子のお尻を叩くのは極めて不自然であるが、久子にとってはもはや年齢の壁は関係なしに、全力で叩いてくれればいいという思いで涼平からのお尻ペンペンをこれまで何度も受け、多少物足りないながらも心地よい痛みと赤くなった自分のお尻を見て喜びを感じていた。
しかし、その一方でお返しとばかりに全くお仕置き願望がなく、実の親にさえお仕置きされたことのなかった涼平にとっては地獄に等しく、久子の膝の上に差し出された涼平の小さくて可愛いお尻は数分後には色濃く真っ赤に染まって腫れあがるほど容赦なく叩かれてしまうのであった。
最初の頃、お仕置きされる毎に涼平は何度か「ペンペン会」をやめたいと久子に言おうと決心するのだが、久子が涼平に叩かれたお尻をさするときに見せる無邪気な笑顔。そして何よりお仕置き後、久子が涼平の真っ赤なお尻を優しくなでたり、冷やしたり、薬を塗ったりするなど母親を感じさせるくらいの愛情に触れるたびにその決心は消えては浮かび浮かんでは消え、そして今では完全に消えてしまい現在に至っていた。
とはいえ、涼平にとって「ペンペン会」=恐怖という思いだけは消えることはなく、この言葉が出ると震えがきてしまうのはごく自然と言ってもいい。
「・・・おとなしく寝てよう。」
涼平はやっと落ち着きを取り戻すと、素直に久子の言うことを聞き、しばらくベッドで横になるのであった。





ボーン、ボーン、ボーン、ボーン
ダイニングキッチンに備え付けの柱時計が午後4時を知らせる。
「ふぅ、これでできあがり。思ったより早かったわ。」
久子は夕食の準備が終ったのか、一息ついて髪をかきあげる仕草をする。
かぼちゃのポタージュに大根サラダ、それに冷蔵庫には桃やぶどうが冷やされており、食欲のない病人でも美味しく頂けそうなメニューの数々である。
「うーん。夕食にはやっぱり早いけど、涼平くんがお昼を食べたのがもし早ければ問題ないかな。ちょっと涼平くんに聞いてこよっと。」
久子は涼平がいる部屋に向かうべく台所から出ようとする。
「あら?」
すると戸棚の方に自然と目がいき、久子は薬箱を見つける。
「そうそう、ちゃんとお薬は飲まないとね。ここに入ってるのかな?それともあっちの部屋にあるのかな?」
薬箱を取り出していそいそと薬を探していると、久子はそこから一つの小さな箱を取り出した。
「「熱・風邪に効く子供用パスロン」・・・これね。あとは胃薬、漢方薬、赤チン・・・風邪薬らしきものは他にはないわね。」
そう言いながら久子は薬箱をそっと戻すと、その薬を持って涼平のところへ向かった。
「涼平くん、寝てる?」
久子はドアが開けっ放しになってる涼平の母親の部屋をそっと覗き込む。
「あ、久子おばさん。」
「なんだ起きてたの。」
「うん、あんまり眠れなくて・・・それにいい匂いがするし。」
「それそれ。夕食の準備が整ったんだけど、まだ時間が早いからどうしようかなって思って。」
「え?僕は別に今食べてもいいよ。お腹すいてきたし。」
「そう。じゃあ、すぐに食べられるようにするからもう少し待っててね。あ、そうだ、もう一つ聞きたいんだけど、涼平くんが今日飲んだ薬はこれかな?」
久子はそう言いながら、持ってきた薬を涼平に見せる。
「へ?あ、あの・・・そ、そうだね。それだと思うよ。うん。」
「フフフ、何言ってるの。自分がさっき飲んた薬でしょ、覚えてないの?」
「あ、そうだ。それだよ、それ。うちにはそれしか風邪薬ないから。」
涼平はこう言い直しながらも表情になぜか焦りの色が見える。
「えっと、食後に1回一粒だって。ちゃんと忘れずに飲まなきゃね。」
「・・・うん。」
「ならこれは食卓に持っていくわね。そうね、あと10分ほどしたらいらっしゃい。」
「・・・・。」
「・・・涼平くん?」
「・・・あ!は、はい、わかったよ、久子おばさん!」
さらにギクシャクした涼平の返事を聞き、久子は部屋を後にした。
「あの子・・・何か様子が変よね。熱のせいかしら?」
再び台所へ着き、先ほどの涼平の様子に首をかしげる久子。そして、持っていた薬をテーブルの上に置こうとしたその時、久子はある事実にふと気付く。
「この薬・・・まだ誰も飲んでないわ。」
まじまじと薬を見る久子。なんと封が開いていなかったのだ。
久子は考える。この薬を飲んでないのであれば他の薬を飲んだ、いや、涼平は家にはこの薬しかないと言っていた。となると、涼平は嘘をついていることになる。しかし、それなら嘘をつく理由は何なのか?久子は腕組みをしながらさらに考える。すると、これらの事実と涼平の様子を組み合わせるとある一つの答えにたどり着く。そう、誰もが疑いの目で見れば考えつくあの答えに・・・。
そして10分後・・・ダイニングキッチンに涼平がやってきた。そこにはテーブルの上には二人分の食事が並べられ準備はすでに整っている。しかし、久子はなぜかそのテーブルを背にして、出入口付近に立ち止まっている涼平を椅子に座りながら腕組みをして真顔でじっと見つめていた。
「ど、どうしたの?久子おばさん。」
涼平はさっきまでとは明らかに様子が違う久子に少し戸惑いを見せる。すると、
「ねえ、涼平くん!」
「は、は、はい!」
ここで久子は急に笑顔になって涼平に大きな声で話し掛ける。さらに戸惑う涼平。
「あのねー。おばさんも何だか熱っぽくなっちゃったみたいなの。」
「え、えー!ほ、本当に?」
「そうなのよ。情けないわよね、でもそんなに大したことないと思うから。」
「だ、大丈夫?」
「うん。だからね、一応調べてみないと何もわからないから・・・涼平くん、お願いがあるの。」
「な、何?」
「体温計・・・貸してくれるかな?」
「うん。それならすぐ持ってくるよ、ちょっと待ってて。」
涼平はそう言うと急いで体温計を探しに廊下へ飛び出した。
それから約3分ほどたっただろうか。涼平は1階、2階を往復して、再び久子の元へ戻ってきた。おそらく各部屋を探し回ったのだろう。すると思いだしたかのように一目散に戸棚にある薬箱を踏み台に乗って取り出した。そしてその中をガサゴソと探していると、
「あ、あったー。」
ようやく薬箱の中から体温計を発見し、喜ぶ涼平。薬箱を床におき、さっそうと久子の横に立ちその体温計を渡す。
「ありがとう、涼平くん。でもね、おばさん涼平くんに謝りたいことがあるの。」
「謝りたいこと?」
「そっ。実はね、おばさん本当は全然熱っぽくないの。」
「い、いーっ!そうなの?で、でもそれならよかったね、僕の風邪がうつったんじゃないから・・・。」
「そうね。でも、せっかく涼平くんが一生懸命探してくれたんだからこれはきちんと使わないといけないわ・・・こうやってね。」
グイッ
「う、うわっ!」
久子はいきなり涼平の腕を引張ると、自分の膝の上にうつ伏せにさせた。そして涼平が驚いてるうちにあっという間にパジャマのズボンとブリーフを膝上あたりまでずり下げ、お尻をむき出しにする。
「ひ、久子おばさんっ!」
涼平は何がなんだかわからぬまま久子の膝の上で固まっていると、次に久子は体温計をケースから素早く取り出し、
「いい?少しじっとしてるのよ。」
「えっ?」
プスッ
「ぴぃっ!!」
久子は何と体温計を涼平のお尻の穴に差し込んだ。いきなりのことで涼平はびっくりして空中で手足をバタバタし、声にならない声をあげる。
「こら、じっとしてなさいって言ったでしょ!」
涼平を一喝し、左手を涼平の背中をしっかりと押さえる久子。涼平は再び動かなくなる、いや、動けなくなる。体温計が差し込まれている涼平のお尻はまるで小さな子犬のしっぽを連想させるが、この雰囲気の中誰一人そんなことに触れることなく時間が過ぎていく。そして、
ピピッ、ピピッ、ピピッ
体温計からアラームが鳴ると、久子はすぐさまスポッと体温計を涼平のお尻から抜き出し、数値を確認する。
「36度4分・・・。」
久子のこの一言を聞き、涼平の顔がだんだんと青ざめていくのが見て取れる。
「お口や脇で測るのとは多少誤差があるけど、それでも2度近くも誤差は発生しないわ。確か涼平くんは38度の熱でお休みしたって聞いてたんだけど・・・お薬が効いたのかしら?いや、お薬は全く飲んでないはずよねぇー。」
ドクン、ドクン
涼平の顔は完全に青ざめ、心臓がバクバクして動揺がさらに強くなっていくのが久子の膝を通して伝わっていく。
「一応、細工できないようにこうやって赤ん坊みたいにお熱を測らせてもらったけど・・・一体どういうことなのかしら?仮病を使ってまで学校を休んだりして!」
ドッキーン!
久子の口から「仮病」の言葉が飛び出し、完全にばれたと確信する涼平。しかし依然として何もしゃべろうとしない。
「ここに来てから何か様子がおかしいなと思ったけど、こういうことだったのね。言いなさい、涼平くん!どうしてこんなことをしたの?」
「・・・・。」
「涼平くん!!」
「・・・・。」
久子は何度も問いつめるが涼平は頑なに理由を話そうとしない。久子の膝の上でお尻丸出しのまま亀のように縮こまっており、このままいくと「言わないとお尻ペンペンよ!」と久子に言いたくさせるような雰囲気になりそうであり、涼平もまたその覚悟はできているようだ。
しかし、久子はフーッとひとつ大きく息を吐き、涼平を問いつめた時とうってかわって和やかな表情になり、そっと涼平に話しかける。
「・・・授業参観ね。」
「!!」
久子のこの言葉に涼平の表情が一変する。
「色々考えてみたんだけど、そういえば涼平くんのお父さんとお母さんって、お仕事の都合で一度も授業参観日には顔を出したことなかったわよね。武彦と涼平くんはずっと同じクラスだったし、一応おばさんは全部参加してたおかげで記憶が辛うじて残ってたわ。」
「・・・・。」
「そうなると、「親が来てくれなくて嫌だから仮病を使ってズル休みをした」という理由に繋がるんだけど、ここで疑問なのは、それならなぜ今まで同じことをしなかったのか?なぜ今日なのか?」
「・・・・。」
「・・・もうここまできたら隠す必要ないんじゃないかな?正直におばさんに全部話そうよ、ねっ!」
ここで久子は笑顔になり、涼平に再度お願いする。そして・・・
「・・・クイズ。」
「クイズ?」
「久子おばさんも今日やったでしょ?親子で協力して問題に答える学習クイズ・・・。」
「あ、そうそう。確かにやったわねー。結構難しいのもあって武彦の足引っ張っちゃったけど。」
「それね、今年の春の授業参観日に初めてやったんだけど、僕だけ親が来なかったから先生と一緒にやったんだ。でも先生は答え知ってるから一番にできちゃって全然面白くないし・・・その間まわりをみてるとワイワイみんなが楽しくやってるのを見てたら、何だか寂しくなって・・・。それで結局盛り上がったもんだから、先生が次回もやるって言ったときに、また次も同じように寂しい気持ちになると思うと嫌になって・・・。今までみたいに後ろで見てればいいのに・・・親が来ない僕を目立たせるようなことしなけりゃいいのに・・・ううっ。」
「・・・・。」
ここまで言うと、涼平はポロポロと目から涙をこぼし、そんな姿を見て久子は絶句する。しっかりしていると思っても11歳の小学5年生、親にまだまだ甘えたいという涼平の思いがひしひしと伝わってくる。
「うぇ、うぇーん、えーん・・・ぐすんぐすん。」
ついには声をあげて泣き出した。しかし、何とか泣き止もうと必死で涙をこらえ、声を殺す。するとここで、
「・・・わかったわ。だからもう自分を責めないの。」
久子は優しい声で涼平をなぐさめ、涼平の頭ならぬお尻をゆっくりとなで始める。
「・・・ひ、久子おばさん。」
「そのことは忙しいお父さんやお母さんには相談できなかったんでしょ?涼平くんは優しい子だから・・・
でもそれだったら何でおばさんに言ってくれないの?涼平くんにはおばさんがついているじゃない。」
「でも・・・。」
「でももイモもありません。そう言ってくれればおばさんが涼平くんの1日ママになってあげることがたんだからね。」
「久子おばさんが・・・僕のママ。」
「そうよ。まあ「ペンペン会」の中で母親役には何度もなってるけど、それよりもより深い関係だって思っていいわ。来年もまた授業参観日はあるし、6年生はクラスも先生も替わらないしね。その時ももちろんママになってあげる。」
「けど・・・武彦くんに悪いんじゃ。」
「いいのいいの、2人より3人の方が楽しいってあの子も思うわよ。それとも、おばさんがママじゃ嫌なの?」
「そ、そ、そんなことないよ。僕、すごく嬉しいもん。」
「それならよかった。じゃあ、おばさんと約束して。もう二度とこんな事はしないって。」
「うん!絶対しない!約束する!」
涼平は大きな声で返事をし、久子と固い約束を交わすのであった。お互い笑顔を振りまく二人。そして・・・
「よーし!そうと決まったら、ここで話を整理しましょう。」
「・・・・?」
突然、久子はこう言い放つと涼平は理解できずに目を白黒させる。そして、この時に久子の涼平のお尻をなでる手がピタリと止まり、表情もだんだん険しくなっていく。
「要するにね、授業参観日におばさんが涼平くんのママになるということは・・・今日の涼平くんのママは自動的におばさんってことになるわよね。これが何を意味するのかわかる?」
「へ?」
「つ・ま・り、授業参観日を楽しみにしてた母親が教室に入ると、なんと我が子の姿が1人見当たらない。なぜならば・・・仮病を使ってズル休みをしていたから!」
「・・・!!!」
この時点で全てを察した涼平は再び体が震えだし、身をちぢこませる。さらに久子の話は続く。
「だから、そんな事をする悪い子には母親としてたっぷりとお仕置きしてあげなければいけないわ!「ペンペン会」とは一切関係なくね!!」
ここでついに久子は怒りに満ちた表情になり、声を荒げる。
「ひぃっ!ご、ごめんなさいっ!!」
「ママの知らないところでこんな勝手なことして・・・どれだけ心配したと思ってるの!今日はいくら謝ったって絶対許しませんからね!!覚悟なさいっ、涼平!!!」
涼平の言葉を完全に無視して久子は右手を大きく振り上げる。そして、仮病を使って学校をズル休みした悪い子に対し、久子は母親の使命を果たすべく、辛く厳しいお尻ペンペンのお仕置きを執行するのであった。





バシーン!バチーン!バチィーン!バシィーン!バシィィーン!
「うわあぁぁぁーん!ごめんなさーい!!もうしないからぁ!!!」
「だめです!いくら泣いても許さないってさっきから言ってるでしょ!!」
バシーン!ベチーン!バチィーン!ベチィーン!バチィィーン!
「うえぇぇぇーん!びえぇぇぇーん!!痛いよぉ、お尻痛いよぉー!!!」
「痛いのは当たり前です!この悪い子っ、悪い子っ、悪い子っ!!」
あれから休むことなく続くお尻ペンペンのお仕置き。もうどれくらい叩かれただろうか?どんなに涼平が謝っても、まだまだ久子の怒りは収まりそうにない。
これまでの「ペンペン会」でのお仕置きとは異なり、仮想「悪い子」ではなく、正真正銘の「悪い子」になった子供をお尻ペンペンするという初めての純粋なお仕置き・・・。「母親役」ではない「母親」としての久子の気持ちが込められている強烈な平手打ちが、何度も何度も涼平のお尻を襲い、痛々しいほどに真っ赤に染めあげていく。
バシーン!バシーン!バチィーン!バシィーン!ベシィィーン!
バチーン!バチーン!バシィーン!バチィーン!バシィィーン!
「うぎぃぃー!!もう許してぇー!!びえぇぇぇーん、うぇぇーん!!!」
「嘘ついた上にママをこんなに心配させてっ!!もっともっと真っ赤なお尻にしてやるからねっ!!!」
こうして、部屋の中にて響きわたる乾いた音、そして怒声と泣き声。すべてが交錯し、世にも恐ろしいお仕置き風景が描かれたのであった・・・。
そしてしばらくすると、いつ終わるかわからなかったあのお仕置きはいつのまにかなりを潜め、涼平は久子の胸にしっかりと抱かれていた。久子はいつもの優しくにこやかな表情に戻り、ついさっきまで叩きのめしていた涼平のお尻をゆっくりと丁寧になでている。香水の香りがいい匂いで心地よいのか、だんだん目がうつろになっていく涼平。そして、久子が小声で涼平に一言二言囁く間に、そのまま目を閉じるのだった。





チュン、チュン、チュン
スズメの鳴き声が聞こえ、太陽の光が差し込んできた。
「う、うーん・・・。」
涼平はその鳴き声と光で目が覚める。どうやらそのまま朝まで眠ってしまったらしい。
「あれ・・・ここは?」
気がつくと涼平は母親の部屋のベッドにいた。おそらく久子が運んでくれたのであろう。
「僕、あれから寝ちゃったんだ・・・。」
そう言いながら涼平は少し寝返りをうつと、
ズッキーン
「痛ったぁーい!!」
丸出しのお尻が布団に擦れて激痛が走り、思わず両手でお尻をさする。すると、そこには今でこそぬるくなっているがおそらくよく冷えてあったであろうタオルがかぶさっており、お尻自体には薬が塗られていた。
「あ、久子おばさんは?」
慎重にベッドからおりて、お尻を出したままでおそるおそる歩き出す。そして何とかダイニングキッチンまでたどり着くと、テーブルの上には一枚の書置きがあった。
[涼平くんへ 起きたら夕食のポタージュはもう一度温めてから食べてね。それにサラダと果物は冷蔵庫にあるし、朝食はパンを買っておいたから夕食の残りと一緒に食べてね。それじゃ、おやすみなさい。 久子おばさんより]
「久子おばさん・・・。」
久子の心のこもった書置きを読み、涼平は元気をもらったかのように晴れ晴れとした表情になる。しかし、
グー、キュルルル
「お腹減った・・・。」
結果的に夕食を食べられなかった涼平は極度の空腹に見舞われ、涼平はすぐに食事の準備を始めた。お尻を痛くしないようにゆっくりと・・・。
「あー、おいしかった。ごちそうさまー。」
そして、立ち食いソバならぬ立ち食い朝食を堪能した涼平は片付けを後回しにして風呂場に向かうと、涼平は早速裸になり、シャワーを軽く浴びる。
「ひゃー、痛いー!」
肌にべたついた汗を流して気持ちいいのとお湯がお尻にしみて痛い感覚を同時に受けながらもご機嫌な涼平。すると、鏡に映った自分のお尻に対し、
「・・・すっごい真っ赤だ!今までで最高かも・・・へへへ。」
半ば驚き、半ば感心するかのように感想をつぶやく涼平。目を覆いたくなるほど無残に真っ赤に腫れ、二つの山のてっぺんにはそれぞれ赤黒いあざができんばかりであった。しかし、涼平はそんなひどい目にあいながらもここで思わず笑い出してしまう。おそらく魔がさしたとはいえ、生まれてから一番悪い子になったであろう自分を久子が親身になってお仕置きしてくれたことに子供ながらに心から感謝しているからであろう。そして、そのお尻を見ながら涼平は固く誓う。もう二度とあんな事はしない・・・と。
それから1時間が過ぎ、涼平はベッドの上でずっとうつ伏せになっている。衣服は昨日から着ているパジャマのままであり、あまり動くと激痛が走るせいか別の服に着替える余裕がなかったようだ。相変わらずお尻は出しっぱなしで、その上には冷やしたタオルが置かれている。そして、今日明日は幸運にも土日で学校が休みのため、昨日と同じく何事もなかったかのように雑誌を読みふけっていた。
昨日の嵐が去ってようやく訪れた静けさ・・・しかし、神様はさらに涼平に試練を与えようとしていた・・・。
「わっ!」
「うひゃっ!!」
あけっぱなしの部屋のドア方面から聞こえる突然の大声にびっくりする涼平。なんとそこには、
「久子おばさん!」
昨日のおめかし姿とは違い、クリーム色をしたプリント柄の長袖Tシャツにブラウンのスカート、さらにはライトグリーンのエプロンを着け、お化粧もほどほどの普段よく目にする久子の姿があった。
「おはよう、涼平くん。心配になって来てみたけれど、その様子だとお尻はまだまだ痛むみたいね。あ、そうそう、ダメよ玄関の鍵はちゃんとかけないと。戸が少し開いていたからおばさん黙って入ってきたけど、もし泥棒だったら大変よ。」
「あ、そっか・・・ごめんなさい。僕、昨日あれからずっと寝ちゃってさっき起きたばっかりだったから・・・。」
「え?ということは、夕食を食べずに朝まで寝ちゃったって事?それなら鍵をかけていないのも納得できるけど、それだとお腹すいたでしょう?」
「うん、さっき食べた。すっごく美味しかったよ。」
「フフッ、そういってもらえると嬉しいわ。だから、ほら・・・。」
久子はにっこりしながら、手に持っている買い物袋をかかげる。
「今日のお昼と夕食もおばさんに任せておいてね。腕によりをかけて美味しいものを作ってあげるから。」
「え?また、そんな、め、迷惑なんじゃ・・・。」
「いいのいいの、おばさんがそうしたんだから。それに武彦はパパとお出掛けに行っちゃったし、本当はおばさんも一緒に行く予定だったけど、涼平くんがまだ具合が悪そうだから様子を見に行きたいって言ったら、あの子ったら快く見送ってくれたわ。」
「へ?」
「言っておくけど、武彦たちには涼平くんが風邪ひいて熱出してるってことになってるからね。もちろん、先生や涼平くんのお父さんやお母さんにも今回のことは内緒よ。おばさんと涼平くんだけの秘密だからね。わかった?」
「・・・・。」
「お返事は?」
「うん・・・ありがとう。」
久子の心遣いに対し、涼平はうれしそうに返事をする。そして、その返事を聞くとすぐに久子は支度を始めるのだった。





「う・・・うーん。」
「あら、起きちゃった?もっと寝てても良かったのに。」
「あ、あれ?ぼ、僕、寝てたの?」
「そうよ。昨日と同じで、おばさんのお膝の上でグッスリとね、フフッ。」
「エヘヘヘ・・・。」
時刻は午後2時半になろうとしていた。ダイニングキッチンでお昼を食べて少しおしゃべりをした後、久子は涼平を呼ぶと、椅子に座っている自分の膝の上に、真っ赤に腫れあがっている涼平のお尻を乗せ、早く良くなるようにとお尻をなでてあげた。ゆっくりと、優しく、丁寧に・・・あまりの気持ち良さであったため、涼平はついつい眠ってしまったようだ。
「お尻どう?少しは良くなった?」
「うん・・・さっきよりは痛くないかも?それにもうズボンもはけそうだし・・・これも久子おばさんのおかげかな。」
「アハハハ。こんな真っ赤なお尻にした張本人はおばさんなのにね。」
「へへへ。でも、悪い子になったのは僕だから・・・。」
「でも、今はいい子でしょ?ウフフフ。」
「エヘヘヘ・・・。」
昨日あんなに厳しいお仕置きをした、された関係には見えないほど和やかな雰囲気の中で談笑する久子と涼平。
そんな中、ここで久子は涼平にとって思いもよらない事を言い出してしまう。そう、あの言葉を・・・。
「ねえ、涼平くん。言いにくいんだけど、ひとつお願いがあるの。」
「え?お願い?」
「あのね、おばさんのお尻・・・ペンペンしてほしいの。」
「はい?今なんて?」
「だから・・・これから、おばさんにお尻ペンペンしてほしいって言ってるの。」
「え!え!!えーっ!!!」
あまりに驚き、久子の膝の上で飛び跳ねてしまう涼平。
「な、な、な、何で?」
「だって、昨日おばさんは涼平くんにたっぷりとお尻ペンペンしてあげたでしょ。」
「で、でも、おばさん言ってたじゃない。昨日のお仕置きは「ペンペン会」とは関係ないって。」
「そうね・・・確かに言ったわ。でもね、涼平くんの痛々しくて可愛らしいこの小さなお尻を見てたらね・・・何だかおばさんのお尻がムズムズしてきて、どうにもならない状態になりそうなのよ。おばさんも早く涼平くんに叩かれたいってね。」
「そ、そんな・・・僕、嫌だよ、今から「ペンペン会」で久子おばさんのお尻を叩くなんて・・・。悪い子は僕だけだったのに・・・。」
「涼平くん、この通り!お願い!そんな優しい涼平くんにしか頼めないことだから、ねっ!ねっ!」
ついには頭を下げてまでお願いする久子。頑なに拒否し続ける涼平であったが、昨日今日と一生懸命に自分のお世話をしてくれた久子の頼みに対し、もはや背くことができなくなっていた。そしてついに、
「うん・・・いいよ。」
「ありがとう、涼平くん!」
涼平が承諾すると、ここで久子は思わず涼平のお尻を荒っぽくなでてしまい喜びを表現してしまう。
「痛っちー!!」
「あ、ごめん、涼平くん。」
「もう、久子おばさんたら!プンプン!」
「ごめんごめん、そんなに怒らないの。じゃあ善は急げで早速始めたいんだけど・・・。」
「あ、でも久子おばさん。」
「何かしら?」
「昨日、僕、何回お尻叩かれたかわからないよ。数える余裕なんかこれっぽっちもなかったもん。まあ、いつも余裕なんてないんだけど。」
「ペンペン会」の中では双方同じ数叩くことがルールとなっているため、涼平はその事を気にしている。ちなみに現在決められている数は70回と小学生にはちと厳しい数であり、結成時の50回から約1年半で徐々に(久子が)増やしていっている。
「大丈夫。こういうこともあるかと思ってちゃんと数えてあるわよ、さあここで問題です!」
「へ?」
「タコの足とイカの足を掛け算するといくつでしょうか?」
「な、何それ?」
「実はね、これは昨日の参観日に出た学習クイズなのよ。しかも聞いてびっくり!この答えと涼平くんの質問の答えは偶然にも同じ数字なのよねぇ。さていーくつだ?」
「う、うそ・・・。」
あ然としながら久子の膝の上から久子の得意気な顔を見上げる涼平。理科と算数が絡んだ問題。頭のいい涼平にはなんとも簡単であったが、
「と、ということは・・・は、は、はちじゅっかいー!」
「ピンポーン!」
答えの数に驚きを隠せない涼平。「ペンペン会」のさらに上をいく数に、昨日のお仕置きの厳しさを再認識させられる。
「うわぁー・・・。僕、そ、そんなに叩けるかな?」
「がんばれ涼平くん。おばさんがついてるわ!」
「その応援、全然意味がわかんないよ。」
「フフフ、そうかな、エヘッ。」
涼平のツッコミに久子は舌をぺろって出して愛嬌を振りまくと、涼平は思わず吹き出してしまう。
「ハハハ・・・でも、僕、ちょっと意外だったな。80回で驚いちゃったけど、昨日ばかりは痛くて怖くて、てっきり100回ぐらい叩かれたと思ったもん。」
「100回・・・。」
「ま、そこまで久子おばさんも鬼じゃなかったってことかな。」
「・・・・。」
「じゃあ、久子おばさん。僕を膝からおろしてよ、準備するから。」
「・・・・。」
「久子おばさんってば!」
「はっ!ど、どうしたの?涼平くん。」
「どうしたのじゃないよ。久子おばさんこそ何ぼーっとしてたの?」
「うん・・・ごめんね、ちょっと考え事をしてたの。」
「考え事?」
「そう、今回の「ペンペン会」の設定を考えると、仮病を使ってズル休みした子供の監督不行の罰として保護者であるおばさんが痛みを分かち合うという意味で当事者の子供にお仕置きした後、自分もまた同じようにその子供にお仕置きされるという事でいいと思うの。だけど・・・。」
「だけど?」
「80回で足りるかしら?」
「へ?」
「身内だけでなく先生や友達も巻きこんで心配かけたんだから、もっと厳しくしなきゃだめじゃないかしら?」
「ど、どういう事?」
「・・・お尻百叩きよ。」
「お、お,お尻ひ、ひゃ、百叩きぃー?」
「そうよ。「ペンペン会」ができてすぐに生まれた夢なのよねぇー、お尻百叩き・・・いい響きだわ。幼き頃の兄たちでさえ親からそこまで厳しくお仕置きされたことはなかった・・・。」
「あ、あの、久子おば・・・。」
「涼平くんという理解者のおかげでお尻ペンペンされるという一つの夢はかなった。だから、今こそこの新たな夢をかなえるいい機会だわ!」
「・・・・。」
自分の世界に入り、一人で勝手に話を進めようとする久子。もうこうなると止めることは不可能であると、涼平は「ペンペン会」を通して理解している。涼平はすでにあきらめきった表情だ。
「涼平くん!そういう訳だから・・・。」
「うん・・・わかった。」
「あら、お願いする前からわかってくれたの?さすが涼平くん!」
久子はそう言うと、涼平の頭を優しくなでる。
(ふう・・・これから、久子おばさんのお尻を100回も・・・僕の手が壊れちゃうかも。ん、待てよ?何か大切なことを忘れているような・・・)
頭をなでられながら涼平は心の中で自分の心配をしていると、久子は思い立ったかのように、
「よーし、じゃあ涼平くん。これからあと20回ね!」
「ん?あと20回って?」
「決まってるでしょ、昨日のお仕置きのつ・づ・き。「ペンペン会」のルールを忘れたの?」
「・・・☆△×!!(訳:そ、そうだったー!!)」
「そんな変な声出さなくてもいいじゃない。確かにこのお尻でさらに20回も叩かれるのはきついと思うけど、昨日ほど叱りつけるつもりはないし、いつもの久子おばさんとしてお仕置きしてあげるから。まあ、もちろん手加減はしないけどね、ウフッ。」
(ぼ、僕、死んじゃうかも・・・)
今度は心の中でつぶやく涼平。まさか今日もお仕置きされるなんて、それも昨日と合わせて100回も・・・という嘆きが涼平の落胆した表情から感じ取れる。
「それじゃ、お尻を叩くからね。」
言っていることは非情ながらも、幾分優しさを感じる口調でそう言うと、久子はゆっくりと右手を振り上げる。すると、
「ま、待って、久子おばさん!」
突然、涼平が久子を呼び止める。
「なあに、涼平くん?」
「この「ペンペン会」・・・ら、来週にするってのは、だ、だめかな?」
さすがに2日連続はとの思いがあり、ダメ元で涼平は久子に頼み込む。すると、久子はまぶしいほどの笑顔をつくって、
「涼平くんの気持ちはよくわかるわ。でもね、来週はさすがに放っておいた武彦たちのために家族サービスに徹しないといけないし、再来週だと間隔が空きすぎるでしょ?だから今しかないの、ねっ。」
「・・・・。」
そう答えた後で軽くウインクする久子に、涼平はもはや黙ってうなずくしかなかった。





チリン、チリン、チリン
「ほらー、そんなに広がって歩いちゃ危ないわよー。フンフフーン♪」
夕焼けに染まった道を久子はゆっくりと自転車で走っている。
自分と同じく帰路につく子供達に向かって呼び鈴を鳴らし、優しく声を掛け、さらには鼻歌も歌うなど超ご機嫌モードの久子。そして、時折スカートに包まれたお尻をさすりながら、今日の「ペンペン会」を振り返る。
(あの子、あのお尻の状態でよくここまで叩けたなぁ。まだヒリヒリするわ・・・ウフフフ)
スカートに包まれて見る事はできないが、久子のお尻は今までで一番と言っていいくらい見事なまでに真っ赤に染まっている。初めての経験となったお尻百叩きだけでなく、涼平の力も子供ながらに少しずつ強くなってきたこともその理由の一つといえよう。
「さてと、帰る前にお買い物に行かないと・・・明日はもっと美味しい料理を作ってあげなくちゃ!」
久子は笑顔でこう叫ぶと、一気にスピードアップしながら繁華街へと突き進んでいった。
一方、その頃・・・
「ひぃ・・・ひぃ・・・。」
涼平はベッドの上で昨日と同じくらい、いやそれ以上に真っ赤に腫れあがったお尻を出しながらダウンしていた。「ペンペン会」後は久子にお尻をたくさんなでてもらっていたが、さすがに今回の「お尻百叩き」の痛みは根強い。
そして、右手もまた久子のお尻を散々叩いたために痛々しいほどに赤く染まっている。久子にそれなりのダメージを残せるようになったものの、まだまだ久子のお尻には勝てないようだ。
「もう、一歩も動きたくないや・・・。」
か細い声でポツリともらす涼平。もう目はうつらうつらの状態である。しかしその中で、
「明日も久子おばさん来てくれるって言ってたな・・・ご飯作って・・・お尻もなでてくれるって・・・でも、今度は本当にそれだけで終るのかなぁ・・・。」
それだけ言うと、涼平は完全に目を閉じ、時々痛みで声をあげながらも翌朝まで眠ってしまうのだった。





そして結局、次の日曜日には久子にべったりと甘える涼平と、それにしっかりと応えてあげる久子の姿があり、涼平の心配はさすがに無駄に終ったのでした。