ペンペン会
風薫る5月下旬。
「あらぁ、涼平くん。いらっしゃい。」
「こんにちは、久子おばさん。えっと、武彦くんに学校からのプリントを渡そうと思って・・・。」
「わざわざすまないわね。学校を3日休んじゃったけど、風邪は大分良くなってきたから明日には学校に行けるかな?まあ、とにかくあがって。」
「おじゃまします。」
和久井涼平、10歳の小学4年生。今日は、同じクラスで幼なじみの中川武彦の家を訪れた。武彦は風邪でしばらく学校を休んでいたため、連絡とお見舞いを兼ねての訪問である。そんな涼平を武彦の母親である久子があたたかく出迎えた。長身でグラマラスな体型であり、胸もさることながらキュッと引き締まったウエストの下にあるお尻がそれ以上に目立ち、武彦の部屋に案内する久子の後ろについて歩く涼平はそのお尻を見ながら、「自分の顔の倍以上はあるのでは・・・」と思うほどであった。それでいて脚も長く、髪が明るい茶色に染められているため、欧米人と見間違えても不思議ではない美しい女性である。
「武彦、起きなさい!涼平くんがお見舞いに来たわよ。」
久子は2階にある武彦の部屋のドアを開けると、開口一番大きな声で呼びかけた。そこには、ベッドで寝ている武彦の姿があった。
「う、うーん・・・涼平くん?」
武彦は目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。
「武彦くん、久しぶり。ごめんね、起こしちゃって。」
「いいのいいの。さっきまでグースカ眠ってたんだから。もう十分よ。」
「ひどいよ、ママ。病人に向かって。」
「ハハハハ・・・。」
そんな母子のやりとりに涼平は苦笑いする。
「それじゃ涼平くん、ゆっくりしてってね。風邪をうつされない程度にね。」
「はーい。」
「あと、武彦。ママ、しばらく下で色々することあるから、もし具合が悪くなったら携帯で呼びなさいよ。」
「うん、わかった。」
「じゃあ、おやつだけすぐに持ってくるわね。」
そう言って、久子は足早に武彦の部屋を出た。
「全く・・・いちいちうるさいんだよな、ママは。」
「いいじゃない。優しいママで。」
「そんなことないよ。」
「僕、うらやましいもん。背が高くて綺麗で、ていうかカッコいいし。」
「本当にそんなことないって。涼平くんは表面しか見てないから知らないんだよ。実の正体は36歳のいい年したオニババ・・・。」
ガチャ
武彦の話の途中に部屋のドアが開き、おやつを持ってきた久子が入ってきた。
「今何か言った?武彦。」
そう言って久子はキッと武彦をにらむ。
「い、いや、別に。」
「そう、何かママの悪口が聞こえたような気がしたけど・・・涼平くんは聞いてた?」
「え?ううん、何も。」
涼平は久子の問いかけにブンブンと首を横に振る。
「そう?ならいいけど。じゃあ、ごゆっくり。」
久子はおやつを部屋に置くと、再び部屋を出ていった。
「ふう、危なかった・・・。」
「僕もびっくりしちゃったよ。」
「ね、見たでしょ?あの怖い目。あれが本当のママだから。」
「でも、悪口を言った武彦くんが悪いんだよ。」
「確かにそうだけど・・・でもこれで涼平くんも少しはわかったでしょ。」
「まあ、怒ると怖いなってところは・・・。」
「本当にママは口うるさいんだよ。いちいち細かいとこまで注意するし。」
「ふうん。でも、武彦くんは成績もクラスで一番なのに、それでも久子おばさんに怒られるの?」
「それはもう色々と・・・くつは脱いだら揃えろ、帰ったらうがい手洗いしろ、部屋はきちんと片付けろ、とかね。」
「へえー。」
幼稚園の頃からずっと一緒である友達から話される新たな真実。さらに武彦は話を続ける。
「でも、そのたび注意されるのはまだいいよ。それが何回か積み重なるとあの地獄が・・・。」
「地獄?」
「お説教地獄。」
「お説教?」
「ママの部屋に呼ばれて、正座させられて、たっぷりとお説教されるんだよ。
少なくても1時間、下手したら2時間ぐらい。」
「2時間も!」
「そう。そうなるともうヘトヘト、足ガクガク。」
「ふぇぇ。」
「もう、本当に嫌なんだから。よく口がそこまで動かせるな、しゃべることあるな、と感心するくらい。」
「ハハハハ・・・。」
「だからね、こんなだったらお説教じゃなくて一発バシッと叩かれたほうがまだましかなって思うよ。」
「え?武彦くんは久子おばさんに叩かれたことないの?」
「ないよ。ついでにパパにもね。」
「ふうん。それだったら今度から叩けって久子おばさんにお願いしたら?」
「やだよ。そうなったら毎日バシバシ叩かれそうで嫌だし。ママ、力強いから。」
「ハハハハ・・・。」
度重なる武彦の愚痴に苦笑いする涼平。今日は苦笑いしてばかりである。
「それにひきかえ・・・涼平くんはいいよ。確か涼平くんのママ、外国で働いてるんだよね。」
「うん。小学生になってからずっと・・・あっちのお仕事も忙しいみたいで、1年に1回帰ってくるかどうかだし。」
「いいなあ。それだったら、怒られること少なそうだし。」
「でも・・・ずっとママがいないとやっぱり寂しいよ。僕なんかずっと家で一人のときが多いし。」
「あ、そっか・・・確か涼平くんのパパも、お仕事で帰りが遅くて休みも少ないって前に言ってたもんね。」
「うん。だから僕は、逆に武彦くんがうらやましい。にぎやかで、楽しそうで。」
「そうかなあ?」
「今の僕だったら、長時間お説教されたり、あと叩かれたっても別にいいかなぁって・・・なんてね。」
「え、そう?それだったら、うちのママをしばらく貸そうか?」
「無茶言うなぁ。武彦くん。」
「アハハハ。」
「アハハハ。」
こんな会話がしばらく続く。そして数分後、
「じゃあ、そろそろ帰るね。」
「うん、ありがとう。明日、学校で会おうね。」
「うん、じゃあね。」
そう言うと、涼平は武彦の部屋を出ると、手を振る武彦を見ながらゆっくりとドアを閉めた。
(さてと、久子おばさんにも挨拶しなきゃ・・・)
階段を降り、1階にいるとみられる久子を探す涼平。しかし、リビング、台所、さらにトイレにも久子の姿は見当たらない。
(どこかに出掛けたのかな?)
廊下で一人たたずんでる涼平。すると、
バシッ・・・バシッ・・・
ほんのかすかに聞こえる音。何かを叩く音がどこからか聞こえてくる。
(何の音だろう・・・)
涼平はそれに気付き、耳をすませて音の出所を探る。すると、突きあたりの部屋のドアまでくると、そのドアの向こう側からその音が聞こえてくるのがわかった。ちなみに涼平はこれまで何回か武彦の家に遊びにきているが、この部屋には一度も入った事がない。
(ここからだ・・・)
涼平は立ち止まり、そのドアにそっと耳をあてる。
バシッ・・・バシッ・・・
確かに涼平の思ったとおり、同じ音がしている。
(久子おばさんはここにいるのかな?)
音の正体が気になりながらも、涼平はそのドアをゆっくりと開けた。
ガチャ
ドアをほんの少し開けたところで、中をそっと覗き込む涼平。すると、そこにはテレビを見ながらソファに腰掛けている久子の姿があった。どうやらここは久子の部屋らしい。そして、そのテレビに映っているものは・・・
(え?なにあれ・・・)
バシッ・・・バシッ・・・
(男の人が・・・女の人のお尻を叩いている?)
テレビにはなんと外国人の中年男性の膝の上で若い女性がスカートをまくられ、パンツを下ろされて丸出しにされたお尻を何度も叩かれている映像が流れていた。そして、そんな映像を久子は黙ったままじっと見ている。
(うわぁー、あんなにお尻赤くなっちゃってる・・・痛そう・・・)
また、涼平もそんな生まれて初めて見る光景をしばらくの間、興味深く見ていた。すると、あまりにテレビの映像に集中しすぎたためか、手を添えていた部屋のドアに余計な力をかけてしまう。
ギィィー
「うわっ!」
「えっ!?」
プツッ
ドアが思い切り開いて涼平は倒れこむように部屋に入ると、久子は驚きの声をあげ、とっさにテレビを消した。
「涼平くん・・・。」
「え?いや、あの・・・その・・・。」
あわてふためく涼平。そんな涼平を見て明らかに部屋を覗いていたなと久子はすぐに察知した。
「あちゃー。変なところ見られちゃったわねぇ。」
久子は天を仰いで嘆くと、涼平はどうすればいいかわからずただその場に立ち尽くしていた。すると、久子はすぐさま平静を保ち、何事もなかったかのように涼平に話し掛ける。
「涼平くん。もうお帰り?」
「え、あ、・・・うん。」
涼平は戸惑いながらも返事をする。そして、一礼して久子を横目で見ながら部屋を出ようとすると、
「待って!涼平くん。」
「・・・・!!」
久子に呼び止められ、涼平は立ち止まり、思わず直立不動となる。
「ねぇ、ここで少しおばさんとお話していかない?」
「い!あ、えーと・・・。」
久子の問いかけに再び戸惑う涼平。久子はそんな涼平を見て、
「まだ外も暗くないし、ねっ!」
久子は満面の笑みを浮かべてそう言うと、もはや断れる空気ではなくなり、涼平はコクリとうなづいた。
「よかった。じゃ、ここに座ってくれる?」
久子は自分の座っているソファの空いている場所をポンポンと手で叩くと、涼平はおそるおそる久子に近づき、言われたとおり久子の左隣に座った。
「もう、ビクビクしないの!元は部屋の鍵を掛けなかった私が悪いんだから。涼平くんは気にしなくていいの。」
「は、はぁ・・・。」
久子は涼平の心情を察知し、優しい言葉を掛ける。しかし、涼平の頭の中には、まだ衝撃的だったあの映像がよぎっている。
そして、そんな涼平に対し、久子の方から話し出す。
「涼平くん。一つお願いがあるんだけど、いい?」
「え?」
「今日、涼平くんがこの部屋で見たこと。さらに、これからおばさんが話すこと全て、誰にも言わないでほしいの。もちろん、うちのパパや武彦にもね。」
「誰にも言わない?武彦くんにも?」
「そう。おばさんと涼平くんだけの秘密よ。どう、約束してくれる?」
今まで見たことがない久子の真剣な眼差し。涼平はその迫力に押され、もはや答えは一つしかなかった。
「うん。」
涼平は一言こう返事をすると、久子の顔に笑顔が戻り、涼平の頭を撫でる。
そうすると涼平も自然に笑顔になり、思わず二人とも笑い出してしまう。そして、そんな雰囲気の中、久子はゆっくりとした口調で話をはじめた。
「さっきね、おばさんが見てたのは・・・お仕置きビデオなのよ?」
「お仕置きビデオ?」
「そう。男の人がね、悪い事をした女の人を子供みたいにお尻ペンペンして
お仕置きするのよ。」
「へえー。」
「「へえー」なんて言って・・・心の中ではこのおばさんはこんなビデオを見てて変だなって思ってるんでしょ?」
「・・・・!」
おどけながら質問する久子に対し、あわててブンブンと首を振る涼平。
「ウフフ、いいのよ。変だってのは自分でもわかっているから。でも、 理由はちゃんとあるのよ。」
「理由?」
「あのね、おばさんがまだ小さい頃の話なんだけど、おばさんは自分の他に
年が少しはなれた兄が二人いてね、それが大層いたずらっ子で、よくお母さんにお尻ペンペンのお仕置きをされてたのよ。兄たちはお母さんの膝の上でワンワン泣かされてたわ。それに、兄と私が喧嘩しちゃったときも「お兄ちゃんなんだから」って言われて、兄だけお尻ペンペンされちゃうの。喧嘩両成敗って言葉があるけど、うちには当てはまらなかったのよね。まあ、私は末っ子だったから結構甘やかされてたってのもあるし、ごくたまに怒られることがあっても軽いお説教で済んでたし。」
「・・・・。」
「それで結局、私は一度もお尻ペンペンのお仕置きをされることがなかったのよ。」
涼平は久子の話をじっと聞いている。さらに久子の話は続く。
「だけどね、私はそんな兄たちが少しうらやましかったんだよね。」
「え?どうして。」
「確かにお仕置きされている兄たちを見ると、お仕置きは絶対嫌だって当然思うの。だけど、そのお仕置きが終わって兄たちがお母さんに泣きながらすごく甘えてくるの。そうすると、お仕置きしたお母さんはそれを全く拒むことなく
抱きしめたり赤くなったお尻をナデナデしたりして、いつも以上に優しいお母さんになっているのを見てね、もし自分もお尻ペンペンされたらもっともっと
甘えさせてくれるのかなって、そのたびに考えたものよ。」
「ふうん。」
「でも、わざと悪い子になってお仕置きされる勇気もなかったからねぇ。結局、それが今の今まで引きずって・・・大人になって、こんなビデオを買っちゃって、パパや武彦がいない隙にこっそりと見て、その叩かれている女の人が自分だと想像して、お仕置きされたいという願望を少しでも満足させようとしてるんだけどね。」
「・・・・。」
「まあ、簡単に言えば兄たちがお仕置きされたのに私はされなかった。よくいえばいい子だったからといえばそれまでだけど、悪くいえば別にどうでもいいからほったらかされただけだったなのかなって・・・こんなひねくれた考えもした。あとね、私が結婚して武彦が生まれてから学んだことは、親は可愛いから、大事に思うからこそ自分の子供を叱るものだということ。だから、それを知って昔を思い出しちゃうとますます憂鬱になっちゃうのよね。自分は本当に愛されていたのかなってね。」
「・・・・。」
「ね、変なおばさんでしょ。大人になってもこんな馬鹿げたことを思ってて・・・こんなことパパはもちろん武彦にも絶対言えないわ。だからね、武彦にはお仕置きとしてお尻ペンペンはせず厳しくお説教することで十分反省をさせて、その後はたっぷりと甘えさせてあげることにしているの。だって、こんな邪なことを考えている母親が我が子に対して自分がしてもらいたいお仕置きをするってのはどうなのかなって思うから。」
「・・・・。」
一方的に話す久子の隣で黙って話を聞く涼平。すると、
「・・・ごめんなさい。ちょっと夢中になってしゃべりすぎたわね。ごめんね、変な話につきあわせちゃって。」
ようやく話を終え、涼平に気をつかう久子に対し、涼平はこんなことを言い出した。
「久子おばさんって、僕と同じだね。」
「え?何が同じなの?」
こんな涼平の言葉に思わず理由をたずねる久子。
「だって・・・僕もパパやママにお仕置きされたことないんだもん。ていうか、叱られたってことがほとんどないし・・・。」
「え、そうなの?」
「だって、パパは仕事でほとんど家にいないし、ママは外国に行っちゃってるし、ほとんど毎日ひとりぼっちだから・・・正月とかに家族が揃っても、そのときはすごく楽しいんだけど・・・2、3日後には、お金だけ置いてパパとママはまた仕事・・・。仕方がないことだとはわかっているんだけど・・・やっぱり寂しい。」
「涼平くん・・・。」
涼平はそう言うと寂しさを思い出したのか下を向きうなだれ、辺りに重い空気が流れる。
(あららら、何か気まずくなっちゃったわね・・・)
久子は、自分が蒔いた種でこうなってしまったことに罪悪感を感じながらもこの状況をなんとか打破できないかを懸命になって考える。
そして、二人しばしの沈黙の後、久子はひらめいたという表情をして涼平に向かって叫ぶ。
「涼平くん!」
「わっ!え?え?」
びっくりして顔を上げる涼平。しかし、それにかまうことなく久子は話を続ける。
「もう一つだけお願いがあるんだけど、いい?」
「え?うん、何?」
「あのね、涼平くん。おばさんにお尻ペンペンしてくれない?」
「・・・・!!?」
涼平は驚きのあまり絶句すると、久子はその理由を説明する。
「だって、パパや武彦も知らないおばさんの秘密を涼平くんは知っちゃったわけだし、そうなると、このおばさんの願望を叶えなきゃいけない責任が涼平くんにあると思うの。」
「そんな無茶な・・・それに僕、まだ子供だし・・・。」
「そんなのはどうでもいいの。もともと叶わないと思ってた願いであったんだから、叩かれるのであれば子供でも全然OK。それに涼平くんとは武彦を通じて付き合い長いし。」
「でも・・・。」
「何?他に何か問題でもあるかしら?」
「でも、ただ叩かれたいという理由だけで僕が久子おばさんのお尻を叩くのは
ちょっと・・・気が引けるっていうか。」
「あ、そんなこと?大丈夫、それはちゃんと考えているから。」
「へ?」
「というのはね、涼平くんがおばさんにお尻ペンペンした後、今度はおばさんが涼平くんにお尻ペンペンしてあげる。」
「え?え!え!!えーー!!!」
全く思いがけない久子の言葉に大絶叫する涼平。思わずソファから立ち上がる。
「驚いた?でも、おばさんこれでも真剣に考えたのよ。」
「え?」
「さっき涼平くん言ってたよね?おばさんと同じで親にお仕置きされたことがないって。」
「・・・うん。」
「だからね、それだったらおばさんが代わりに涼平くんにお尻ペンペンのお仕置きをしようかなって。そうすれば、おばさんも涼平くんにお尻ペンペンされるんだから、おあいこってことになるしね。」
「・・・・。」
久子は明るく話し続ける。そんな中、涼平は、
(えー、僕はパパやママがほとんど居なくて寂しいとは言ったけど、お仕置きされたことないからされてみたいとは言ってないのに・・・)
これが涼平の本音であるのだが、あまりにも嬉しそうな久子の顔を見て、言うに言えないでいる。そんな困惑している涼平に対し、久子はさらに説明を続ける。
「それに、これは社会勉強なのよ。悪い事をしたら叱られる、それにより同じ失敗をしないようにする。その繰返しで人は成長するものなの。おばさんもそうだけど涼平くんみたいに叱られたことがほとんどないんじゃ、将来はおばさんみたく変な大人になっちゃうかもしれない。だから、そうならないためにも、ここでお仕置きを体験することは悪いことではないと思うの。まあ、かなり痛い思いはするけどね。」
「・・・・。」
涼平は考える。久子の言葉はかなり強引ではあるが一理はある。痛いのは嫌だけど久子おばさんにお仕置きされることで、ほとんど家にいない母親を感じられたら・・・寂しさが少しでも紛れたら・・・そんな思いがだんだんと涼平の心の中で強くなっていく。
「どうかしら?涼平くん。」
久子は目の前に立って考えている涼平を見ながら問いかける。そして、考えを重ねようやく涼平は口を開く。
「うん、いいよ。」
「本当?」
はっきりとした涼平の返事に対し、久子は再度確認する。
「うん。久子おばさんにお尻ペンペンするのはちょっと気が引けるけど、久子おばさんがそれで満足するんだったらいいと思うし、僕も今までいい子じゃないときがあったからここでお尻ペンペンのお仕置きをされるのもありなのかなって。正直怖いけど・・・。」
そんな涼平の言葉に久子は感動する。
「さすが涼平くん。武彦もいい友達を持ったわ。」
そう言うと久子は立ち上がり、涼平を強く抱きしめる。すると、涼平の顔は久子の大きな胸に埋まり、圧迫されて息が出来なくなってしまう。
「うっぷ。く、苦しい・・・。」
涼平は手足をバタバタしてもがくと、ようやく久子は異変に気付き涼平を離す。
「うぇー、死ぬかと思った・・・。」
「ウフフフ、ごめんね涼平くん。嬉しくてつい力が入っちゃった。」
「もう、久子おばさんたら。アハハハ。」
二人揃って笑い出す。そして、
「じゃあ早速これからっていきたいところなんだけど、二階には武彦がいるし、夕飯の支度もしなければいけないから・・・。」
「から?」
久子はしばらく腕組みをして考えこむと、涼平はその横に立ってドキドキしながら待っている。そして、久子は決断した。
「よし、明後日の土曜日にしましょう!」
「土曜日?」
「そっ、その日はね3人で動物園に行く予定なのよ。武彦の風邪が治ったらという条件で。だけど、都合が悪くなったってことでおばさんだけ行かないことにするわ。何かしら理由をつけてね。」
「えっ?いいの?」
「いいのいいの。武彦のお守りはパパに任せるから。それより、おばさんの叶わぬと思われた願いを達成することが最優先だし、2人が家に居ないいい機会だからね。ところで、涼平くんはその日大丈夫?」
「い?あ、あ、多分大丈夫だと思うけど・・・。」
「うん。じゃあ、それで決まり。楽しみね、ウフフフ。」
「ハハハハ・・・。」
ルンルン気分の久子に対し、涼平はただ苦笑いをするほかなかった。
「バイバイ涼平くん。またねー。」
武彦の家の前で笑顔で見送る久子をよそに、涼平の帰路の足取りは重かった。
(土曜日、一体どうなるんだろう・・・。久子おばさんをお尻ペンペンする・・・そして、その後は僕が久子おばさんに・・・。)
そんな不安を募らせながら、涼平は夕日を浴びながら自分の家へと帰っていくのだった。
そして、2日後の土曜日。
涼平は午前9時過ぎに武彦の家に訪れた。けれども武彦は、予定通り朝から父親と一緒に動物園に出掛けたため既に姿はなく帰りも夜遅くになるとのことであった。しかし、今回は武彦ではなくその母親の久子に会うのが目的である。
そう、久子にお願いされた「あの約束」を実行するために・・・。
涼平はすぐさま久子に案内され2階の武彦の部屋へと通された。部屋は2日前に訪れた時とはほとんど変化はなく、床にはベージュのカーペット、それに勉強机と椅子、本棚、テレビ、それにベッドなどが置かれている。久子に少し待つように言われ、涼平は武彦のベッドの上に腰掛ける。涼平は水色の長袖のプリントTシャツと丈が膝くらいまでの青色のショートパンツ姿であり、今日これから自分はどうなるんだろうという思いから胸をドキドキさせている。そして待つこと15分、部屋のドアが開くと、
「お待たせ、涼平くん。」
久子が笑顔で部屋に入ってくる。姿を見ると、明らかに先程とは違い、十二分に化粧をして、服装も薄黄色の長袖の襟付きシャツに紺色のスカート、それに黄緑色のエプロンを着けている。おまけにいつもと明らかに違う種類の香水の匂いを漂わせており、まるで大事な客人を迎えるかのような風貌である。そんな久子が涼平の横に並んで腰掛けると、涼平のドキドキがさらに強まり、ほのかな香水の匂いがより拍車をかける。そんな緊張が隠せない涼平を見て、フフッと微笑む久子。そして、
「今日はありがとう。無理なお願いを引き受けてくれて。おばさん、すごく楽しみにしてたのよ。叶わないと思ってた夢が叶うって感じで。」
「は、はぁ・・・。」
久子は嬉しそうに話し始めると、それとは対照的に涼平は戸惑いを隠せない返事をする。しかし、そんなのはお構いなしとばかりに久子は続けて話をする。
「言っとくけど、これはお仕置きなんだから手加減したら絶対ダメだからね。おばさんを本気で泣かすぐらいのつもりでやってね。もちろん、おばさんだって涼平くんをお仕置きする時は思いっきりやるから遠慮はいらないからね。」
「・・・・!」
自分へのお仕置きの話になり、涼平の体が不安と恐怖でプルプルと震える。さらに話は続く。
「あとね、今日のお仕置きの回数なんだけど、えーとね、100回・・・」
「ひゃ、ひゃ、ひゃくうーー!?」
涼平は声を大にして驚き、目が飛び出んばかりであった。しかし、
「・・・にしようかなと考えたけど、お互いお仕置きは初めてだし、とりあえずその半分の50回にしようと思うんだけど。」
「え!あ、あ、50回?」
「いいかな、涼平くん?」
「あ、は、は、はい。」
「ウフフ。驚かせてごめんね。」
久子の50回の提案に涼平は落ち着きを取り戻しながら承諾する。しかしながら、50回というのも決して少なくはないのだが、100回からの半減になったという安堵感から涼平はすんなりと受け入れてしまう。
「よし、そうと決まれば早速だけど、これから始めましょう。」
久子は涼平にそう言うと、スクッと立ち上がり、回れ右をしてベッドの方を向く。そしてそのベッドに両手をつけて前かがみになると、久子の大きなお尻がドンと突き出される。いわゆるベンドオーバーの体勢であり、130cmそこそこの涼平が立って叩くのにちょうどいい格好となる。
「これでいいかな。でも本当はね、子供みたいにお膝の上に乗せられて叩かれたかったんだけどね。だけど、涼平くんの膝の上に乗ると恐らく重くて叩くどころじゃなくなるから・・・これだったら涼平くんも叩きやすいでしょ?」
「え?あ、まぁ・・・。」
「じゃ、涼平くん。お願いね。」
「あ・・・うん。」
涼平は立ち上がり、お尻を向ける久子の左側に立つ。そして久子の背中に自分の左手を添える。
「本当に・・・いいの?」
「当然よ。思い切りやってね。でも、おばさんのお尻の肉は結構厚いから叩く方が大変かもね。」
涼平は再度確認すると、久子は涼平の顔を見てにっこりしながらこう答える。
「じゃあ久子おばさん、いくよ。」
涼平はゆっくりと右手を振り上げる。すると、
「ちょっと待って。涼平くん。」
久子はいきなり涼平に待ったをかけ、その声を聞き涼平の動きが止まる。
「服の上からじゃだめよ。きちんと脱がせてお尻を出さないと。」
「え・・・?いいの?」
「いいもなにも、涼平くんもあのビデオを見てたでしょ。お尻ペンペンするときはやっぱりお尻丸出しにした方が間違いなくお仕置きの効き目は高いからね。」
「・・・・。」
「それに、この後涼平くんだって同じようにパンツを脱がされてお尻を叩かれるんだからね。遠慮することないの。」
ギクッ
久子からポッと出たお仕置きの予告に対し、涼平は動揺する。
「わかったかな?じゃ、始めて。」
「う・・・うん。」
涼平は久子のスカートを腰まで捲り上げる。そうすると、ピンク色のパンティに包まれた大きなお尻が涼平の目に飛び込んできた。
「でかい・・・」と思いながら、涼平はそのピンク色のパンティを膝のあたりまでずり下ろす。そして、ボリュームのある久子のお尻が丸出しとなった。
「じゃ、久子おばさん・・・いくね。」
涼平はそう言うと右手を再び振り上げる。涼平にとっても久子にとっても緊張の瞬間・・・
パシーン!
久子のお尻に、涼平の平手が勢いよく落ちる。
「うっ!」
最初の一打に声を上げる久子。
パシン!パシン!パシン!パシン!
リズミカルに叩いていく涼平。「手加減したら怒られる」そう思いながら力を込めて叩く。
パシン!ピシン!パシッ!ピシッ!パシッ!
パシン!パシッ!パシン!ピシン!パチン!
パシッ!パシッ!パシン!パチン!パシン!
「・・・・。」
無言で耐える久子。しかし、多少歯を食いしばってはいるが表情に大きな変化はない。涼平は手加減せず思いっきり叩いており、久子のお尻もだんだんとピンク色に染まってきた。しかしながら、それほど大きなダメージは与えられていないようである。
パシン!ピシン!パシッ!ピシッ!パシッ!
パシン!ペシン!パシン!ピシン!ピシッ!
ぺシン!ペチン!パチン!ペチン!ペチッ!
少し叩く勢いが落ちてきた。久子の大きなお尻が涼平の手を逆にはね返す感じに見える。
「・・・涼平くん、頑張って。」
ついには久子の方から励まされる。涼平はそんな久子の声に応えるべく更に力を振り絞る。
パシン!パシッ!パシン!ピシン!パチン!
パシン!ピシン!パシン!パシッ!パシン!
「・・・うっ!・・・くっ!・・・んっ!・・・あっ!」
精一杯の涼平のお仕置きに久子は声を上げ、ベッドのシーツを強く握りしめる。そして、最後の10回に差し掛かり、涼平はラストスパートとばかりに気合を入れる。
パシン!パシッ!パシン!ピシン!パチーン!
パシン!ピシン!パシッ!ピシッ!パシーン!
「痛−い!!」
最後の一打が終わって思わず叫ぶ久子。最終的にお尻は一面濃いピンク色に染め上げられた。
「ひぃー!涼平くん、痛かったよー。おばさん、えんえん泣きそうになっちゃった。」
久子は少し涙目になっている。しかしこれは痛さのためというよりむしろお仕置きされた嬉しさによるものと見られる。
そんな中、久子の足元には叩き疲れてうなだれている涼平の姿があった。
「・・・ふぅ。僕の手の方が痛くなっちゃった。」
「フフフ。ご苦労様、涼平くん。」
そう涼平をねぎらうと、久子は自分でパンティとスカートを元に戻し、
「本当にありがとう。涼平くんのおかげでいっぱい反省できたわ。子供のころにしたイタズラとか色々とね。これで少しはいい大人になれたかな?」
「・・・かもね。」
「ウフフフ。」
「へへへ。」
二人揃って笑い出す。そして、
「涼平くん、ここでちょっと休憩しよっか。疲れたでしょ?今、おやつを持ってくるから待っててね。」
「うん。」
そう言うと、久子は部屋を出ていった。すると、涼平は久子のいない間にふと今のお仕置きをふりかえる。
(うーん。やっぱり、久子おばさんのお尻は強いなあ。ああ言ってたけど、ほとんど痛くはなかったみたいだし、やっぱり、子供の僕の力じゃ無理だよなあ。ちょっと悔しい・・・。)
「ふぅ。」
涼平はこんなことを思い、最後にはため息をつくのであった。
あれから20分程度たっただろうか、武彦の部屋では談笑している久子と涼平の姿があった。久子は椅子に腰掛け、涼平は再びベッドの上に座り、お互い向かい合って久子の用意したお菓子とジュースを楽しみながら、色々な話をしている。学校での話、家での武彦の話、最近のテレビ番組の話など様々なジャンルで話が盛り上がっている。実は、涼平が武彦抜きで久子とこれだけ話をしたことはなく、涼平はもちろん久子もまた時間を忘れるくらい楽しんでいた。
しかし、久子のこの言葉が、しばらく忘れていた「あの約束」の第二幕を涼平に思い出させる。
「さてと、次は・・・涼平くんがお仕置きされる番ね。」
「・・・・!!」
久子の言葉にビクッとし、背筋を伸ばす涼平。緊張で手に持っているコップが小刻みに震えている。
「おばさんの時は立ってお仕置きされたけど、涼平くんがお仕置きされる場所は、こ・こ・よ。」
久子はおどけた口調でそう言いながら、椅子に座っている自分の太ももから膝のあたりをポンポンと軽く叩いてみせる。
「準備が出来たら、こっちにいらっしゃい。」
さらに一言言うと、涼平はしばらくはじっとしていたが、その後、コップに
残っていたジュースを一気に飲みほすと、覚悟を決めて立ち上がった。持っていたコップを机の上に置き、久子の側に歩み寄る。すると、久子は涼平の腕を掴んで自分の右側へと涼平を誘導する。そして、
「はい。ちょっとごめんね。」
「う、うわっ!」
久子はすぐさま涼平の腕を持ち上げるように引張ると、涼平が驚いて声をあげると同時に、自分の膝の上に涼平をうつ伏せにした。涼平の足は床から離れ、小さな涼平の体は久子の膝の上のみで支えられている体勢となり、久子は涼平の体が膝の上から落ちないよう左手で涼平をしっかりと押さえる。
「・・・・。」
久子の膝の上で、自由に動けなくなってしまった涼平はじっと黙っている。涼平の胸の高鳴りは依然として高まっているが、次の久子の行動により、それがよりピークに近くなる事となる。
ズルリッ
「・・・いっ!?」
久子は涼平のショートパンツに手を掛けると、それを白のブリーフと共に膝のあたりまで一気に脱ぎ下ろす。すると、吹出物のない白く小さなお尻が顔を出した。涼平は予告なしの久子の行為に思わず驚いて声を出してしまう。
「まぁ、可愛いお尻。」
「・・・・。」
久子にまじまじと自分のお尻を見られ、だんだんと顔が赤くなる涼平。さっき
までは久子のお尻を見たのだから、そのお返しといえば納得すべきことであるが、久子にお尻を含めて裸を見られたのは幼稚園の時以来であり、恥ずかしさは隠せない。そして、今回はお尻を見られるだけではないことで、恥ずかしさだけでなく恐怖もひしひしと感じている。
「アハッ。すべすべ、それにふわふわしてる。」
そんな涼平の心情を察することなく、久子は涼平のお尻をなで、時折軽くつまんだりして感触を楽しんでいた。そんな久子の行為に、さすがに涼平が口を開く。
「もう。やめてよ、久子おばさん。」
「ウフフ。いいじゃない、もう少しだけ。」
しばらくの間、とてもお仕置き前とは思えない空気が流れる。そして・・・ついにその時がやって来る。
「さて、と。」
「・・・・!」
久子は涼平のお尻を撫でるのを止め、そのままお尻に手を置いた。久子の顔からも笑みがすっかり消え、真剣な表情へと変わっていく。涼平にも緊張が走る。
「では、これからお尻ペンペンのお仕置きをするけど、涼平く・・いや、涼平。ママが側にいない間、今日までにどんな悪い事をしてきたかを思い出しなさい。そして、その一つ一つに対して、心から反省しながら素直にお仕置きを受けるのよ!いいわね!!」
「・・・・。」
そんな久子の言葉を聞き、涼平は恐怖でガタガタと震え出した。この後、自分に与えられるお仕置きに対してはもちろん、豹変した久子の厳しい態度に・・・。あまりにも怖くて、久子に返事すらできないでいた。
だが、そんな涼平の応答を待つことなく、久子は涼平のお尻に置いていた右手を高々と振り上げる。久子の手がお尻から離れた瞬間、涼平の震えが止まり、息を飲み歯を食いしばる。そして次の瞬間、先程までは自分が久子に対して行ったあのお仕置きが、今度は自分の身へと降りかかる。
バシッ!バシン!ビシッ!バシッ!ビシッ!
「・・・ひぎっ!・・・うびぃ!・・・ぶふっ!・・・ぴひっ!・・・うぎぃ!」
長身からくり出される力を込めた平手打ちが、目にもとまらぬ連打で涼平のお尻に炸裂する。涼平は初めてのお仕置きに対し、驚きと同時に今まで経験したことがないお尻への鋭い痛みにより、声にならない声を上げる。
バシン!バチン!ビシッ!バシッ!バチン!
「・・・うぐっ!・・・ひいっ!・・・ひいいっ!・・・痛い!・・・痛ぁーい!」
「何言ってるの!痛いからお仕置きなんでしょ!」
間髪入れずにくるお尻の痛みに涼平は涙目になり、大声を出し、足をバタバタさせる。そんなお尻の状態も、白からみるみるうちにピンク、薄赤色へと変わっていく。しかし、そんな涼平に対して厳しく一喝し、全く気にする素振りを見せることなく久子は涼平のお尻を叩き続ける。
バシッ! バチッ! バシン! ビシッ! バシン!
バシン! バチン! ビシッ! バシッ! バチン!
バシッ! バシン! バシィ! バチッ! バシン!
ビシッ! バシッ! バシン! バシッ! バチン!
「・・・ううっ、・・・びいい、・・・うっ、・・・うぇぇーん!!」
全く力を抜くことなく黙々とお尻を叩く久子。30回叩いたところで涼平はついに泣き出してしまう。
「・・・・!」
涼平の泣き声に驚き、久子は一瞬叩く手を止める。しかし、すぐに思い直したかのように激痛に体を反り上げて暴れる涼平をしっかりと膝の上に押さえつけ、さらに右手を振り上げる。
「ママが側にいないからって、勝手なことばかりして!」
バシッ! バシン! バシィ! バチッ! バシン!
「かくれて悪い事をしてもママはみんなお見通しなのよ!」
バシッ! バチッ! バシン! ビシッ! バシン!
「これに懲りてもう悪い子になっちゃダメよ!」
バシン! バチン! ビシッ! バシッ! バチン!
「ママはいつでも涼平のことを思っているんだからね・・・。」
ビシッ! バシッ! バシン! バシッ! バチン!
「うわぁぁん!びえぇぇん!うえぇぇーーん!!」
まるで涼平の母親が乗り移ったかのように厳しくも温かい叱責を挟みながら、久子はき然とした態度でお尻を叩き続ける。あまりの痛さにもはや涼平には泣くことしかできないでいた。
「さっ、あと5回だからね。しっかり反省するのよ!」
久子はそう言い放つと、自分の右腕の袖をまくり上げ、ガッチリと涼平の体を膝の上に固定し直すと、勢いよくその手を振り上げた。
バシーン!バシーン!バチーン!バチーン!バッチィィーンッ!
「びぇぇぇーん!ごめんなしゃーい!!もうしましぇーん!!!」
最後にとびきり力強い平手打ちの連打により、涼平のお尻から大きな音が飛び出し、涼平もまた何の許しを求めたのか、われんばかりの大声で叫ぶ。そして、久子はその涼平の叫びを聞くやいなや即座に叩く手を止めた。
「涼平くん、よくがんばったねー。よく耐えたねー。いい子いい子。」
久子はいつもの口調で涼平に優しく声を掛け、お尻をなでる。きっかり50回、厳しく叩かれた涼平のお尻はバラの花のような真紅に染まり、腫れあがっていた。
「はい、もう痛くしないからねぇ。よしよし。」
「・・・ひっく。・・・グスン・・・グスン・・・。」
久子は優しく丁寧に涼平のお尻をなで続け、涼平もまた久子にあやされながら自分の手で涙を拭いて泣き止もうとする。
「お尻、お猿さんみたいに赤くなっちゃったね。すっごく痛いでしょ?でも、これも涼平くんのためを思ってお仕置きしたんだから・・・わかってくれるよね?」
「・・・・うん。」
涼平は小声ながらもコクリと大きくうなずくと、自分の厳しいお仕置きを受け入れてくれた喜びからか久子は安堵の表情を浮かべる。
「痛みが落ち着くまでお尻なでてあげるからね。後でお薬も塗ってあげる。」
久子は言葉の通り、念入りに涼平のお尻をなでる。その間、涼平はまるで抜け殻のように力を抜いた状態で久子の膝の上にうつ伏せになっている。すると、お仕置き前そしてお仕置き中には緊張や恐怖のためか全く感じなかった久子の香水の匂いが強く感じられるようになった。涼平は、その香水の匂いと久子の膝の上からくる温もりに何だか心地よい気分になり、
(何か、ママと一緒にいるみたい・・・)
そんなことを考えながら、涼平はお尻が痛みながらも、しばらくの間そんな状態を楽しむのであった。
あれから約1時間、時計はもうすぐ午後0時になろうとしている。
武彦の部屋に二人の笑い声が戻っていた。先程と変わらず、椅子に座る久子の膝の上に涼平がお尻を出してうつ伏せになったままであり、すでにお尻には薬が塗られ、薬が早く染みこむよう久子は優しくお尻をなでている。そんな中、お仕置き前と同じく久子と涼平は楽しく話をしている。
「あっ。もうこんな時間?涼平くん、お昼はうちで食べていってね。」
「え、いいの?」
「もちろん。今日は朝にカレーを美味しく作っておいたから。涼平くんのためにね。」
「やったー!」
涼平が無邪気に喜ぶのを見て、久子の顔に自然と笑みがこぼれる。すると、そんな涼平に対してふとこんな質問をする。
「ねえ、涼平くん。」
「何?」
「お仕置きされるのは、やっぱり嫌?」
「えっ?」
「だって涼平くん、初めてのお仕置き・・・すごく痛かったでしょ。こんなにお尻は赤くなるし、いっぱい泣いちゃったし。」
「・・・・。」
「・・・・。」
涼平はしばらく黙って考え、久子も静かに涼平を見つめている。すると、涼平は頭の中で考えをまとめ、久子の質問に答える。
「お仕置きされるのは、すごく痛かったし、嫌だけど・・・。」
「けど?」
「悪い事したのに叱らないで無視される方が・・・もっと嫌かな。」
「え?」
「さっきも言ったけど、僕はパパやママと一緒にいる時間が少ないから、叱られる事がほとんどないんだけど、パパやママと一緒にいる少ない時間の時だって、僕が何をしても叱らないもん。多分僕に気を使っているんだと思うけど。」
「・・・・。」
「それで、僕は親に叱られないことがずっと当たり前のようだったから、久子おばさんに初めてお尻ペンペンのお仕置きをされてる時は、痛くて痛くてもうこんなのは絶対嫌だと思った。でもお仕置きが終わって、久子おばさんに痛いお尻をなでられている間、何か変だけどいい気分になって、ママがここにいるような感じがして、今までにした悪い事に対してはすごく反省できてスッキリした気持ちになったんだ。だから・・・何もされないくらいだったら、お仕置きされた方がいいかなって。」
「そっか・・・。」
涼平の言葉をずっと黙って聞き、久子は涼平のお仕置きに対する考えに納得し、ポツリとこうつぶやいた。そして、久子はここで涼平にとって全く想定していなかったことを突然言い出すのだった。
「涼平くん。次はいつやろっか?」
「へ?何を?」
「決まってるじゃない。お・し・お・き・よ。」
「いーーーーっ!!!」
「驚く事ないでしょ?今日で終わりっておばさん一言も言ってないわよ。」
「・・・・。」
「おばさん思うのよ。おばさん自身、まだまだ反省する事がたくさん残っているって。兄たちに負けないくらいお尻ペンペンされないとダメなんじゃないかって。」
「はぁ・・・。」
「涼平くんもそうでしょ。今日のだけじゃまだ足りないって思わない?だから、これからも今まで悪い事をしてきたことに対してのお仕置きがまだまだ必要じゃないかなって、おばさんは思うんだけど。」
「はぁ・・・。」
「これもおばさん自身、そして何より涼平くんのためを思って言ってるの。だから、これからも続けていきましょ。ね?ね?」
久子は強引な流れで、自分の膝の上にお尻を出したままうつ伏せになっている涼平の頭を優しくなでながらお願いをする。
「・・・はい。」
そして、涼平はそんな流れに飲まれたかのように、承諾してしまう。
「ようし、これでおばさんと涼平くんとの秘密の会が出来たわ。よろしくね、涼平くん。」
「はぁ・・・。」
ウキウキする久子に対し、涼平はまだ途方にくれている。
「それじゃ、この会にきちんとした名前をつけましょう・・・そうだ!「ペンペン会」にしましょ。」
「ペンペン会?」
「そ、お尻ペンペンをする会だから「ペンペン会」。いいわよね、涼平くん。」
「はぁ・・・まぁ。」
「じゃあ、これに決定ね。次回はまた二人で連絡しあって決めましょ。」
「・・・うん。」
上機嫌の久子に振り回される涼平。しかし、最初は「ペンペン会」の恐怖に表情が曇っていた涼平であったが、お仕置きの後に再びあの心地よい気分を感じられると思い、「ま、いっか」と最後には開き直ってしまうのであった。
その後、「ペンペン会」は涼平が中学生になり、それと同時に外国での仕事が終わった母親が帰ってくるまで約50回続けられ、その久子と涼平の「ペンペン会」は、武彦を含め最後まで誰にも知られることがなかったとの事である。