語尾のアルに理由がアルか?
「マンガ家アル!」
これは先ほどロンロンさんが俺、ナイトに言った発言だ。
俺がふと聞いた「職業」についての質問にこう答えたのである。
「マンガ家!?」
正直に言おう、俺は驚いた、・・・理由は後述とする。
「そうアルよ、といってもアシスタントアルけどね」
「アシスタント」・・・すなわちマンガ家の助手ということだな、
「へぇ〜、すごいなぁ・・・」
「へ?何がアルか?そんなに珍しいアルかな?」
「そりゃあ簡単になれるもんじゃないですし・・・」
「し・・・?」
「実は・・・自分の夢でもあるんです、マンガ家って」
自分の夢でもあるんです、マンガ家って・・・、
大事な事だから2回言ったぞ。
そうだ、意外かも知れないがそれが俺の将来の夢って奴なのだ。
驚いた理由もこれに含まれる。
この発言を聞いたロンロンさんも実に驚いていた、
「ヤー!そうアルかぁ!」
「は・・はい・・・、多分俺には無理だろうけど・・・」
「そんなことないアル!夢は必ずかなうアル!」
ずいぶんと楽観的なセリフだ・・・、
まぁ、こう言ってもらえた方が嬉しいのだが。
「そ・・・そうですか?」
「もちろんアル!・・・そうだっ!」
ロンロンさんは急に何か思いついたようにそういい放った。
「なんですか?」
「あたしが独立したらナイトを雇ってあげるアルよ!」
「え・・・本当ですか?」
こんな突拍子も無い事をいきなり真に受けることはできない。
「ヤー!約束アル!」
「真剣に?」
「もちろんアル!イ ロンロンに二言は無いアル!」
「いや・・・でも・・・」
どうやら俺はかなり考えが現実的、ロンロンさんはその逆のようだ。
「もうっ!そんなに信じられないアルか!?」
「いっ・・・いや・・・そういうわけじゃ・・・」
「ん〜、だったら・・・、
もしあたしが約束破ったらあたしのお尻、ペンペンしても良いアルよ!」
「いいぃぃぃっ!」
この人には羞恥心というものが無いのか!?
なぜそんな恥ずかしい事が言える!?
「なに恥ずかしがってるアル?別にあたしもナイトのこと叩いてるアル、
お互いに問題はないはずネ」
「いや・・・でも・・・」
「もう・・・、男らしくないアルなぁ・・・、何なら今練習するアルか?」
ロンロンさんがズボンに手をかけたので俺は思いっきり止めに入った。
「何してるんですか!!?」
「お尻出そうとしてるアル」
「そんなきっぱりと言わないで下さい!!」
「大丈夫アル、あたしもナイトと同じ「キー」アルから」
「俺は大丈夫じゃないです!!」
なんかものすごい言い争いになっているが内容が頭悪すぎる・・・。
「分かりましたよ、なんかあったら叩きますから今はやめてください!」
俺は半ば仕方なくこういった。
「ホントアルな?」
「本当ですよ・・・」
「よしよし良い子アル、じゃあそのときを楽しみにしてるアル」
おしおきを楽しみにする人なんてそうそういないだろうな・・・。
「分かりましたよ・・・」
どうか今後の人生でロンロンさんが何も問題起こしませんように!!
俺は人の家であることも忘れてだらりとその場に座り込んだ・・・、
「なんか疲れちゃったアルなぁ・・・」
「俺の方が疲れましたよ!!」
これは俺の方が正論で間違いない!!
「そうアルか?」
「そうですよ・・・」
「そうアルか・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
やばいやばい、会話が途切れてしまった。
俺は何か会話になりそうな事を探す。
「・・・ロンロンさんはなんでアシスタントになったんです?」
うん、我ながら良い質問だ!!
「理由アルか?もちろん日本のマンガ読んでアル」
「へぇ・・・」
「でね、あたしが高校生の時アルけど・・・、
中国、上海・・・
「ロンロンって絵上手ね」
「うん、すっごく上手い!!」
「そ・・・そう?」
あたしは学校では毎日お絵かきしている女の子だったアル、
「好きこそ物の上手なれ」って言葉の通り、絵はそこそこ上手かったアルよ?
本当にマンガ読んでは絵を描いて、読んでは描いて読んでは描いてってやっていたから担任の先生に「マンガ、お絵かき禁止令」が出されるほどだったアル。
ま、それでも隠れて描いてたアルけどね。
でもそのときはまだ、真剣にマンガ家になろうなんて思ってなかったアル、
ナイトと同じでなれるとは思ってなかったアルしね。
でもこんなことがあったアル、
その日はあたしたまたま寝坊して急いで学校に走ってたアル。
「まずいなぁ・・・、送れちゃうよぉ・・・」
そんでもって交差点をまがったときアル、
ずどーんっ・・・と男の人にぶつかったアル。
「いてて・・・、あ、ごめんなさい!!」
「あ、いえいえ・・・」
その男の人を見るとその人のバッグから何か白い紙が落ちてたアル、
「あ、すみません、拾います!」
あたしはその紙を拾ったんだけど・・・、
なんとその紙、マンガの原稿だったアル!
「あ・・・あの・・・お兄さん・・・マンガ家さん?」
「え、あ、うん。一応はね・・・まだまだ売れてないけど」
その人その頃はまだ無名のマンガ家で、仕事で中国に来てた日本人だったアル。
「へ・・・へぇ・・・すごいなぁ・・・」
「な・・・何が・・・?」
「あ、いやあたし、マンガ家になるのが夢なんです!」
「へぇ、そうなの!?」
「は・・・はい!」
「そうなんだぁ」
「あ、すみません長々と・・・」
あたしがそこを立ち去ろうとした時、その人がとんでもないこと言い出したアル。
「じゃあ、僕のアシスタントになってくれませんか?」
「・・・え・・・?」
「もちろんただとは言わない!お金も払うし・・・ちょっとした仕事で良い!
第一今は全部ひとりでやっているんだし・・・ダメかな?」
「い・・・いいんですか?」
「もちろんだよ!仕事は全部教える!僕もしばらくはここにいるつもりだし!」
「ほ・・・本当に・・・?」
「うん!」
あたしは感動したアル、まさかこんな形でこの仕事が出来るなんて、
あたしは喜んで、
「おねがいします!!」
って言ったアル。
その人が今のあたしのせんせーアルな、
ちなみにあたしが日本に来たのもそのせんせーが仕事で日本に戻ることになったからアルよ」
「へ・・・へぇ・・・、じゃあ日本語もその先生に習ったんですか?」
するとロンロンさんは違う違うと首を振った。
「せんせーは日本語の教え方が全く分からないって言うからちゃんと塾にかよって習ったアル、そこにあたしのお尻をペンペンする先生がいたアル」
「そ・・・そうなんだ・・・」
俺は頭を軽掻いた。
「そうだ、来てほしいアル」
ロンロンさんは俺を小さな部屋に連れて行った、
「ここがあたし仕事部屋アル」
「お・・・おぉぉ・・・」
部屋の中はきれいだった、
普段想像する汚れたマンガ家の部屋とはずいぶんとイメージが違っていた。
「フフッ、好きに見学して良いアルよ」
「本当ですか?」
俺は机の上を覗き込んだ、
まず目に入ったのはど真ん中に置かれた仕上げのされていない原稿。
たぶんこれに「ベタ」(塗りつぶし)やらなんやらをするのがロンロンさんの仕事なのだろう・・・。
その隣には無造作に「Gペン」や「かぶらペン」、「丸ペン」(すべてマンガの清書用のペン)が置いてあり、
さらに「羽ぼうき」(消しゴムのかすを払う羽毛製のほうき)に「雲形定規」(曲線を描くための定規)、それから「デッサン人形」(人物を書く際のモデルとなる関節可動式の人形)など、いかにもマンガ家らしい机だった。
「すごい、感動しちゃいます」
「そうアルか、良かったアル」
するとロンロンさんはドアノブに手をかけた、
「ちょっとお手洗いにいってくるアルから」
「あ、はい」
ガチャン、扉が閉まる。
俺はなおも机の上を見ていた、正直にいうとかなり浮かれていた。
自分のお隣さんがマンガ家・・・、まぁアシスタントだけど、
とにかくそんな人がお隣さんなのだ・・・。
感動だ・・・。
・・・しかしこの「浮かれ」が俺に悲劇を招いたのかも知れない・・・。
「ふぅ・・・」
ドアが開く・・・、
「うわぁ・・・何してるアル!?」
ロンロンさんは驚いていた、無理は無い・・・、
だって入って来るなり俺が真っ青な顔しているんだからな・・・。
「な・・・何があったアル!?」
ロンロンさんは俺に顔を近づけた・・・、
「・・・なさい・・・」
「え・・・?」
「・・・ごめんなさい・・・」
「え・・・え・・・?」
ロンロンさんはキョトンとしていた。
「・・・どうしたアルか?」
ロンロンさんは優しい声で聞いた、
俺は無言で机を指す。
・・・そこには倒れたインクのビンと、真っ黒になった原稿があった。
「う・・・うわぁ・・・」
ロンロンそんは思わず苦笑いを浮かべていた。
「ご・・・ごめんなさい・・・」
俺はもうすでに目頭が熱くなっていた・・・、
多分怒られる・・・。
おしおきもたくさんされるだろう・・・。
それに・・・きらわれちゃうかな・・・?
俺はちょっとした絶望を感じていた・・・。
頭をがくりと下げ、その場に座り込んだ・・・。
ロンロンさんが近づく気配がする、きっと怒鳴られるんだろう・・・、
そう思った・・・が・・・、
ロンロンさんは俺の頭をポンポンと叩いた。
「正直に言えたアルね?」
「・・・え・・・?」
「怒られるんじゃないかって・・・・恐かったアルな?」
「・・・・・・・」
俺は黙ってうなづく。
「ちゃんと言えて良い子アルよ」
「ロンロンさん・・・」
その時、恥ずかしながらも涙があふれた。
「お・・・俺・・・恐くて・・・嫌われるんじゃないかって・・・」
「何言ってるアル、あたしはナイトを嫌いになったりはしないアル」
するとロンロンさんは俺をぎゅっと抱きしめた。
「・・・・・・っ!?」
「恥ずかしくてもやめないアルよ♪」
ロンロンさんはニコッと笑った・・・。
俺は頭を掻いて目をとじた・・・。
・・・このまま終われば感動だったんだが・・・、
数分後が本当の悲劇だったわけさ・・・。
「・・・落ち着いたアルか?」
「・・・はい・・・」
ロンロンさんは俺に抱きつくのをやめた、
・・・そして、
「じゃあお尻出すアル♪」
「・・・・・・・・・はい・・・・・・・?」
「だからお尻出すアル」
「え・・・でもおしおきは・・・」
「インクこぼしたアルね?人の大事なものダメにしちゃったアルな?
それはいけない事アル、悪い事したんだからおしおきは当然アル!」
「いっ・・・いぃぃぃぃぃ!!??」
すっかり油断していた、まさかあの流れでおしおきがあるとは。
「ほら、正直に言ったから少なく見積もってあげるアル、だから早く」
しかしそんなこと言われてもまだ心の準備ができていない。
「はやくするアル!!それともいっぱいペンペンされたいアルか!?」
「わ、わかりました、今行きますから!!」
俺は足早にロンロンさんに近づき、正座したロンロンさんの膝に乗った。
「よしよし、良い子アル」
ロンロンさんはそう言うと俺のズボンと下着を下ろした。
この瞬間は何度されても恥ずかしい。
「さて、何回ペンペンが必要アルかな?」
ロンロンさんはペロッと舌を出していじわるに笑った。
「まぁ、反省できたら終わりアルな、良いアルね!?」
「は・・・はい!!」
「よーし、じゃあ、それっ!!」
ぱちぃぃん!!
いつもの通り、痛みと衝撃が下半身から頭へ突き抜ける。
ぱちぃぃん!ぱちぃぃん!
「いっ・・・いううぅ・・・」
「ほら、頑張るアル!!」
ぱちぃぃん!
「うっくく・・・はい・・・」
「よしよし・・・」
ぱちぃぃん!ぱちぃぃん!
ロンロンさんはランダムに、というか俺にはわからない規則があるのかも知れないが、とにかく俺の予想できないようにスピードやら位置やらを変えて叩く。
すると俺は踏ん張りようがないからどうしても叩かれると悲鳴をあげてしまう。
本当に恥ずかしいからやめたいんだが・・・。
ぱちぃぃん!
「いあぁぁぁ!!」
ぱちぃぃん!ぱちぃぃん!ぱちぃぃん!
「ひゃっ・・・ぁぁ・・・」
「そんな情けない声出さないでほしいアル」
「うぅ・・・でも・・・」
「ま、このくらいは仕方ないか・・・」
ぱちぃぃん!ぱちぃぃん!
「いっ・・・あぁぁ!」
ぱちぃぃん!
「くぁぁぁ!」
ぱちぃぃん!ぱちぃぃん!
「ねぇナイト、インクが見えなくなるほどあたしの机に感動したアルか?」
ぱちぃぃん!
「うっぁぁ・・・、は・・・はい・・・」
ぱちぃぃん!
「そうアルかぁ・・・そこまで思ってもらえると嬉しいアル」
ぱちぃぃん!
「でも、ちゃんと周りは見えてないとダメアルよ!?」
ぱちぃぃん!
「いぁぁっ・・・はい・・・」
ぱちぃぃん!
「分かったアルね?」
ぱちぃぃん!
「は・・・はいぃ・・・」
「じゃあ・・・最後に1回叩いておしまいにするけど・・・良いアルか?」
「はい・・・!」
「よし、行くアルよぉ!」
ぱっちぃぃぃん!!
「うっ・・・くぁぁぁ!!」
「はい、おしまい」
「ふ・・・ふぅ・・・」
やっと終わった・・・、相変わらずだが痛かった・・・、
「よくがんばったアルね」
ロンロンさんは俺の頭をいつものように撫でる、そして
「もう一度抱っこしてあげるアルか?」
「い・・・いや・・・いいです・・・恥ずかしいから・・・」
「もう、恥ずかしい禁止にしないといけないアルかぁ?」
「あ・・・いや・・・すみません・・・」
「フフッ、可愛いアルなぁ・・・」
なんか恥ずかしいんだよなぁ・・・。
ちなみにロンロンさん以外に俺を可愛いなんて言う人はいないぞ。
まぁ、恥ずかしくても嫌われてないだけマシか・・・、
これからも好きでいてくださいね・・・っと。
その夜、ロンロン宅
「どうしよううぅぅ!!せんせーに怒られるアルぅぅぅ!!」