語尾はアルでも鬼は怖い(注、ストーリー上F/F描写有)


二月三日には鬼さんがやってきて悪い事をしていくから豆をまいて追い払うんだよ。
あなたも幼い頃母、父、もしくは幼稚園の先生にこんな事を言われたはずだ。
何を隠そう俺、新田ナイトもその中の一人である…まぁ皆そうか。
そう、今日は節分なのだ。鬼がやってきて悪さををする日なのだ。そしてそれを退治しなくちゃならない日なのだっ!!
…しかし今年の鬼は少し違う。むしろとっても素晴らしいお土産をもってやってきた。
今からほんの少し前…本当に五分前くらいである、ロンロンさんから連絡があった。
「今、暇アルか?豆まきするからウチに来るアルっ!!」とね…。
これは素晴らしい。もちろん行きますよっ!!世界が滅んでもあなたに会いに行きますよっ!!(その距離5m、マンションのとなりの部屋)
え、テンションが高い?気にするなっ!!
舞い上がってるんだよっ!!
 


ピンポーン…、
すぐさまにドアが開く。
「いらっしゃいアル、待ってたアルよっ!!」
「ロンロンさん…、ドア開ける前に相手確認しないと危ないですよ…」
俺はそう呟いた。当然だろう。
「なんでアルか?」
「もしかしたら悪い人かも知れないじゃないですか」
するとロンロンさんは当然の如く、
「あ、悪い人だったらお尻ペンペンしてやるからおっけーアルっ!」
…そういう問題じゃないと思うんだが。
「とにかく入るアルっ!」
ロンロンさんが背中を押す。何か妙に焦ってないか?
「ど、どうしたんですか?なんかただの豆まきとかの雰囲気じゃ…」
「話はあとアルっ!!」
な…なんなんだよ一体…っ!!
俺は無理やりロンロンさんに家の中へ連れ込まれた…。
「そ、そんなに押さないで下さいっ!!転びそうですっ!!」
「ふぅ…改めていらっしゃいアルっ!」
ロンロンさんは息を荒げながら俺を歓迎した。しかし俺にしたらそれどころの騒ぎじゃないっ!!
「一体何があったんですか?」
するとロンロンさんは細々と…、
「実は…」
「実は?」














「日本語のせんせーが来るアル…」

へ…?
日本語の先生…、たしかロンロンさんに語尾にアルの日本語を教えた…、

「そんなことで焦ってたんですか?」
「そんなことじゃ無いアルっ!!この手紙を見るアルっ!!」
ロンロンさんは一枚の綺麗な紙切れを出した。
「え〜なになに…「愛しのロンロンへ」…ラブレターかよ…」
「ひょーきんな人アルっ!!続きを読むアルっ!!」
「はいはい…


「元気にやっていますでしょうか?あなたはドジな子なので雇い主さんにご迷惑をかけていないか心配です。
…と、思っていたらやっぱりあなた、指定された仕事を締め切りに終わらせず迷惑をかけたようですね。
社会人としてそれは最も恥ずべき行為です。
ということで次の土曜日にあなたのお尻を叩きにいきます。楽しみにしていなさい」
 
…あぁ…なるほど」
「あたし「はたち」アルよっ、この年でお尻ペンペンなんて絶対いやアルっ!」
「ロンロンさん20歳なんですか?」
「そうアルよ、教えてなかったアルっけ?」
「聞いてないですよ」
…本当だ。年なんて聞くわけにも行かないし初めて知った。
ロンロンさんってもっと大人っぽくも見えるが、もっと幼くも見えていた。年齢が分かった今、何か妙に感動してしまった。
「ふーん…ってそんなことはどうでも良いアルっ!!」
「でもロンロンさん、自分のことキーだって言ってたじゃないですか、俺にだって「約束破ったら叩いて良い」って…」
「それ言ったらナイトもキーアルっ、キーでも痛いのはイヤアルでしょっ!?」
「…まぁたしかに」
言われてみればそれもそうか…。
「それにせんせーのペンペンは段違いに痛いアルっ!!だからイヤアルのっ!!」
ロンロンさんは汗をだくだくにしてそう話した。
「…で、自分はどうしたら良いんですか?」
「豆まきアル」
「…は?」
「だから皆で豆まきして和やかな雰囲気にしてその流れで帰ってもらうアル!」
「…ムリだと思います」
「絶対いけるアルっ!!間違いないアルっ!!」
「…そうですか、で、その豆は?」
「あ、はいはい…それはたしか…、














買い忘れてたアル…あはは…」
だめだこの人。
「…じゃあ買いに行きましょう」
「そ、そうアルね、急ぐアル」
…そういうことで俺たちはスーパーにでも行く事になったのだが…、
こういうときって大体何か起きるのってお決まりだと思わないか?
ズバリ言う、起きるっ!!
ドアを開けた瞬間ロンロンさんの先生が立っている。
さぁ、ここからはそのドキドキ感を味わっていただきたいっ!!

「いくアルよっ!!」
「はいはい」
「急がないとせんせー来ちゃうアルっ!!」
「準備できましたよ〜」
「よし、走るアルっ!!」
「走ったら下の階の人に迷惑じゃ…」
「かんけーないアルっ!!」
「まっ…ちょ…っ!!」
「急ぐアルよーっ!!」
「まったく…」

ガチャ…、







「…あ」
そこには一人の若い女の人が立っていた。
黒く長い髪にパッチリとした目、どことなくしっとりとした雰囲気が漂う女性。
ロンロンさんと大して変わらないくらいの年齢に見えるこの人…、この人が?
「せ、先生…」
やっぱりか…。
「ロンロン久しぶり♪」
結構美人なその人はにっこりと笑ってロンロンさんを見ていた。
「あ、あわわわ…」
ガタガタと震えるロンロンさん…。そんなに怖いのか…。
「どうしたの?そんなに怖がらなくても…」
その人は高く優しい声でそういっていた。…そしてその視線が俺に移った。
「あれ…あなたは…、あ、もしかしてナイト君?」
「あ、はい…新田ナイトです。…なんで俺の名前を知っているんですか?」
「ロンロンに聞いているからね。可愛い男の子が隣に住んでいるって♪」
「なっ…!」
なんてこと言ってくれてるんだよロンロンさんっ!!
「あ、私の話も聞いてるでしょ?ロンロンに日本語を教えていた「金本恵美」よ」
「あ、よろしくお願いします…、なんてお呼びしたら?」
「ん〜、「先生」で良いわ」
何のだよ…。しかし言うのはやめておこう。
「よろしくです…先生…」
「よろしく、ナイト君っ!」
少しだけ和やかな空気が流れる…、しかし未だにロンロンさんは震えている。
「で、ロンロン…」
恵美先生は少しだけ声を低くしてロンロンさんを見た。
「と、とりあえず入るアル…」
ロンロンさんは俺たちを部屋の中へ押し込み、リビングに座らせた。
「…ロンロン…、今日私は何をしに来たんだっけ?」
「…あたしのお尻をペンペンしに…」
ロンロンさんは今にも泣きそうな震えた声でそういった。
「そうね、じゃあ何でナイト君を呼んだの?…まさか叩かれるところを見られたいって事はないでしょ?」
「…ナイトに、協力してもらって…おしおきから逃げようとしたアル…」
ロンロンさんは俯いた。それを先生はロンロンさんの頭を撫でた。
「正直で良い、でもいけないことをしたよね?」
「…はい」
「じゃあ、分かるよね?」
ロンロンさんはこくりと頷いて先生の膝の上にうつぶせになった。…俺帰ったほうが良さそうだな。一波乱起きそうだ。
「じゃあ自分はこの辺で…」
「待ちなさい…」
先生の声…。
「へ…?」
「ロンロンのことだからあなたもお尻叩かれてるんでしょ?今日くらい叩かれるロンロンを見ていったら?」
「なっ…!!」
「だ、ダメアルっ!恥ずかしいアルっ!!」
「恥ずかしいのもおしおきになるの」
「そ、それにナイトもキーアルっ!!叩かれるのが好きアルっ!!」
「なっ、なに言ってくれてんですかロンロンさんっ!!」
これは酷いよ本気で…、ロンロンさんの馬鹿っ!!
「あ、そうなの?どうりで気が合うのね」
「うぅ…、先生…見てきます」
「な、ナイトっ!?」
「俺だって男ですよっ!!あんなこと言われてただで帰れますかっ!?」
…叩くのは先生だけどね。
「決まりね♪」
「ナイトのいじわるっ!ヘンタイっ!えっちーっ!!」
べ、別にやらしい思いがあるわけではないっ!!…ちょこっとだけあるかな?…なっ、無いもんっ!!
「じゃあ行くわよ、とりあえずさいしょの五回は着物の上からね」
「と、とりあえずって脱がすつもりアルかっ!?」
「当然でしょ?第一あなたのその着物厚手だからあんまり痛くなくなっちゃうでしょっ!」
「うぅ…」
「ほら、覚悟は出来た?」
「は、はい…」
「よし…」
一瞬の虚空があった、次に風を切る音…そして…。
ぱぁんっ!
「いやぁっ!」
乾いた打撃音とロンロンさんの悲鳴。
ぱぁんっ!ぱぁんっ!ぱぁんっ!
「やっ、せんせー…痛いアルぅ…」
「まだまだ序の口っ!」
ぱぁんっ!
「ひぁぁっ!!」
「さて、準備運動はこのくらいね」
そういうと先生はロンロンさんの着物の帯を少し緩め、ズボン状の着物を脱がした。
「ひゃぁっ!!」
しかしその中から出てきた下着に俺は笑いをこらえずにいられなかった。
…くまさんパンツ、漫画の世界の物だと思っていたが現実だったのか…。
「ぷっ…」
「わ、笑うなぁっ!!」
「ほら、これも脱がすわよ、これで叩いちゃくまさんが可哀想だからね」
「や、やだぁぁ…っ!!」
ロンロンさんは拒否したが先生は関係無しとそれを脱がした。…これは流石に目をそらしたい。こっちが恥ずかしいわっ!!
「じゃあ本番ね♪」
ぱちぃぃんっ!
「いやぁぁっ!!」
さっきとは比べ物にならないほどの強い打撃音、不覚にも俺もびくっとなってしまった。
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!
「やぁっ!痛いアルっ!ごめんなさぃぃっ!」
ロンロンさんは足をバタバタ動かしながら甘えた声をだしていた。…ちょっと可愛い。
ぱちぃぃんっ!
「ごめんなさいっ!許してほしいアルぅっ!」
「ロンロン、あなたの仕事はあなたが失敗したらあなたの周りの人も迷惑するのよ?」
ぱちぃぃんっ!
「わ、分かってるアルぅっ!」
ぱちぃぃんっ!
「じゃあちゃんとやらなきゃダメでしょっ!」
「ご、ごめんなさぁいっ!」
ぱちぃぃんっ!
「ちゃんと反省するまではゆるさないからね!」
ぱちぃぃんっ!
「ふぇぇ…もうやだぁ…」
「いやじゃないでしょっ!」
ぱちぃぃんっ!
「いぁぁっ、ごめんなさいアル…いやだぁ…」
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!
「いったぁ…っ!」
先生は何度もロンロンさんのお尻をペンペンと叩き、ロンロンさんは足を動かし、子供のように泣いていた。何か無邪気で可愛い気もしたが、少しばかり可哀想に思える。
「…先生、そろそろこの辺で…ダメですか?」
「…ナイト君、あなたの優しさは分かるよ?でもね、これはおしおきだから…」
「でも…」
俺はロンロンさんのお尻に目をやった。
「もう…真っ赤ですよ…」
「ナイト君…」
「…ナイト…」
先生は少し考えたようだった。俺はただ先生を見る。…俺たちは目が会った。
「良いよ、でも、ロンロンにはもっと辛い思いをしてもらうわ」
「…え?」
すると先生はロンロンさんを膝から下ろした。
「ナイト君、あなたが代わりに残りのおしおきを受けなさい」
「…っ!!」
「そしてロンロン、あなたはそこでその様子を見ていなさい」
先生は今までとは全く違う雰囲気、何か無機質な、機械的なしゃべり方でそういった。ロンロンさんは慌てたようだった。
「だ、ダメアルっ!!これはあたしのおしおきアルっ!!ナイトは関係ないアルねっ!!」
「…ナイト君、あなたが決めなさい」
「…分かりました」
俺は先生の膝の上に乗った。しょっちゅう叩かれてるんだ、なれたもんさ。
「これで良いですか?」
「ええ、良いわよ」
俺たちはやはりどこか無機質にそんな会話をしていた。
「ダメアルナイトっ!!ナイトを身代わりになんて出来ないアルっ!!」
俺はムリに笑って見せた。
「大丈夫、こんなの慣れっこですよ♪」
「…ナイト」
「じゃあ、ズボン下ろすわね」
先生は俺のジーンズと下着を一気に下ろした。妙にひんやりとした感覚。
…やっぱり恥ずかしいし…それに怖い。
「…覚悟は出来た?」
「…いつでも」
俺はぐっと目を瞑った。さぁ…来いっ!!


ぱちぃぃんっ!
「ぬぁぁぁっ!!」
痛い…、もしかしたらロンロンさんに叩かれるより痛いかも知れない。お尻の骨がジンジンとしびれる感覚が襲う。
ぱちぃぃんっ!
「…っ!!」
俺は歯を食いしばった。声を出しちゃいけない。声を出せばロンロンさんは俺のことを心配してしまうだろう…。
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!
「…いっ」
先生の手は何度も俺を襲った。やはりその手は無機質。しかしなぜかとっても温かい。
「痛いでしょ?」
ぱちぃぃんっ!
「…っ、はい…」
ぱちぃぃんっ!
「でもあなたが決めたんだからね、手加減はなしよ」
ぱちぃぃんっ!
「うっ…、その…つもりでいます」
ぱちぃぃんっ!
「いいコだね」
ぱちぃぃんっ!
「…っ!!」
ぱちぃぃんっ!
「うっくく…」
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!
「うっ…あぁっ…」
先生は俺のお尻を叩きながら時々俺に声をかけてきた、そしてこんな事を言い出した。
「ねぇナイト君…」
ぱちぃぃんっ!
「…はい?」
先生は俺の耳元に口を寄せ、小さい声で、
「なんでロンロンの身代わりになったの?」
ぱちぃぃんっ!
「え…だって…」
「普通自分が身代わりになんてなれるもんじゃないわよ?」
ぱちぃぃんっ!
「うぁっ…言いたくないです」
…言えないよな。普通。
ぱちぃぃんっ!
「じゃあ、それ言ったらおしおきおしまいにしてあげる。いうまでは終わらないからね?」
「なっ…ちょちょっ…」
ぱちぃぃんっ!!
「ほら、早く言っちゃいなさい♪」
ぱちぃぃん!
「うぁぁっ…うぅ…」
俺はこのとき確信した。こ、この人…いじめっ子だ。
「ほら早く♪」
ぱちぃぃんっ!
「いぁっ…イヤです…っ」
ぱちぃぃんっ!
先生はにやりと笑った。やめてその顔…。
「じゃあ仕方ないっ!!」
ばっちぃぃん!!
「うぁぁぁっ!!」
効果音が変わったぞっ!?今までの倍くらい痛い…。
「ほら、言った方が良いんじゃない?」
先生はさらにいじわるな目で俺を見た。その時…。
「もうやめてほしいアルっ!!」
「…?」
ロンロンさん…。
「どうしたの?」
「先生…、ナイトは悪くないアル…、悪い子はあたしアルよ…」
「ロンロンさん」
「あ、あたし…どんなに酷く叩かれても良いから、鞭でも何でも持ってきて良いから…、ナイトを叩くのはやめて欲しいアルっ!」
ロンロンさんは先生を見つめて叫んでいた。目に涙を浮かべて…。ロンロンさん…、そんなに心配しないで…。
すると先生はにこりと笑い口を開いた。
「…ロンロン、優しいコになったね」
「…え?」
「私の所にいた時はそんなこと言えなかったのに…、一年見ない間にそんなに大人になったんだね」
先生はとても優しい目をしていた。
「先生…」
ロンロンさんは涙で一杯の目で先生を見ている。
「ナイト君、迷惑かけたね。もう良いわ、おしおきは終わりよ♪」
先生は俺を膝から下ろした。すると…。
「ナイトっ!!」
ロンロンさんが抱きつかれた。
「ちょっ、え…?」
「ごめんアルっ!痛かったアルよね!?ごめんアルっ!!」
ロンロンさんは俺の頭を撫でながらおんおんと泣き喚いていた。
「ごめんアル…あたしのせいで…ごめんアル…」
「…ロンロンさん…、泣かないで?」
俺はそう言うことしかできなかったが、後から考えれば一番の言葉だったのかもしれない。
「ナイト…怒ってない?」
「怒るも何も…、俺が勝手に…」
「ナイト…、大好きアルっ!!」
「…っ!!」
…やべっ…熱が…でも…とっても嬉しい…。
「顔赤いアルよ?…「勇者はひどく赤面した」ってね♪」
「…ロンロンさん…何処で知ったんですかその言葉?」
「「ざだいおさむ」さんの「走れエロス」アルよね?」
「…「太宰治」の「走れメロス」です…」
若干下ネタじゃねーかよ。
「あれ…?そうアルっけ?」
「勉強しましょうね?」
「アイヤー!分かったアル、えへへ…」
「まったく…」
すると先生が、
「あれ?私お邪魔?」
「あ、そんなことは…」
「そ、そうアルっ!!」
俺たちは慌てて否定したが先生はあえて大きく、そして少し皮肉に。








「あ〜、私もすてきな恋したいなぁ…」















二人は酷く赤面したのだった…。