まほーのランプ×語尾アル〜しにかる・ふれんど〜


小さな公園に、待つものが一人、
自転車に寄りかかり退屈に程よく済んだ青い空を見つめていた。

「遅いな…」

少年はふと携帯電話の時計を見た、約束の時間から十分が経っている…。
たたが十分、しかし彼が待つ男は約束の時間の三十分前に現われるような男だ、
一分でも遅れることはまれなのだ。
「…連絡入れてみるか」
少年は携帯電話を開いた…ちょうどその時である。

「ナイトーっ!悪い悪い!」

待っていたものは現われた。
「遅いぞカケル、なんかあったのか?」
「あ、いや…その…、寝坊だよ寝坊!」
「寝坊…?もう二時近くだぞ?」
「いやぁ…、遅くまで起きてたからさ…あはは」
「…?まぁ良いか、行くぞ?」

あぁ…まずいまずい、さすがにあんなことは言えないよな…。
第一ルナさんのことだってどう説明すべきか…。

さかのぼること一時間ほど前の話なんだが…。


俺が昼飯を済ませ約束までの時間、のんきにテレビゲームでも…っと思ったときなんだが…。
「マスター…、ちょっと良いですか♪」
異様に優しいルナさんの声…これはまずい。
ルナさんお得意の精神攻撃、何か良くないことがある時、ルナさんはいつもこんな声になる。
「な、なんですか?」
「お は な し が あ り ま す ♪」
僕は分かるぞ、これは怒っているときの声だ♪
さぁ、地獄の始まりだもう誰も逃げられない、ドゥハハハ!
「それ、今じゃないとダメですか…?」
「ぜっったいに今じゃないといけません♪」
「正直怒ってますよね…?」
「すっっごく怒っています♪」
「ちなみにそれは「おはなし」という名の…」
「「おしおき」です♪」
「じゃあ行きたくないです…」
「あ、そうですか♪」

しばしの沈黙…。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「まぁぁぁぁぁすぅぅぅぅぅたぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ごめんなさい嘘です嘘ですっ!!快く行かせて(逝かせて)いただきます!!」
「早く来なさいっ!!」
俺はしぶしぶルナさんの所へ向かった。
「で、自分…なんかしちゃいました?」
「しちゃいましたね…」
「な、何をしちゃいました?」
「部屋にプリンがありましたよね…?」
「…ありましたね」
「マスター、食べましたよね?」
「あ、あれ…ルナさんのだったんですか?」
「そうですよっ!!他に誰があんなところに置くんですかっ!!」
「あ、すみません…でも、プリン一個でそんなに怒らなくても…」
「あのプリン滅多に買えないんですよっ!!私の場合ランプの精なんでなおさらですっ!!!」
す、すごい剣幕だ…そんなに楽しみだったのか。
食べ物の恨み…おぉ怖い怖いwww
ってそんな冗談かましてる場合か今?違うよな…違うって!!
「さぁ、マスター覚悟できてますよね?うふふふふふふ…」
なんという笑い方だ、美人が台無しだぜ…。
「さぁ、早く来なさい、たっっぷりお尻ぺんぺんしてあげます…」
「いや、あの…その…」
「来ないというなら…それっ!」
「…っ!!!!!!!」
驚くべきことなのだが…身体が浮きましたー♪
「うわわわわわわわわわわわわわわわわわっ」
そして浮いたからだがどこへ行くかというと、もちろんルナさんの膝の上。
「ランプの精を舐めないことです♪」
久々の新ルナさんぱわー(仮)炸裂だ。
「では、ズボン下ろさせていただきます」
ルナさんは俺のジーンズに手をかけ、半ばチート級なプロ技で俺のそれをぐっと引きおろした。
何度やられても慣れないひやっとした感覚が俺を襲う。
「さてさて…」
ルナさんは腕まくりをして俺を見た。
「行きますよ、良いですね?」
「良くなくてもやるじゃないですかぁぁ…」
「ご名答です♪…ではっ!」
えっ、ちょ、心の準備期間はくれよっ!!俺の心のHPはゼロよっ!!
ぱっちいいいんっ!!
「ひゃうっ!!」
うっ、なんかすごく情けない声が出た…。
「あ、今の声かわいい、もう一度出ません?」
「出ませんっ!!」
「むー…残念です」
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!
「はぅぅっ!そんな会話の途中に…」
ぱちぃぃんっ!
「油断大敵ってやつです♪」
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!
「ひぅぅ…」
ルナさんは笑っているが、その叩く力の強さが怒っていることを物語る。
俺がどんなに気を集中して、お尻に力を入れても、それは耐えられない位痛い。
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!
「くぅぅっ…ルナさん…もう、やだぁ…」
ぱちぃぃんっ!
「もうちょっと頑張りなさい」
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!!
「ひぅぅ…もう、無理ですぅぅ…」
ぱちぃぃんっ!
「もう、男の子じゃないんですか?」
ぱちぃぃんっ!ぱちぃぃんっ!
「お、男でも痛いのは嫌ですっ!!」
ぱちぃぃんっ!
「もう、まったく…、じゃあ後十回です」
「ひぅぅ…はい…」
「一緒に数えましょうね、はいいーち」
ぱちぃぃんっ!
「い、ち…」
「元気が無いですよー?にーぃ」
ぱちぃぃんっ!
「に、にっ!!」
「その調子です、さーん」
ぱちぃぃんっ!
「さんっ!!」
「はい、よーん」
ぱちぃぃんっ!
「よ、よんっ!!」
「いい子ですね、これで半分おしまいですよ、ごーぉ」
ぱちぃぃんっ!
「ごっ!!」
「次ぎいきますよ?ろーく」
ぱちぃぃんっ!
「ろーくっ!!」
「上手です、なーな」
ぱちぃぃんっ!!
「ななっ!!」
「よーし、はーち」
ぱちぃぃんっ!
「はぅっ、はちっ!!」
「あと少しです♪きゅーう」
ぱちぃぃんっ!!
「きゅっ…う!」
「いいこいいこ、じゃあ最後です…じゅうっ!!」
ぱっちいいぃぃんっ!!
「ふぁっ…じゅうっ!!」
俺は非常に情けなく、数を数え終えた。
「はい、おしまいです♪」
「ふ、ふぇぇ…い、たい…です」
「ほらほら、大丈夫ですか?」
ルナさんは俺を膝の上から降ろし…ぎゅっと抱きしめた。
「っ!!!!」
そして俺の頭を優しくなでる。
「いい子いい子、私もあのプリン、二つ買えば良かったと反省しています」
「あ、いや…」
「どうです?私のお尻も叩きますか?」
「あ、いやっ…遠慮…します…」
「フフッ♪じゃあ今度あのプリン、二人で食べましょうね?」
「ん…はい…」














な、こんな話できないだろ?
出来る奴がいるなら俺はそいつになんかすごい賞をあげても良いと思うっ!!
「おーい?」
「ふぇっ!?」
「大丈夫かーい?行くぞ?」
「あぁすまんすまん、行こうか」
こうして俺たちは自転車を走らせた。いつも通り、てきとーに街をぶらつくわけだ。

「〜♪」
ナイトが何か鼻歌を歌っている。非常に機嫌が良さそうだ。
最近の彼はいつもそうである…妙に機嫌が良い。
「なぁナイト」
「ん?どうしたよ」
「最近機嫌良いな、お前にしちゃ珍しく生き生きしてる」
「お前にしちゃ…って、それカケルに言われたくないな」
「そうかぁ?で、なんかあったのか?あ、ついにエロゲーかったとか…」
「黙れお前」
「ははっ、悪い悪い、じゃあ本当の所は何よ?」
「機嫌が良くなる理由…あ、いや…その…」
「なんだ?言いにくいのか?」
「うん、まぁ…」
「うぅ…そんな、俺たち秘密も打ち明けられない、そんな仲だったんだな…」
「あぁ分かったよ!!彼女が出来たの!お隣さんの中国人っ!!」
「なっ、えっ!!」
「…これでわかったか…あ…」
「そ、そうか、良かったな…」

あぁ、そうだ…コイツに恋愛系統の話はご法度だったんだ。
しかも相手が年上…と来たら。

カケルには今から一年程前、年上の恋人がいた。
遠距離だったんだが二人はすごく仲が良かったわけだ。
だけど中学生の男に遠距離恋愛は厳しすぎた、相手を満足させてあげることが出来なかったんだろう、
その女はカケルを捨て、別の人の所へ行った。
それも、別の「女」の元へ…。
カケルの彼女は元々同性愛者だった。
だけどそれを取っ払って二人は愛し合っていた。
彼女はそのときだけは異性愛者になっていた。
だけど、長くは続かなかったんだ。
それでもカケルはそいつを愛し続けた、いや、今も愛し続けている。
だからカケルは昔に縛られてる状態、
二次元にどっぷりはまるようになったのも、少し元気なさげに話すのも、彼の気づかないくらい心の片隅に、その気持ちがあるからなのだろう。
その小さなキズを、今俺は広げちまった。

「か、カケル…」
「いやいやいやいやいやっ!!気にするな気にするな!」
「あ、でも…」
「そ、そ、そんなに落ち込まれると逆に…なっ!?」
「あ、ああ…」
「あ…そうだ、ハンバーガーでも食べようか、あそこ入ろうぜ?」
「あ、あぁ、そうだな!」
俺はカケルに手を引かれるようにその店に入った。

うぃぃぃん…、

間の抜けた自動ドアの音、
「んー…結構込んでるな…」
「そうだな、でも急ぐわけじゃないし」
「そうだな」
俺たちは一人の女の人の後ろに並んだ。
「しかし飯食ってまもなくハンバーガーってのも」
「お前が言ったんだろばか」
「はははっ、そうでしたー」
「どんなキャラだよ」
「今考え付いた」
「点数をつけるなら三十点だな」
「うぉっしゃ高得点っ!!」
「じゃねーよ…」
「へへっ…ん、だいぶ空いたぞ、もう前の人だけだ」
「さすが早さが売りだなこの店、あ、何にしようかな」
俺はぼんやりと前の人の注文を聞いた。
注文の参考にしようという寸法だ。
「えぇ…っと…セットで…、このおさかなのハンバーガーをお願いするアル」










「アル…?」
「どうした?」
「いや、あの…なんていうか、ちょっと待て」
「どうしたよ?」
「…ロンロンさん?」


「へっ!?あ、ナイトっ!!偶然アルね!!」


びっくりした、その一言に尽きる。